記事のポイント

2024年の選挙でニュース消費が二分化し、個人クリエイターが躍進。

トランプ政権下でニュースパブリッシャーはサブスクリプション増加に注力。

迅速な選挙結果により、多くの報道機関が早期に通常業務へ戻る。


ドナルド・トランプ大統領の任期が多くのニュースパブリッシャーのビジネスにとって良好な時期だったことは、公然の事実だ。

しかし、「トランプ景気」の恩恵がすべての人に対して続いたわけではない

トランプ大統領の任期は、ニュースパブリッシャーがサブスクリプションビジネスの開発に注力していた時期と一致している。そして、パブリッシャーは記録的に成長した。ニューヨークタイムズ(The New York Times)やワシントンポスト(The Washington Post)などの企業は、2016年にトランプ氏が大統領に就任したとき、トラフィックの急増と直接的な読者からの収益の増加を経験した。

トランプ氏が再度大統領選挙に勝利したいま、第2期のトランプ政権はニュースパブリッシャーにとってなにを意味するのだろうか。

ある点では、その答えはまだ明らかではない。コムスコア(Comscore)は月次のデジタルデータのみを引き出すことができ、今週のデータが利用できるようになるのは12月だと、スポークスパーソンは米DIGIDAYに述べた。シミラーウェブ(Similarweb)もリアルタイムでデータを利用する機能はなく、この記事の締め切りまでに大統領選挙の日のデータは利用可能にならなかった。

アトランティック(The Atlantic)、エコノミスト(The Economist)、ボックス(Vox)、ハフポスト(HuffPost)などのパブリッシャーは、トップエディターからのメール、論評、メモを取り混ぜて、第2期のトランプ政権の期間中に自社のジャーナリズムを支援するためにサブスクリプションするか、資金を寄付してくれるよう読者に依頼した。

大統領候補者を支持するのは、エコノミストなどのパブリッシャーにとってサブスクライバーのコンバージョンと寄付を増やすことにつながった。エコノミストのスポークスパーソンは、自社が大統領候補者のカマラ・ハリス氏を支持すると発表した日に、1月以降で1日の新規サブスクライバーがもっとも多くなったと語った。

オンライントラフィックの減少と個人クリエイターの台頭



しかし、この展開が異なったものになる兆候がいくつか存在する。そして、その理由の大部分は、人々がニュースに触れるチャネルが異なることかもしれない。

シミラーウェブのインサイト、ニュース、調査担当編集者のデビッド・カー氏によると、ニュースとメディアの上位100サイトについて、米国内の合計トラフィックは2020年の選挙と比較して2024年の選挙前の週は4.6%少なかった。

集計ベースでは、2020年の選挙期間で最後の週におけるトラフィックの増加率も6.9%と高く、それに対して今年はわずか3%だった。

ニューヨークタイムズやUSAトゥデイ(USA Today)など、米国におけるニュースパブリッシャーの上位20社のうち、1社を除いては選挙前に前の週よりトラフィックの増加がみられた。唯一トラフィックが減少したのはワシントンポストで、シミラーウェブの最新のデータによると訪問者数が0.9%減少して360万人となった。

前の週と比較して、もっともトラフィックが増加したのはNBCニュース(NBC News)で、訪問者数が10月27日の270万人から、11月には25.6%も増加して360万人になった。それに続くのがCBSニュース(CBS News)で、トラフィックが24.6%増加し、またAPニュース(AP News)は23.9%増加した。

タビュラーラボ(Tubular Labs)が米DIGIDAYと共有したデータによると、フォックスニュース(Fox News)からボックスまでにわたるYouTubeのニュースパブリッシャーの上位20社ほどのうち、同プラットフォーム上での各社チャネルの合計再生回数は、投票日とその翌日の両方について、2020年の同じ投票日とその翌日よりも低かった。

11月5日に、ニュースパブリッシャーの合計再生回数は1億5200万回で、2020年11月3日の3億1500万回を下回った。また11月6日にこれらのチャネルの合計再生回数は1億3100万回と、こちらも2020年11月4日の1億5400万回を下回った。

それでもこの数値は、パブリッシャーのソーシャルビデオ戦略がまだ十分に発展していなかった2016年の投票日と翌日の再生回数は上回っている。2016年以降に米国のTVネットワークはソーシャルビデオに投資し、YouTubeのライブストリーミングフィードのような機能を使うようになったと、タビュラーのスポークスパーソンは言及した。

2020年から2024年に再生回数が減少した理由のひとつは、この8年間に個人クリエイターがYouTubeで成長したことかもしれない。米国において、メディアパブリッシャーが制作したニュースと政治の動画のシェアは前年比で22.3%から20.2%に減少したと、タビュラーラボのスポークスパーソンは述べた。一方で、個人クリエイターは米国のニュースと政治の動画について、再生回数の71.8%から74.2%に成長した。

ニュース消費の二分化



今年の投票日の夜には、メディアパブリッシャーが合計再生回数の66.3%を占めたが、クリエイターも依然として32.6%を占めていたと、スポークスパーソンは付け加えている。

「結局のところ、これは主に利用者がニュースコンテンツを消費する方法が二分化した結果だと思う。多くの利用者は、ニュースのWebサイトを訪れるよりも、音声と動画の形式を選んだ」と、オーディエンス開発およびマーケティング企業のトゥエンティファーストデジタル(Twenty-First Digital)の創設者でCEOを務めるメリッサ・チョウニング氏は述べた。

たとえば、TikTokの米国内での利用者はこの4年間に大きく増加し、2020年の約6000万人から2024年には1億5000万人を超えたと、チョウニング氏は言及した。ピュー・リサーチ・センター(The Pew Research Center)が9月に共有したデータでは、ニュースソースとしてのTikTokの使用は2020年以後で2倍以上に増加したことが示されている。

これは、ロイタージャーナリズム研究所(Reuters Institute for Journalism)が2018年にトレンドの大きな変化を認識して以来、年次デジタルニュースレポート(Digital News Reports)で追跡し続けてきたトレンドでもある。

フロリダ州立大学ローカレッジ(FSU Law)の教授で選挙法を専門としているマイケル・モーリー氏は、有権者は選挙に関する情報源としてソーシャルメディアやポッドキャストのような代替ソースを選ぶようになり、従来型のニュースソースから遠ざかっていることに同意した。

「ニュースパブリッシャーは今後、これらのプラットフォームを使用してニュースコンテンツを配信することを余儀なくされると思う。そして、その労力の結果としてトラフィックに頼るのではなく、それらのチャネルでのエンゲージメントやインプレッションを直接収益化して業務を支えることになるだろう」と、チョウニング氏は述べている。

別の要素として、2020年の選挙は有権者が投票してから4日間にわたって集計されなかったため、その週にずっとニュースで扱われ続けた。今年は多くのニュースや政治編集部が同様なタイムラインに備えていたが、結局は同じ事態にならなかった。

今年は、選挙結果の関係で翌日にフォックスニュースのトラフィックが激増した。タビュラーラボによると、11月5日にフォックスニュースの合計視聴回数は1380万回だったが、翌日には6630万回に増えた(2020年には、選挙の翌日における再生回数はわずか1830万回だった)。

この事実が一部のニュース編集室での編集方針に与える影響は、少なくとも現在のところ、通常の体制に早く復帰できるということだ。

「多くの報道機関と同様に、当社も長い1週間を覚悟していたが、どちらが勝利した場合も読者の心に浮かぶ疑問に基づいた記事の視点を用意しており、当社の機敏なスタッフは、どちらが勝利してもすぐに掘り下げる準備を整えていた」と、ニューズウィーク(Newsweek)でオーディエンス開発担当のシニアバイスプレジデントを務めるジョシュ・アウトリー氏は述べる。

「勝利がより迅速かつ決定的だったため、我々が行ったのは多くの記者を通常の業務とスケジュールに戻すことだけだった」。

[原文:Will news publishers see another ‘Trump bump’ in Trump’s second term?]

Sara Guaglione(翻訳:ジェスコーポレーション、編集:坂本凪沙)