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食いしん坊な人も、それほどでもないという人も、生きている限りお付き合いし続けなくてはいけないのが「食べ物」。でも、あまりにも身近で当たり前すぎて、意外と知らないことだらけ。この連載では知ると思わず「へ〜!」「ほ〜!」 知っていたほうがお得かもしれない、いつか自分の身になるかもしれない。そんな食べ物トリビアを紹介します。

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肉といえば、関西は牛肉、関東は豚肉。なぜそうなった? 

「肉といえば牛肉と豚肉、どっち?」と聞かれたら、なんと答えますか?

関西出身者はほぼ100%牛肉、関東出身者は豚肉と答えるでしょう。

その証拠に、関西では肉じゃがの肉も肉豆腐の肉も牛肉ですが、関東では、肉じゃがの肉や肉豆腐の肉が豚肉であることが珍しくありません。ちなみに、和歌山県出身の筆者は、18歳で上京し、初めて豚肉の肉じゃがを食べました。

関西は牛肉、関東は豚肉は真実なのか? その背景と合わせて調べてみました。

牛肉・豚肉の消費金額ランキング

都道府県庁所在市及び政令指定都市別・牛肉の消費金額ランキング上位は、すべて関西

総務省統計局が行っている「家計調査(二人以上の世帯) 品目別都道府県庁所在市及び政令指定都市(※)ランキング(2021年(令和3年)〜2023年(令和5年)平均)」によると、牛肉、豚肉の消費金額の順位は次のとおり。

牛肉の消費金額ランキング上位5位

1位 京都府京都市(3万6937円)
2位 大阪府堺市(3万6254円)
3位 和歌山県和歌山市(3万5421円)
4位 奈良県奈良市(3万5264円)
5位 兵庫県神戸市(3万4273円)

都道府県庁所在市及び政令指定都市別・豚肉の消費金額ランキング上位は、関西より東の都市

豚肉の消費金額ランキング上位5位

1位 新潟県新潟市(3万7344円)
2位 福島県福島市(3万7301円)
3位 埼玉県さいたま市(3万7104円)
4位 東京都区部(3万6541円)
5位 静岡県浜松市(3万6370円)

内臓肉は、関西は牛ホルモン、関東は豚もつ

肉と同様に内臓も関東は豚、関西は牛です。

たとえば、東京にたくさんある「焼きとん」は、もともと関西にはありませんでした(関西では焼き鳥が主流。近年、関東風の焼きとん店が急増中)。


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関東では「豚のもつ煮」や「豚もつ焼き」、関西では「牛ホルモン焼き」「牛ホルモン鍋」が一般的。関西の煮込みに使われているのは、ホルモンではなく牛すじです。

「ホルモン」という呼び名は、もともと捨てるものということで、大阪弁の「捨てる」を意味する「放る」からきたと言われています。つまり、捨てるもの→放るもん→ホルモン。(諸説あります)

なぜ、関西は牛、関東は豚なのか?

食肉文化の歴史を調べてみたところ、日本で肉食が広まったのは明治時代。
関西では農耕に使われていた牛を食用にしたことから、牛肉文化が根付いていきました。


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一方、人口が多かった関東では、牛肉の供給が追いつかず、成長が早く、残飯処理役として普及していた豚が食用にされるようになり、大正時代には関東一帯に養豚ブームが到来。豚肉文化が根付いていったようです。

「牛肉は豚肉より値段が高いから、食にこだわる関西人は牛肉をよく食べるのか?」と、一瞬思いましたが、根付いた食文化を脈々と受け継いできた結果なのだということがわかりました。

ちなみに、沖縄はもともとは牛肉が主流でしたが、琉球政府が牛肉や馬肉を食べることを禁じたことで豚肉が主流になり、「鳴き声以外は全部食べる」と言われるほど、大事に食されてきました。沖縄では肉のことを「しし」と言い、それは豚肉を指すそうです。