29日、米ニューヨーク郊外で、連邦議会占拠事件や大統領選について語るペンス前副大統領=淵上隆悠撮影

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 【ニューヨーク=淵上隆悠】アメリカ大統領選で、共和党候補のドナルド・トランプ前大統領と距離を置く党内の実力者らが、トランプ氏の復権に警鐘を鳴らしている。

 トランプ氏が返り咲くかどうかは、民主党候補のカマラ・ハリス副大統領も取り込みを図る共和党内の「反トランプ票」の行方もカギになりそうだ。

「忠臣」だったペンス氏「懸念を抱いている」

 「私は現在の共和党の方向性に懸念を抱いている」

 29日にニューヨーク郊外で開催された企業家らの会合に招かれた共和党のマイク・ペンス前副大統領はこう語り、トランプ氏の主張を念頭に、同盟国を軽視する姿勢や財政赤字を拡大させかねない経済政策に不安をのぞかせた。

 ペンス氏は副大統領当時、トランプ氏を批判しない「忠臣」として知られたが、2021年1月の連邦議会占拠事件を機に決別した。ペンス氏はハリス氏を支持することはないと明言する一方、「これ以上は選挙に関わらない」と述べ、トランプ氏も推していない。

リズ・チェイニー前下院議員、ハリス氏の集会に出席

 共和党内には、ハリス氏への投票を呼びかける有力者もいる。議会占拠事件を巡る下院特別調査委員会で副委員長を務めたリズ・チェイニー前下院議員は、21日にミシガン州で開かれた民主党の集会に出席。ハリス氏と並んで登壇し、投票先を党派ではなく「善か悪か」で判断するよう呼びかけた。共和党穏健派にも支持を広げたいハリス氏は「彼女(リズ・チェイニー氏)には共和党員がこっそりと感謝の気持ちを伝えている。彼女は一人ではない」と強調した。

ジョージ・ブッシュ元大統領らも不支持

 トランプ氏を見放した共和党重鎮もいる。リズ・チェイニー氏の父ディック・チェイニー元副大統領は9月、「我が国の248年の歴史の中でトランプ(前大統領)ほど脅威となる人物はいない」との声明を出し、ハリス氏に投票する意向を示した。トランプ氏はSNSで「娘と同じで名前だけの共和党員だ」と反発した。

 このほか、ディック・チェイニー氏を副大統領に起用したジョージ・ブッシュ(子)元大統領も、今回の大統領選でどちらの候補にも支持を示さないことを事務所が米NBCニュースに明らかにしている。

 一方、トランプ氏と最後まで党の候補指名を争ったニッキー・ヘイリー元国連大使は、トランプ氏を支持している。ヘイリー氏は28年の大統領選を見据えているとされ、トランプ氏の支持者を敵に回したくないとの思惑が働いているとみられる。