関大の金丸夢斗(C)日刊ゲンダイ

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【2024年ドラフト注目投手「生採点」】

阿部巨人が来季に向け早くも始動!貧打より深刻な《菅野の穴》…補強もドラフトも投手に照準

 金丸夢斗
 (関大/投手・左投左打・177センチ・77キロ・神港橘高)

  ◇  ◇  ◇

「今永昇太(カブス)、菊池雄星(アストロズ)……間違いなくそれぐらいのピッチャーになれるヤツですよ、ただし……」

 あるスカウトと、そのあとの部分で意見が一致した。

 最低1年間の強化練習期間が必要。来季からすぐ……の即戦力と見なしてはならない。

 普通の公立校(兵庫・神港橘高)から関大に進学してすぐにローテーションの一角に抜擢。リーグ戦中は土・日の試合に投げるために強めの練習は週2日ほど。疲労しない程度の「調整」みたいな毎日。リーグ戦が終われば、オープン戦があって、学生ジャパンとしての行事もあって、何かと忙しかった4年間。腰を据えて、しっかりと体力強化に励む時間は、持ちたくても、なかなか持てなかったろう……これが、そのスカウトの方との「共通認識」となった。

 間違いなく、何年に1人の左腕である。10年、15年と頑張れる体の強さを養成できるのは1年目しかない。

 サウスポーにしか投げられない右打者の体のほうに食い込んでくるクロスファイア。かすかにスライダーっぽい回転を帯びているから余計に食い込みが厳しい。

 さらにオッ! と思ったのは、右打者の外に向かう逆の球筋。これに、跳ねるようなエネルギーがあって、バットで追いかけてもミートポイントはつくれない。

 チームの捕手が言った。

「もっとエグいのは、フォークです。毎日受けている自分たちでも、わかっていてもなかなか捕りきれないフォークですから、バッターが打てるわけないです!」

 実際、140キロ前後の高速フォークだから、低く来られたら、近くで見ていても、ストレートにしか見えない「魔球」だ。

 春のリーグ戦の最後で腰を痛めたと聞いて、ギョッとしたが、この秋はリリーフで快投を重ねて、リーグ戦71イニング無失点(10月14日現在)が続く。立て直しも、どうやら順調のようだ。

 願わくば、金丸だ! 金丸だ! と喜んで、すぐ一軍マウンドへどうぞ……みたいな球団ではなく、彼に1年ほどの強化期間を授けられる左腕投手陣に余裕のある球団に迎えられんことを。

 俳優・宍戸開さんによく似た、やや濃いめの甘いマスクで、スター性も文句なしの逸材である。

(安倍昌彦/スポーツライター)