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自分にとって当たり前すぎる存在:コルサ

英国で堅調に売れ続けているクルマの1つが、ヴォグゾール(オペル)・コルサ。日本でもかつて売られていた、小さなハッチバックだ。

【画像】コンパクトカーの楽しさを再実感 ヴォグゾール(オペル)・コルサ 欧州の競合モデルと比較 全136枚

間違いなく、筆者は毎日のようにコルサを目にしている。しかし、そのことを考えたことは、しばらくないように思う。頻繁に目撃する、テスラ・モデル3やBMW 3シリーズ、ミニなどは、ふとした瞬間に思い浮かべるのに。


ヴォグゾール(オペル)・コルサ 1.2ターボ・ハイブリッド 100PS GS(英国仕様)

自分にとって、当たり前すぎる存在なのかもしれない。使い慣れた、特に珍しくないティーカップのように。知らず知らずのうちに、過小評価していたようだ。

そんなことへ気付いたら、最新のコルサに乗ってみたくなった。この機会に、あまり訪れることのない場所を訪問しようとも考えた。自分が過小評価してしまっている、小さな自動車博物館へ。

グレートブリテン島南部にある、国立自動車博物館にはしばしば伺う。同僚のスティーブ・クロップリーが理事で、そこでポッドキャストの収録をする機会が多いから。だが、会議室へ向かう途中で珍しいクルマを横切るが、眺めている余裕は大抵ない。

アトウェル・ウィルソン自動車博物館へ

というわけで、筆者はヴォグゾールからコルサをお借りした。ハイブリッドのGSというグレードだ。1.2L 3気筒エンジンに、電圧48Vの電気モーターと6速デュアルクラッチATが組み合わされている。燃費は22.2km/Lとかなりいい。

英国価格は2万5280ポンド(約485万円)。このくらいのモデルが、1万5000ポンド(約288万円)以下で買えていたのは、何年前までだろう。


アトウェル・ウィルソン自動車博物館の様子

最初に向かったのは、ロンドンから西へ160kmほど離れた、ウィルトシャー州にあるアトウェル・ウィルソン自動車博物館。歴史は古く、筆者が6歳の頃に開館しているが、残念なことに今まで訪れたことはなかった。

家屋の裏側に建っていても、看板があるから通り過ぎることはないだろう。牧草地が広がる丘陵地帯に、金属で覆われた小屋がある。そんな控えめな見た目とは裏腹に、中を拝見したらお宝ばかりで感心してしまった。

筆者を迎えてくれたのは、ディレクターの1人、マイケル・ベネット氏。彼は謙虚で、創設者のリチャード・アトウェル氏とハセル・アトウェル氏のことは説明したが、自らに関しては触れなかった。その功績から、ホールへ自分の名前が与えられているのに。

博物館のきっかけとなったクルマは、リチャードが5ポンドで購入した、ビュイック・アルベマールという古いオープンカーだったらしい。それは、今でも展示されている。

英国がモータースポーツの拠点になった起源

1972年に、結婚式のウェディングカーとしてビュイックのレンタルを開始。以来、コレクションの数は増えていった。クルマの貸し出しは、現在も続いている。

2024年2月には、レーシングドライバーのケケ・ロズベルグ氏がドライブした、1985年式ウイリアムズF1マシンが展示に加わった。収蔵する車両は100台以上で、面白いくらい多様。「沢山のクルマを、寄付していただいています」。ベネットが説明する。


アトウェル・ウィルソン自動車博物館に移築された、ジャック・フレンチ氏のワークショップ

筆者が興味深いと感じたのが、ラリードライバーのパディ・ホップカーク氏がドライブした、オリジナルのミニ・クーパー。9Xプロジェクトの一環で作られた、技術者のアレック・イシゴニス氏による次期ミニの試作車もある。これは、3台しか現存しない。

それ以上に筆者の心を惹き付けたのが、オースチン・セブンのマニアで、技術者でもあったジャック・フレンチ氏が所有した古い小屋。75年ほど前に、彼はシンプリシティというキットカーをこの中で製作し、モータースポーツ界に大きな影響を与えた。

現在の英国が、レーシングカーの世界的な拠点へ成長できた起源の1つといっていい。フレンチの自宅にあったワークショップが、アトウェル・ウィルソン自動車博物館の敷地へ移築されている。小さくても、歴史的な建造物だ。

この博物館には、年間5000名以上の訪問者がある。カークラブのイベント拠点としても、賑わっているという。

小さなクルマの楽しさを改めて実感

次に向かったのは、ここから60kmほど北にある、ボートン・オン・ザ・ウォーターという町。気持ちの良い一般道で、コルサを快調に走らせる。小さなクルマの楽しさを、改めて実感する。

全長は4060mm、全幅は1765mm。今でもちゃんと、コルサはコンパクトカーだ。コーナリングの限界は高く、パワートレインは充分活発に思える。


ヴォグゾール(オペル)・コルサ 1.2ターボ・ハイブリッド 100PS GS(英国仕様)

ちなみに、同行してくれたカメラマンのジャック・ハリソンは、マニュアルのコルサ・オーナー。ハイブリッドではない、1.2Lモデルに乗っている。ハイブリッドの車重は1267kgだが、1175kgと軽い。

ボートン・オン・ザ・ウォーターは、意外にも外国人観光客が多かった。アイスクリーム・ショップには、行列ができていたほど。その中心部に、コッツウォルズ自動車博物館が位置する。

この博物館は、英国の公務員自動車協会が管理している。無数のミニカーや、電動バイク、キャンピングカー、記念品などが所狭しと並んでいる。館内にはちょっと昔の音楽が流れ、雰囲気はバッチリ。空間としてのコダワリも感じさせる。

筆者は、過去に訪れたことがある。ゆっくり見学するなら、観光客が少ない冬場が良いだろう。ホットチョコレートも楽しめる。

予想以上の混雑ぶりで、今日は早々に退散することにした。今夜宿泊する、グレートブリテン島中東部のコニングスビーまで、これから200km以上走る必要もある。

この続きは、コルサで小さな自動車博物館を巡る(2)にて。