「主役になりたくない」カップル急増!「やりたいことはない」結婚式でも挙げたい理由

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20-30代の過半数が「結婚式で目立ちたくない」

スモークをたいて、ゴンドラで降りてくるカップル。

高さ10メートルのウェディングケーキ入刀や、3度4度と席を立ってのお色直し。

昭和も後半のバブル期は、結婚式もド派手であった。だが時代は大きく変わったらしい。

無料で結婚式相談から式場選びを手伝ってくれる「トキハナ」が20-30代の既婚者を対象に「結婚式・結婚に関する不満を教えてください!アンケート」をとったところ、約6割近くが「結婚式で自分たちが主役になるのは嫌だ」と回答。

最近のウエディングでは、過半数の新郎新婦が、「注目を浴びたくない」「主役をやりたくない」という。

カウンセラー全員が業界を熟知した元ウエディングプランナーという「トキハナ」のウエディングカウンセラーの神田裕子さんが、後悔のない結婚式にするためのヒントをお伝えする連載。

第15回目の相談者は、見た目は華やかで考え方もスマートな20代後半のおふたり。人見知りなく、神田さんともすぐに打ち解け、打ち合わせもさぞスムーズと思いきや、ふたりの希望は「結婚式はやりたいけど、主役にはなりたくない」。

ふたりのための式なのに、主役にならないスタイルなどあるのだろうか。

難問を解決するのは、これまで5000組以上のウエディング相談実績を持つ大ベテランの神田さん。ご自身の寄稿でお届けする。

「主役になりたくない」という選択

式場選びのアドバイザーとして、私は日々多くのカップルと向き合っています。それぞれに異なるストーリーがあり、結婚式に対する想いも様々です。

最近では、「結婚式はしたいけれど、派手な演出や注目を浴びるのはちょっと……」という方が増えているように感じます。

今回ご紹介する蒼さんとゆかりさんも、そんなカップルの一組でした。

式よりも、新婚旅行や新居にお金をかけたい

マッチングアプリで出会ったという29歳のWEBマーケターの蒼さんと、容姿端麗という言葉がふさわしい、IT企業で広報を担当する28歳のゆかりさん。細身の体型に、整えられた髪、きちんとアイロンのかかったシャツ姿の蒼さんは、合理的で冷静、ぱっと見、几帳面にも見えますが、話しだすと爽やかな笑顔がこぼれ、フランクな性格であることがわかります。

一方のゆかりさんも、昔から人見知りなく、誰とでもフランクに接するのが特技なのだそう。スマートで合理的なおふたりは頭の回転が速く、こちらの意図をすぐに理解してくれるので、打ち合わせがとてもスムーズに進みます。第三者から見ても、本当にお似合いだと思いました。

半年前に同棲を始めてから、お互いのことをいっそう深く理解し合い、結婚式についての考え方も、「式よりも、新婚旅行や新居にお金をかけたい」で一致していたと言います。

「あなたたち、結婚式はどうするの?」

そんな何気ないお母様からの言葉に、おふたりは少し戸惑ったそうです。

結婚式は「挙げてもいいし、挙げなくてもいいもの」、優先順位の高いものではなかったからです。

「結婚式にお金をかけなくても、ふたりで思い出を作ったり、新居を充実させたりする方が大切だよね」

そう考えていたのですが、ご家族、特に孫であるゆかりさんを特別可愛がっていたお祖母様は、結婚式を心待ちにしていたことを知ります。

1年前に結婚したゆかりさんのお姉様は、結婚式を挙げなかったため、このままでは、ご両親もお祖母様も、娘たちの晴れ姿を見ることができなくなってしまう……。

さらにご友人の結婚式からの帰宅後につぶやいた、「やっぱり私も結婚式挙げれば良かったかな」というお姉様の言葉。

ゆかりさんは「お姉ちゃんのあの言葉、なんだか忘れられないんですよね」と、話してくれました。

ご家族との関係を大切にしているからこそ、胸の内は複雑です。皆の願いを叶えてあげたいという気持ちは、日に日に強くなっていき、「せっかくなら、家族に喜んでもらえる結婚式にしたいね」。

そうして、結婚式を挙げることを決意したのだそうです。

「やりたいことはないけど、やりたくないことはある」

けれども、いざ結婚式について考え始めると、おふたりはある壁にぶつかってしまいます。「あの、業界の方にこんな事を言うのは失礼かもしれないんですが、結婚式でやりたいことは特にはないんです。でも、やりたくないことはたくさんあって……」

聞けば、おふたりは従来の結婚式に、違和感があったのだそうです。「主役は私たち」とばかりに、新郎新婦が注目を浴びる演出の数々。眩いほどの照明、豪華な装飾、そして大勢のゲスト。

「私たちは別に目立ちたいわけではない」

「もっと自然体で、いつも通りでいたらダメなのか」

普段は広報として人前に立つことに慣れているゆかりさんですが、本来は過度な注目を浴びるのは苦手なタイプなのだそう。蒼さんも、形式ばった演出や、堅苦しい雰囲気は好きではないと言います。

「結婚式だからって、自分たちが別人みたいになっちゃうのは違うよね」

おふたりは、自分たちらしい、自然体でいられる結婚式を模索し始めた時に、トキハナを知って、相談に来てくれたのでした。

私はおふたりの気持ちに寄り添った、「主役にならない結婚式」を提案することにしました。

実は近年、結婚式に対する価値観は多様化し、蒼さんとゆかりさんのようなニーズも増えています。

「ふたりらしく、自然体でいられる結婚式にしたい」

「家族や親しい友人と、アットホームな時間を過ごしたい」

そんな想いに応えるように、結婚式のかたちも変化しているのです。

私は、時間をかけて細かなヒアリングを行い、おふたりが普段から何を大切にしているのか、結婚式ではどんなことを避けたいのかなどを、明確にしていきました。

おふたりがやりたくないこと

・挙式での父から新郎へのバトンタッチ(家族からの卒業のようで寂しい)

・ブーケトス(ゲストが嫌がる可能性が高い)

・披露宴入場、退場のアナウンス(注目して!って言っているようで嫌)

・ケーキ入刀、ファーストバイト(いかにも主役な演出はしたくない)

・ウエルカムスピーチ(人前で話したくない)

・お色直し(着替える時間がもったいない)

・花嫁の手紙(人前では伝えたくない)

・謝辞(仰々しい挨拶をしたくない)

結婚式の演出に込められた意味

さらにゆかりさんから、「実は、バージンロードで父親から新郎にバトンが渡されるシーンに以前から違和感があって」と切り出されました。

「あれって、家族のもとを離れて、今後は新郎と人生を歩むって意味があると聞いたことがあるんです。でも私は結婚してからも家族の一員だし、別々の人生を歩むっていうのは違う気がしてしまうんです」

ちょっと気にしすぎかもしれないんですけど……と小さな声で付け加えて、胸の内を話してくれました。

なるほど、確かにごもっともな見解です。もちろんそのシーンに憧れを持つ人も多く、それを否定するものでは決してありません。やりたい人はやる、やりたくない人はやらない。シンプルにそれで良いのです。

「では、それらはやめて、おふたりにとって本当に意味のあることだけにしましょう」

笑顔でそう伝えると、おふたりは安堵の表情を浮かべました。

そう、結婚式だからといって、特別なことをしないといけないわけではないのです。

そして、こんな質問をしてみました。

「おふたりは宴内人前式って聞いたことはありますか?」

◇神田さんが「主役になりたくない」ふたりに提案した「宴内人前式」とは? 後編「『主役になりたくなくても結婚式はしたい』カップルが選んだ『宴内人前式』でできること」でくわしくお伝えする。

「主役になりたくなくても結婚式はしたい」カップルが選んだ「宴内人前式」でできること