西田敏行さん

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 映画「釣りバカ日誌」シリーズなどに主演し、人間味のあるユニークな演技で親しまれた俳優の西田敏行(にしだ・としゆき)さんが東京都世田谷区の自宅で死去したことが17日、明らかになった。76歳だった。

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 【悼む】4、5回インタビューする機会に恵まれたが、元気そのものだった約20年前のインタビューが印象深い。「小さい頃は美少年でね」。教室で時代劇スター、片岡千恵蔵の物まねをするなど人気者で幼い時から役者願望は強かった。「必然的にこの世界に入っちゃった」と天職と信じ疑わなかった。

 「演じる」ことは「役を生きること」と話す俳優は少なくないが、この考えを好まなかった。「『役を生きる』なんて不可能。できるのは役の持つ『思い』にどれだけ近づけるか。例えば殺人犯なら、まず犯罪に駆り立てたものは何なのかをどこまで理解できるかです」。天才肌のようで、演じるまでのプロセスの深さを大事にした。

 変幻自在なのに「アクターは高倉健さんのような方。自分はコメディアンだね」と言い切った。「僕は下手したら詐欺師になってたよ。やり残したこと? 何もかも。演じた役をもういっぺんやり直せればなぁ。全く業の深い仕事だね」

 個人的に「サンキュー先生」(テレ朝系、80年)、財前五郎の義父を軽妙に演じた「白い巨塔」(フジ系、03年)が好きだった。「劇場版 ドクターX」の予告を見ると、おなじみのシーンであるメロン付き高額請求書は大門が持って来ていた。今から、この場面を見るのがつらく、寂しい。(内野 小百美)