世界経済、中期的に停滞へ 高債務が先行きに影=IMF専務理事

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Andrea Shalal

[ワシントン 17日 ロイター] - 国際通貨基金(IMF)のゲオルギエワ専務理事は17日、IMFの新たな予測に基づき、世界経済の成長率が中期的に停滞し、貿易摩擦が激化すると同時に債務が高水準にとどまるという厳しい見通しを示した。

来週のIMF・世銀年次総会を前に講演し、「われわれの予測は、低成長と高債務の容赦ない組み合わせ、つまり困難な未来を示している」と述べた。

その上で、成長促進や債務削減、経済の耐性強化に向けまだ多くのことができると指摘した。

物価高が貧困層に過度に大きな影響を与えたり、中東情勢の緊迫化で地域経済や国際商品市場が不安定化するリスクも挙げた。

また、軍事費増加が途上国支援などの優先事項に利用できる資金に与える影響にも懸念を示した。

保護主義の高まりと貿易制限の拡大が世界経済を分裂させ、貿易の伸びを抑制し「世界経済に冷水を浴びせている」と述べた。

「私は極度に悲観的ではない。世界経済の軌道を見れば、確かに状況は改善できる。ただ、もっと悪くなる可能性もある」と述べた。

世界貿易はもはやかつてのような成長の原動力ではないが「後退したわけではない」とし、数十年にわたる相互依存関係が新型コロナ禍以降に蓄積された貿易制限拡大の緩和要因になっていると指摘した。

世界的なインフレ圧力の後退といった良いニュースも幾つかあると説明。米国は景気後退には陥っておらず、失業者数も比較的低い水準にとどまる見込みとした。

ただ、高い水準で増加を続ける公的債務が見通しにさらなる影を落としていると指摘。景気悪化シナリオでは債務の国内総生産(GDP)比が現在の予想から20%ポイント上振れする可能性があるとした。

方向転換して成長を一段と促進するには、各国が債務を削減し、次のショックに備えたバッファー(緩衝材)を確保するほか、支出を削減して生産性を高める必要があると訴えた。