前半戦と後半戦でのチームの変化について話してくれた城福監督。写真:塚本侃太(サッカーダイジェスト写真部)

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 今季16年ぶりのJ1リーグで奮闘する東京ヴェルディも、シーズン序盤戦は苦しんだ。リーグ開幕10試合で1勝7分2敗。勝てる試合を引き分けたり、終了間際の失点で勝点を落とすケースが多かった。当時の戦いぶりを、城福浩監督は次のように振り返った。

「(他のJ1クラブに)物怖じしていた。綺麗に言えばリスペクトしていた、俗な言い方をすればビビっていた。試合途中からビッグネームが出てくると、過度にリスペクトしてしまって相手の圧に呑まれてしまう。それによって勝ちが引き分けになったり、引き分けが負けになったりしていました」

 ただ、結果はともかく悲観する内容ではなかった。

「ふたつぐらいは完敗した試合がありましたが、それ以外は悲観するものではないと考えていました。シーズン序盤は負け、引き分けを繰り返していましたが、やっているサッカーは通用している部分があったので、これを積み重ねていけば勝点を獲れる手応えはありました。ですので、大事にしたのはやり方を変えないことでした」
 
 「やり方を変えない」とは具体的にどういうことなのか。

「前からアグレッシブにプレスをかけて、相手陣内でフットボールをする。ハイライン&ハイプレスをやり抜くとか、先発組が力を出し切ってバトンを渡していくとか、そのあたりは4バックでも3バックでも変えないと。我々が示すサッカーは『これなんだ』と」

 そうした信念の下でやり続けた結果、東京Vはシーズン後半戦に覚醒。内容もあるサッカーで、28節の鹿島アントラーズ戦からリーグ4連勝で一気に勝点を積み上げた。

「戦っているうちにどんなビッグネームが出てきても動じず、自分たちのプレーができるようになりました。引いて守るということは相手のボールホルダーをフリーにすることで、それが過度のリスペクトだと。そこを『我々らしく“靴一足分”寄せていけ』と言い続け、選手もやり続けることで自分たちのカラーを示せる時間が増えました」

 J1リーグの33試合を終えて東京Vは8位。16年ぶりのトップリーグで十分な成績を残せているのも、“揺るがない信念”があったからこそだろう。

取材・文●白鳥和洋(サッカーダイジェストTV編集長)

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