千葉いすみ鉄道の「脱線事故」が他人事ではない「地方ローカル鉄道」の困窮現状

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 千葉県のいすみ鉄道で10月4日に発生した脱線事故の影響が、予想以上に長引いている。2両編成の大原駅発、上総中野駅行きが、国吉駅と上総中川駅の間にある刈谷踏切の近くで脱線。事故の原因は、木製の枕木が腐食し、レールがずれたことだとみられている。

 その影響で全線が不通になり、バスによる代行輸送が行われている。脱線した車両を移動する作業が10月9日から始まったが、復旧の見込みはまだない。

 いすみ鉄道にとって厳しい状況が続くが、他の地方ローカル鉄道も他人事ではないのだと、鉄道ライターは指摘する。

「枕木の腐食は保線作業をしっかりしていれば発見できました。しかし地方ローカル鉄道はどこも経営が厳しく、保線作業に多くの人員を割くことができないんです。脱線事故はどこの地方ローカル鉄道でも起きる危険性があります」

 例えば、わたらせ渓谷鐵道は、2017年に花輪駅と水沢駅の間で脱線事故を起こしている。原因は木製の枕木とレールを固定する装置の不良によって、レールの幅が広がった「軌間拡大」だった。

 この事故がきっかけで、運輸安全委員会は腐食しやすい木製の枕木から、コンクリート製の枕木に替えるよう指導を行ってきた。いすみ鉄道は10月中に、コンクリート製枕木への交換作業を始める予定だったが、その矢先の事故。もっと早く作業に着手していれば…と思わざるをえない。ただ、それは難しいと指摘するのは、前出の鉄道ライターである。

「木製からコンクリート製の枕木に替えるには、言うまでもなくお金がかかります。地方ローカル鉄道にとって、この費用を捻出するのはなかなか難しい。一気に替えるのではなく、少しずつやっていくしかないんです。地方自治体の協力が得られればいいんですが…」

 乗客の安全確保のため、一刻も早い交換作業を行ってほしい。

(海野久泰)