一方、何度も映像化された『南くんの恋人』の男女逆転版を原作とする『南くんが恋人!?』は、今期民放ドラマ7位となるお気に入り登録者数84.5万人を誇るが、増加数では14位に。

というのも、同作はTVer上では過去の『南くんの恋人』と同一シリーズ扱いであり、放送前に過去シリーズをTVerで配信する施策が取られたことにより、6月22日の時点でお気に入り登録者数は32.3万人まで積みあがっていたことで、「増加数」は+52.2万にとどまったためだ。

◆松本まりかの怪演ぶりに反響!3位はテレ東『カテコワ』

夏ドラマで特筆すべきは、増加数3位(+94.7万)となったテレ東の『夫の家庭を壊すまで』だろう。

不倫した夫に復讐するという一見ありがちな内容だが、主演の松本まりかの怪演ぶりとホラー的な演出がコメディにまで接近しそうな作風で回を追うごとに反響を呼び、テレ東の配信における新記録を樹立したほど人気が高まった。

『カテコワ』は「ネットもテレ東」を含む見逃し配信の累計再生数は8月28日までで2000万を突破。

同じく不倫した夫への復讐劇といえば、昨夏の深夜ドラマ『夫婦が壊れるとき』(日本テレビ)がTVer累計再生数2900万以上を記録し、「TVerで配信された23時以降放送のドラマ番組において再生数1位」に輝いたが、『カテコワ』がこの記録を塗り替えることになるのかも注目されるところだ。

◆2位は松本若菜『西園寺さん』、TBSは『ブラックペアン』も好調

増加数2位となったのは、TBS火曜ドラマ『西園寺さんは家事をしない』(+97.6万)。近年目立つ “ニセ家族”モノのラブコメだが、ゴールデン・プライム帯連ドラ初主演となる松本若菜がコメディエンヌとしての才能を存分に発揮。

無論、相手役の松村北斗(SixTONES)、そして娘役の倉田瑛茉を筆頭に、ライバル役となった津田健次郎、親友役の野呂佳代などキャストそれぞれが魅力を放っており、意地悪な人間は登場せず、ほっこり彼らを眺めていたいと思わせる世界観が支持されているのだろう。

TBSは、二宮和也がシーズン1とはタイプの異なるカリスマ医師を演じた『ブラックペアン シーズン2』が増加数4位(+85.3万)、若きカリスマ政治家を演じる櫻井翔のとらえどころのない表情がハマリ役と話題になった『笑うマトリョーシカ』も増加数7位(+74.0万)と好調。

『ブラックペアン』は単純なお気に入り登録者数では126.4万と今期民放ドラマ2位となるが、こちらもシリーズものということで放送前の6月22日の時点でお気に入り登録者数が41.1万あったことが大きく、増加数では5位のテレ朝『青島くん』と僅差という結果だった。

◆夏ドラマの「圧倒的1位」はやはり『海のはじまり』

そして夏ドラマのお気に入り登録者数「増加数」ランキング1位はフジ月9『海のはじまり』。お気に入り登録者数自体199.4万人で今期1位だが、増加数は+184.0万と、2位に倍近い差をつけており、圧倒的な1位だったといえる。

2022年に一大旋風を巻き起こした『silent』チームの再集結作として放送前から注目されていた同作だが、9月2日まででフジテレビ系配信サービス「FOD」を含む見逃し配信の累計再生数が5200万を突破。

同様のチーム体制だった2023年の『いちばんすきな花』(TVerのみで累計4000万再生突破)をすでに上回っているとみられる勢いだ。

登場人物(おもに古川琴音演じる水季)の行動や言動が議論を呼ぶ脚本となっており、「この話(人物)をどう思ったか」について語りたくなる内容が配信と相性がいいのかもしれない。いずれにせよ今夏の「覇権ドラマ」であることは間違いない。

◆フジはクドカン作品はじめ今夏ドラマ配信で成功

フジは、高校生の妊娠・出産を扱い、『海のはじまり』同様にストーリーと登場人物の行動が議論を呼ぶ『あの子の子ども』も増加数11位(+58.5万)と深夜ドラマも好調だったほか、コロナ以降の世相についてクドカン流に見つめ直したような『新宿野戦病院』が増加数6位(+81.9万)。

瑠東東一郎イズムあふれる学園コメディのようでいて、ドラマ全体を通していじめ問題に真摯に向き合うシリアスな面も兼ね備えていた『ビリオン×スクール』が8位(+70.2万)に。

今夏、配信ではTBS以上の成功を収めたといえそうだ。

==========
2024年夏ドラマTVerお気に入り登録者数「増加数」トップ10(※9月18日時点)
1.『海のはじまり』(フジテレビ)+184.0万
2.『西園寺さんは家事をしない』(TBS)+97.6万
3.『夫の家庭を壊すまで』(テレビ東京)+94.7万
4.『ブラックペアン シーズン2』(TBS)+85.3万
5.『青島くんはいじわる』(テレビ朝日)+84.9万
6.『新宿野戦病院』(フジテレビ)+81.9万
7.『笑うマトリョーシカ』(TBS)+74.0万
8.『ビリオン×スクール』(フジテレビ)+70.2万
9.『スカイキャッスル』(テレビ朝日)+68.8万
10.『降り積もれ孤独な死よ』(日本テレビ)+61.1万
==========

<文/新城優征>

【新城優征】
ドラマウォッチャー。俳優インタビュー、Netflix配信の海外ドラマの取材経験などもあり。