やっとの思いでお風呂から上がり、ダイニングテーブルに並んだJ子さんの手料理にビクビクしながら箸をつける康彦さん。

「しばらくお互い無言で食事していたら『帰って来た時はあんなにペラペラしゃべっていたのにどうしたの?』とJ子に言われて思わず口ごもってしまって」  

 すると「じゃあ1日時間をあげる。今日、私に嘘ついて誰とどこに行ったのか正直に話したら、怒らないで許してあげようと思う。明日の夕食までに話さないなら徹底的にあなたを問い詰めて、離婚になるかもね」と静かに言うと後片付けを始めたJ子さん。

「僕はJ子のこの熱の無い怒り方が本当に怖くて…きっと浮気には勘づいているし、僕にあきれている感じがしたけど、正直に話すだけが愛情じゃないしな、とも思うしどうしようか悩みました」

 ですが、夜中にふと起きて妻の寝顔を見ていたら…初デートでディズニーシーに行った事や、プロポーズした日になぜか熱を出し、妻に看病してもらった事などが頭をめくり…。

「せっかく許してくれると言ってくれているし、これが最後のチャンスなのかも?」と思い直し、朝起きると洗いざらい正直に話していたんだとか。

◆不倫相手との別れ方を妻からダメ出しされた

 J子さんは、黙って最後まで康彦さんの話を聞きました。

「沈黙の後で『2年も付き合っていたとは思わなかった。その子と別れられるの?それとも私と別れる?』と言われたので『もちろん別れられるよ!』とその場でE香に電話をして別れを告げようとしたのですが…」

 なぜか妻に止められた康彦さん。

「『そんな風に一方的に関係を切るのはシコリが残るし、その子も悪いけど、あなたも相当悪いんだからキチンと謝って別れなさい』なんて言うんですよ?もう『はい…』としか答えられないですよ」

 その後、無事にE香さんと別れた康彦さん。

「実はE香、僕に黙って婚活していたらしくて。もめずに別れる事が出来て良かったです」

「もうこれがラストチャンスだと思うし、首の皮一枚でつながっているようなものなんで、浮気なんて二度としませんよ」と苦笑いする康彦さんなのでした。

<文&イラスト/鈴木詩子>

【鈴木詩子】
漫画家。『アックス』や奥様向け実話漫画誌を中心に活動中。好きなプロレスラーは棚橋弘至。著書『女ヒエラルキー底辺少女』(青林工藝舎)が映画化。Twitter:@skippop