幼い頃から天体や気象に関心を持っていたという友貴さん。10歳の頃、気象予報士・森田正光さんの著書を読んで、気象予報士試験を受けることを決め、中学1年生の時、史上最年少(当時)の12歳で合格を果たしました。

 法律の分野にも興味があり、こちらも当時、最年少の15歳で行政書士試験に合格。高校合格が決まると今度は司法試験の勉強を始め、2020年、神戸大学理学部1年時にして司法試験の受験資格が得られる司法試験予備試験に、翌年には司法試験本試験に合格しました。

 現在は司法修習中で、来年度からは大手の法律事務所に勤務する予定です。法律と気象は一見異なる分野のように見えますが、「どちらの分野もロジックで物事を考えるという意味では共通しており、近い部分がある」と話します。

◆夫が好意を寄せたきっかけは、妻のつぶやき

 年齢も出身地も異なる2人を結びつけたきっかけとなったのは、Xでした。

 30代半ばで弁護士のキャリアをスタートし、仕事に打ち込んでいた美佳さん。経済的にも自立し、結婚願望も強くはありませんでした。しかし、40代に入り、出産可能年齢のリミットが視野に入るようになったことがきっかけで、「10年20年先を見据えたときに、仕事だけに時間を費やしていいのか」と悩むようになりました。

美佳:仕事では色々な経験をさせてもらってきて、人生であと何をしていないかと言われれば、結婚や出産ぐらい。不妊治療に国からの保険が適用されるのも43歳未満と決まっているので、40代前半の間に何もしなければ、この先に後悔するのではないかと思いました。

 出会い目的の合コンや婚活アプリには抵抗がありましたが「『食わず嫌い』はよくない」と期間と期限を決め、いわゆる婚活市場に飛び込んでみます。

 しかし、年齢や収入など「スペック」で異性を判断しとっかえひっかえする印象を受け、短期間で離脱することに。「日常生活の中で自然に知り合った人を好きになり、その先に結婚出産を考えるという流れが私にとっては理想。結婚や出産を目的として条件が合いそうな人を選ぶやり方は合わないと改めて思いました」と苦笑いします。

◆会う前にDMで好意を告白

 Xのアカウントを開設した初期の頃から「質問箱」を使っていたという美佳さんですが、Xで自身の恋愛・結婚観をつぶやけば「同年代は育児で追われているのに、未だに恋愛だ何だ言っていて幼いと思いませんか」など辛辣な質問が複数届き、世間の年齢に対する画一的な見方に疑問を感じていたといいます。

 それでも質問を無下にせず、真摯に対応し続けていました。そんな彼女の姿を目に留めていたのが、気象情報をつぶやくためにXを活用していた友貴さんだったのです。

友貴:Xは実は、人の本質が見えやすいツールだと思っています。どんなに繕っていたとしても、よく読んでみると、その人の人柄や考え方を感じ取れます。(美佳さんのポストは)人を傷つけないよう、多方面に気を遣って言葉を選んでいた。優しい人だというのはつぶやきを見ている段階でわかっていました。

 Xを通じて、美佳さんがアナウンサー兼弁護士として、著作権法などの知的財産権分野に詳しいことも知っていたという友貴さん。すでに司法試験に合格していた2022年夏、「自分も特許など知的財産権に興味があるので弁護士の先輩として話を聞かせてほしい」とXからDM(ダイレクトメッセージ)を送り、美佳さんもこれを承諾。

 当時、美佳さんは東京、友貴さんは神戸に住んでいたためにすぐには会えず、数か月間はDMを通じてやり取りをすることになりました。Xから美佳さんの恋愛観や結婚観を把握しており、「今お付き合いしている人がいないのであれば、直接アピールしてしまおう」と考え、やり取りの中で、「女性としても素敵だと思っています」と、好意を先に打ち明けていました。驚きこそしたものの、美佳さんの側も決して悪い気持ちを抱くことはありませんでした。

美佳:法曹界は、先輩と後輩の繋がりが密接な風土です。Xを通じて後輩から話を聞きたいと連絡が来ることは、以前からも複数あったので、DM自体は特に不自然には感じませんでした。いわゆる婚活市場で感じたものとは違って、彼は私個人の人柄を唯一無二のものとして見てくれているのが伝わって嬉しかったのを覚えています。

 初めてDMを送って約半年が過ぎた2022年12月、就職活動のため、友貴さんが上京することになり、2人は東京駅にあるカフェで対面を果たします。意中の相手と対面を果たし、歓喜する友貴さんでしたが、この時美佳さんはあくまで「恋愛」の対象だったそう。そして、ここから美佳さんとの間で結婚に向けて怒涛の交渉が始まっていくことになります。

<取材・文/松岡瑛理>

【松岡瑛理】
一橋大学大学院社会学研究科修了後、『サンデー毎日』『週刊朝日』などの記者を経て、24年6月より『SPA!』編集部へ。博士課程まで進学したレアな経歴から、高学歴女子の生態に関心がある。Xアカウント:@osomatu_san