看板番組(番組HPより)

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 安倍晋三元首相銃撃事件というセンシティブな話題をバラエティ番組で取り上げる試みは成功したのか――。番組が放送されるや、SNS上で物議をかもした「テロップ問題」の本質と、日テレ“迷走”の裏事情とは。

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 8月13日に放送された日テレ系バラエティ番組「ザ!世界仰天ニュース」は、安倍元首相を銃撃した山上徹也被告の犯行の背景について、再現ドラマなどを交えて検証する内容だったが、

笑福亭鶴瓶さんとダブルMCを務める中居正広さんが番組途中、『こういう宗教によって、本当に助かっている人たちもいるんですよね?』と問いかけると、ゲストの一人だったヒロミさんが『それは間違いなくいると思うし、いまでも統一教会でもそう思っている人もたくさんいるんだろうし』と同調。このヒロミさんの発言にかぶせる形で〈教団に救われている人もいる〉とのテロップが流れたことで、SNSを中心に“統一教会を擁護するのか?”“救済と洗脳は違う”などといった批判の声が上がりました」(スポーツ紙デスク)

 放送終了後、同番組は見逃し配信サービスTVerで一時「配信終了」と表示され、騒動はさらに拡大。15日に配信が再開されるも、さらなる憶測を呼ぶ事態となっている。他局の民放関係者が言うには、

「制作者目線でいえば、あのテロップは“番組のバランスを取るため”に必要だったと考えている。『信教の自由』という大前提があるので、局側としては番組を観た視聴者に“宗教そのものが悪い”と捉えられることは何としても避けたい。また統一教会批判に偏り過ぎると、教団側からクレームが入る可能性もあるため、“公平性を保つ”との名目で似たテロップは他局でも入れたはず」

看板番組(番組HPより)

テロップ問題の本質

 そんな「テレビ村の論理」に反して、新興宗教やカルト問題に詳しい弁護士の一人はこう指摘する。

「私も視聴しましたが、番組全体の内容は良くできていたと思います。けれど、あのテロップには強烈な違和感を覚えました。というのも、ヒロミさんが話した内容はあくまで主観的なものだったのに、テロップは〈教団に救われている人もいる〉と客観的事実のような文言に変わっていた。出演者の発言内容を曲解しかねない“改変”で、これでは『統一教会に忖度した』と言われても仕方ないでしょう」

 さらにこう続ける。

「テロップにある通り、統一教会によって“救われている”人もいるというのは、信者であり続ける限りでは、一般論として事実でしょう。しかし“救われている”と感じている心理状態は、その信者がマインドコントロール下に置かれている可能性もある点は見過ごせない。マインドコントロールの問題が根深い理由として『離脱困難性』が挙げられます。脱会したくても“洗脳”によって『脱会すれば地獄に落ちる』などの恐怖心が植え付けられ、脱会へのハードルが高くなることを指しますが、統一教会とマインドコントロールの問題は、本来“切っても切り離せない”関係にあるはず。しかし今回の番組では教団の“洗脳実態”について深く踏み込んでいなかったのは残念でした」(同)

日テレの回答

 日テレに「問題となっているテロップを入れた理由」や「“統一教会擁護”との指摘に対する見解」などについて訊ねたが、

「制作過程の詳細についてはお答えしていない。放送された内容がすべてとなります」(同局マーケティングコミュニケーション部)

 と回答。さらに「TVerで一時配信停止となった理由」を問うと、

「権利処理等の都合で、一部映像を再編集いたしました」(同)

 と答えた。実際、再配信された番組では「権利上の都合で配信できません」との文字とともに他メディアから提供された資料映像などが黒塗りとなるなか、ヒロミの発言や問題のテロップはそのままになっている。

「ネットに流す際、わざわざ権利処理のために配信を一時停止するのは異例のこと。フツーは事前に処理を済ませているものですが、一方でSNSでの批判が理由で配信を停止したとも考えづらい。ただ今回の“炎上”騒ぎが想定外だったことだけは確かなようです」(前出・民放関係者)

 日テレにとって「仰天ニュースだった」では片づけられないだろう。いまも苦しむ「宗教被害者」たちはどんな思いで番組を観たか。

デイリー新潮編集部