スタントマン出身の監督がスタントマンを描く!
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 映画『ジョン・ウィック』シリーズの製作総指揮を務め、『デッドプール2』『アトミック・ブロンド』『ブレット・トレイン』などのアクション映画を手がけてきたデヴィッド・リーチ監督が、自身の原点でもあるスタントマンを題材とした最新作『フォールガイ』(全国公開中)に込めた思いを語った。

 主人公は、とあるアクシデントによって業界から姿を消した腕利きのスタントマン、コルト・シーバース(ライアン・ゴスリング)。ある日、大作映画のプロデューサーから復帰の要請を受けたコルトは、元恋人・ジョディ(エミリー・ブラント)が監督する新作の撮影でスタントの仕事に復帰する。そんな中、映画の主演を務める人気俳優トム・ライダー(アーロン・テイラー=ジョンソン)の行方がわからなくなる。トムの捜索を依頼されたコルトには、怒涛のトラブルが待ち受けていた。

 映画監督になる前は、スタントマンとして第一線で活躍していたリーチ監督。作品には自身のバックグラウンドを投影しており、コルトのキャラクター像には「僕がたくさん入っている」と語っている。

 「ライアンに伝えることができる逸話はたくさんあった。そして明らかに、彼を演出する上で、引き出せる多くの過去もあった。でも、それは彼の選択によるところも大きいと思う。そして、彼は僕の過去や、僕という人間についてたくさん質問してきた。だから、彼が僕から引き出した部分と、僕が彼に与えたもので役立ったものがあると思う。彼は間違いなく、今風のスタントパフォーマーのハイブリッドだ」

 ライアン扮するコルトは「とても親しみやすく、応援したくなるような人物」とリーチ監督は表現する。「コルトの少し負け犬(勝ち目のない人)みたいなところが好きなんだ。コルトは、アクションをよく見せるために舞台裏であくせく働くが、評価はされない。僕たちも時々、仕事において過小評価されることがある。そんな彼の姿を通して、多くの人がコルトに自分を重ね合わせることができるはずだ」

 劇中に登場する規格外のアクションは、スタントマンが実際に体を張って撮影されたものだ。昨今のハリウッド大作では、危険なスタントは視覚効果を駆使して映像化されることも多い。リーチ監督は、昔ながらの忠実なアクションを観客に届けることにこだわり、CGIの使用を極力抑えて撮影に臨んだ。

 「僕はスタッフにも命じていた。スタジオに企画を売り込んだ時でさえ、『これはスタントマンについての映画なので、昔ながらの現場でのスタントをいくつか実行したい』『その芸術性を讃えたい、本気でやったものが見たい』と考えていた。昔ながらのアクションを復活させ、それらを再発明することをやりたかったんだ」

 スタントマンへの愛はエンドクレジットにも表れており、本作のアクションシーンの舞台裏を収めたメイキング映像が上映される。リーチ監督は「名もなきヒーローたちのスタントを賞賛するもの」だと演出の狙いを明かし、「それらのシーンにはいろいろなやり方がある。ほとんど視覚効果でやることもできるし、スタントをたくさん使うこともできる。僕たちはただ、自分たちが言っていることにお金を注ぎ込んでいるのを、人々に見せたかった。この作品での僕らのアプローチは、『(アクションは)現場でやる』ということなんだ」と強調した。


 また、本編には名作アクション映画へのオマージュがふんだんに盛り込まれており、アクション映画ファンにはたまらないだろう。「ライアンとキャラクターを作り上げる時に、『撮影現場でみんなはどんな話をするんだろう?』という話になった。実際に話しているのは、『あの映画であれが起きた時のことを覚えている?』『僕たちがあれをやった時のことを覚えている?』といった他の映画についてなんだ。僕らはいつも映画を引用している。なぜなら、映画の撮影現場にいる人はみんな、映画作りが大好きだから」とリーチ監督。アドリブのセリフも多く、編集段階でカットされてしまったものも多い。

 リーチ監督が映画監督の道を歩むうえで、スタントマン時代の経験は「必要不可欠なものだった」という。「映画学校を出ていたら、僕は今のような監督になることはできなかったと思う。舞台裏やビロウ・ザ・ライン(スタッフ)で働きながら、僕自身が30年間スタント部門のトップとしてすべての部門と仕事をしてきた豊富な知識と経験が、映画がどのように作られ、すべての部門に何をするように伝えるかについての豊富な知識をもたらしてくれた。なぜなら、僕は多くの監督からそういうことを頼まれてきたからだ」

 「だから、僕がお願いする時は『僕はあなたに何をしてほしいかわかっているけれど、あなたには僕を手助けしてもらわないといけない』と言うんだ。あるいは、些細なことだから、彼らには(何も)頼まず『もっと大局的なことに集中しよう』みたいになるんだ」と続けたリーチ監督。「僕が映画作りに関して持っている知識は、多くのフィルムメイカーたちが持っていないユニークなものなんだ」と自信をのぞかせていた。(編集部・倉本拓弥)