スマホアプリでお得な吉野家のモーニング(筆者撮影)

喫茶店やレストランが、朝の時間帯にドリンクやトーストなどのメニューを割安価格で提供するモーニングサービス。名古屋の喫茶店が始めた文化とされていますが、最近では大手外食チェーンも数多く提供しています。

そんなチェーン店の外食モーニングをこよなく愛するライター・ブロガー、大木奈ハル子さんがお届けする本連載。第86回となる今回、訪れたのは「吉野家」です。

7月は大手牛丼チェーン4社の朝メニューを食べ歩き、予算500円で食べられる朝食をレポートしていきます。すでに「なか卯」「すき家」「松屋」をめぐり、今週は大トリの「吉野家」です。

「吉野家」の創業は1899年、1959年に築地に1号店を開店した元祖牛丼屋であり、牛丼のパイオニアとして、牛丼チェーンのトップを走り続けてきました。2008年に店舗数では「すき家」に抜かれたものの、「牛丼は吉野家がうまい」というイメージはいまだ根強いのではないでしょうか。

「吉野家」といえば、オレンジと緑のロゴがトレードマークですが、黒をイメージカラーにしたカフェスタイルの「黒い吉野家」も増えてきています。実は、この2つの店舗の要素を混ぜた「中間の吉野家」(筆者命名)というのもあるんです。

今回朝ごはんを食べるべく訪れたのは、その「中間の吉野家」でした。

定番の和朝食が揃った吉野家のモーニング

「吉野家」の朝メニューは13種類。提供時間は朝4時から11時までです。

【画像25枚】「安心感あふれる牛小鉢」「香ばし目玉焼き」 物価高の今でも、工夫次第で「ワンコイン」も可能な吉野家の”充実モーニング”の様子

メニューはこんな感じ。


(筆者撮影)


(筆者撮影)

・納豆定食 税込430円
・納豆牛小鉢定食 税込468円
・ハムエッグ納豆定食 税込468円
・朝牛セット(小盛) 税込519円
・焼魚定食 税込530円
・塩さば定食 税込530円
・Wハムエッグ納豆定食 税込567円
・ハムエッグ牛小鉢定食 税込567円
・特朝定食 税込630円
・塩さば特朝定食 税込630円
・Wハムエッグ牛小鉢定食 税込666円
・焼魚牛小鉢定食 税込666円
・塩さば牛小鉢定食 税込666円

朝ごはんの定番の和朝食メニューが揃っています。

黒い吉野家はカフェ風というふれこみだったが…

吉野家といえば、オレンジと緑の派手な看板に誘われて店内に入ると、U字のカウンター席にサラリーマンがズラリというイメージが定着しています。

そのイメージを払拭するのが、5年ほど前から増え始めた「黒い吉野家」。クッキング&コンフォート(直訳すると料理と快適さという意味)の略して、C&Cと呼ばれています。モーニング好きとしては「カレーショップ C&C のこと?」と一瞬思ってしまいそうですが、クッキングとコンフォートの「C」なのです。

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カフェを意識した店舗づくりが特徴で、ドリンクバーや限定メニュー、テーブル席で長居しやすい雰囲気づくりなど、女性でも利用しやすいおしゃれな内装となっているそう。

ホームページに「C&C」の記載がある店舗を訪ねたところ、どんなに変わっているのかとワクワクして入店すると、そこには既視感漂う光景が広がっていました。

カウンター席のテーブルの形状が斜めになっていたり、テーブル下にコンセントが設置されていたり、壁に飾られたフェイクグリーンがカフェっぽい雰囲気を醸し出しているものの、店内中央にはおなじみのU字のカウンターがレイアウトされ、席に座っているのは男性客のみでした。

どうやら「黒い吉野家」にもいろいろあるようで、お馴染みの「吉野家」を「黒い吉野家」っぽくリニューアルした「中間の吉野家」だった模様。店舗の看板は、黒にオレンジではなく、オレンジに黒という組み合わせでした。

消費者的にはややこしい、しかし会社的には別物なのであろう……という、組織の論理を感じさせる店舗なわけです。

ちょっぴりがっかりしたような、「よしよし、もうひとネタできたぞい…!」と軽く儲けたような不思議な気持ちで、朝食をいただくことにします。

ハムエッグ牛小鉢定食 567円


吉野家のモーニングメニュー ハムエッグ牛小鉢定食 567円(筆者撮影)

今回筆者がオーダーしたのは、「ハムエッグ牛小鉢定食」税込567円。

500円以内のモーニング食べ比べという趣旨に反しているようですが、実はスマホアプリのクーポンを使うと80円値引きで食べられるので、支払ったのはワンコイン以下で税込487円でした。この物価高、細かいことは言ってられないご時世なのです。

内容は以下。トレイにはお皿が5つ並ぶ、目にも豪華な朝ごはんです。

・牛小鉢
・目玉焼き
・ハム
・野菜サラダ
・ご飯
・みそ汁

ご飯は増量だけでなく、おかわりも無料。タブレットのタッチパネルを使っておかわりもオーダーします。腹ペコさんには嬉しいサービスですね。

このメニューで特に嬉しいのが目玉焼き。熱せられたスキレットに載せられて出てきた目玉焼きからは、湯気がもくもく。白身の底面にはこんがりと焦げがつき、香ばしさがたまりません。


熱々のスキレットで提供される、焼き立ての目玉焼き(筆者撮影)

黄身の焼き加減は半熟で、お箸で割ってすくってあれこれつけると、味をまろやかにしてくれます。

ハムはソーセージやベーコンと比べると、あっさりとしていて上品なお味。しっとりむっちりな食感と、程よい塩気は目玉焼きとの相性も抜群です。

やっぱりおいしい吉野家の牛丼のアタマ

そして、脱帽なのが牛小鉢。牛丼の具、アタマと呼ばれる部分を小鉢に盛り付けたものです。

大きめにカットされたふっくら玉ねぎに、薄切りのフリルが美しい牛肉を、醤油の甘塩っぱいタレで煮込んであり、食べると口の中に旨みが広がります。


吉野家の牛小鉢はさすがのおいしさ(筆者撮影)

「吉野家」の牛丼は牛肉にこだわり、穀物肥育の「ショートプレート」を使用しています。しっかりと強い味わいの赤身と、柔らかくとろける食感の脂身のどちらも、素材そのものがおいしい。牛小鉢にして食べるとその味わいはよりはっきりと感じられます。


透明になるまでしっかり煮込まれ、黄金色に輝く玉ねぎ(筆者撮影)

そこに透明になるほど柔らかく煮込まれた玉ねぎの甘味が加わり、秘伝のタレで、裏切らない日本人なら大好きな懐かしい味付けでまとめれば、大納得大満足の味わいになるのです。

小技の利いたみそ汁とサラダ

みそ汁はパッと見て「ネギとわかめだけか……ちょっとさみしいな」と思っていたのですが、みそ汁はちょっと濃いものの出汁の旨みがすごい。


一見するとネギとわかめだけですが、底にはアオサも入っているみそ汁(筆者撮影)

「なんだこりゃ、おいしいぞ」と思っていたら、底からアオサが出てきました。なるほど、食欲をそそる磯の香りはわかめだけでなく、アオサからも出ていたようです。


昔ながらの定番サラダ(筆者撮影)

サラダは千切りキャベツに赤キャベツとコーン。使い切りサイズのマヨネーズタイプのドレッシングが添えられています。

牛小鉢とハムエッグでご飯を食べつつ、箸休めにみそ汁とサラダをはさみつつ、いろいろなおかずをちょっとずつ食べる、豪華な朝ごはんとなりました。ボリュームもたっぷりで、食べ終わる頃にはお腹も大満足です。

実は「吉野家」以外の牛丼チェーンのモーニングメニューには、300円以下の玉子かけごはん定食というものがあります(先週ついに松屋は税込330円に値上がりしましたが)。

いずれも主力メニューの価格帯は500円以下で、お互いの価格設定に目を光らせ合い足並みを揃えている印象なのですが、「吉野家」はあえて玉子かけごはん定食も、300円以下のメニューも用意していません。


吉野家のモーニングメニュー ハムエッグ納豆定食 468円(筆者撮影)

最安値の納豆定食が税込430円、13メニューのうち10メニューが500円以上と、あえて安さを訴求しない形で勝負しています。

だからといって、メニューにも個性があるかというとそうではなく、出てくるおかずは生卵、目玉焼き、納豆、鮭、塩さばと、同業他社と大差はなし。目玉焼きとペアを組むのが、ハムかソーセージかベーコンかぐらいしか違いはないのです。

吉野家はちょっと高めだけど、納得のおいしさ

朝食メニューに生卵を使っているのに、あえて玉子かけごはん定食を出さない戦略、それこそが「吉野家的」だなと感じます。「吉野家」の牛丼並盛の価格は税込468円で、「すき家」と「松屋」はともに税込430円です。同業他社と比較するとちょこっとお高め。


中間の吉野家は、オレンジに黒の看板(筆者撮影)

このちょこっとの価格差が、「吉野家」のブランディング、「吉野家らしさ」に繋がっています。

もちろん、「吉野家」のキャッチコピーにして、牛丼チェーンの定義となっている「うまい、やすい、はやい」は大前提なので、大きく価格差をつけることはしませんが、「他の牛丼屋よりちょっと高いけど、納得のおいしさ」という部分にこそ、ユーザーは惹きつけられているように感じます。


ご飯に牛小鉢を載せて、ミニ牛丼にして食べてもおいしい(筆者撮影)

スキレットで香ばしく焼けた目玉焼きで「吉野家」のこだわりを味わう朝です。

【その他の画像も】「安心感あふれる牛小鉢」「香ばし目玉焼き」 物価高の今でも、工夫次第で「ワンコイン」も可能な吉野家の”充実モーニング”の様子【25枚】

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編集部注:本記事に登場するメニューの価格は、すべて取材時点のものです。昨今の円安、原材料高騰などの影響を受けて価格が改定されている可能性があります。また、店舗によってモーニングの値段・内容は異なる場合があります。


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(大木奈 ハル子 : ブロガー・ライター)