SNSを通じて世界の学生たちが連帯して抗議! 日本でも決行された「反イスラエルデモ」

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意外と知らない社会的な問題について、ジャーナリストの堀潤さんが解説する「堀潤の社会のじかん」。今回のテーマは「米大学生、反イスラエルデモ」です。

アメリカの大学生が声を上げた。世界に広がる人権意識。

昨年10月にイスラム組織ハマスがイスラエルを襲撃。これに報復する形でイスラエルが猛攻撃を始め、いまだに解決の目処は立っていません。イスラエル軍の攻撃による死者は4月末時点で3万5000人を超え、そのうち1万人以上が女性と国連は発表しました。

昨年からアメリカの大学では、コロンビア大をはじめ、エリート校を中心に反イスラエル、パレスチナ解放を訴える抗議デモや座り込み、テントを張ったプロテストキャンプなどが広がりました。学生らは停戦とともに、イスラエルでビジネスをする企業やイスラエルと取引をしていることは、戦争加担と同じだと、イスラエルの企業に投資している大学に対して、それらの企業から手を引くように要求しています。

4月30日には、ニューヨーク市警察がコロンビア大学に突入し、100人以上の学生らを逮捕。抗議活動を行う大学は100以上に及び、5月20日時点で、3000人以上が逮捕されたとAP通信は発表しました。ハーバード大学では、反イスラエルデモに対する大学の対応に抗議し、数百人の学生が卒業式を途中退席する場面も。

大学生の抗議運動はその後欧州にも広がりました。日本では5月に東京大学や早稲田大学、青山学院大学などの学生が、ガザの戦争に対して抗議運動を決行。SNSにより、世界の学生たちが連帯しやすくなりました。

抗議運動は暴力的なものではなく、アートや音楽を使った平和的なものが多くあります。アクティビストとアートを掛け合わせた「アーティビスト」を名乗る人も増えました。日本人でその代表例は坂本龍一さんでしょう。賛成/反対の単純な表明ではなく、問題を広く知ってもらい、考えてもらうことを目的にしています。一般市民が殺されていることに対してNOを唱える、普遍的な人権の価値に対して連帯が広がったのは良いことだと思います。

大学生の抗議運動自体は今は下火になっています。ただ、アメリカは秋に大統領選挙を控えています。人権重視の民主党でありながら、イスラエルに対し10億ドル相当の武器を売却しているバイデン政権に、不信感を募らせている学生は少なくありません。

ほり・じゅん ジャーナリスト。元NHKアナウンサー。市民ニュースサイト「8bitNews」代表。「GARDEN」CEO。報道・情報番組『堀潤モーニングFLAG』(TOKYO MX月〜金曜7:00〜8:30)が放送中。

※『anan』2024年7月10日号より。写真・小笠原真紀 イラスト・五月女ケイ子 文・黒瀬朋子

(by anan編集部)