真田広之

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 現在、戦国ドラマシリーズ「SHOGUN 将軍」が大ヒット配信中の真田広之。そのハリウッド進出作となったトム・クルーズ主演映画『ラスト サムライ』(2003)が、テレビ東京の映画番組「午後のロードショー」(毎週月曜〜金曜)で、6月28日、午後0時45分から放送される。この映画から始まった、真田のハリウッドでのキャリアを振り返る。

 『ラスト サムライ』の前から、海外進出を意識していた真田。まず、彼が中学入学と同時に入団したジャパンアクションクラブ(JAC)の師・千葉真一さんが世界を目指しており、その姿勢に影響を受けたと語っている。しかし、最初の海外進出は、映画ではなく舞台。1998年に蜷川幸雄さんが演出した、英国ロイヤル・シェイクスピア・カンパニーの舞台「リア王」の道化役をオファーされ、唯一の日本人俳優として出演、2002年に名誉大英帝国勲章第五位(MBE)を授与された。また、真田主演の日本映画『たそがれ清兵衛』(2002)が第76回アカデミー賞で外国語映画賞にノミネート。そして、2003年に公開されて大ヒットした『ラスト サムライ』への出演となり、その後、拠点をロサンゼルスに移す。

 しかし、当然ながら、すぐに売れっ子俳優になったわけではなく、まずは個性ある監督たちの作品に出演してキャリアを積むことになる。ジェームズ・アイヴォリー監督の『上海の伯爵夫人』(2005)や同監督の『最終目的地』(2009)、ダニー・ボイル監督の『サンシャイン 2057』(2007)に、日本人役で出演した。

 大作映画では、ジャッキー・チェンとクリス・タッカー共演、ブレット・ラトナー監督の『ラッシュアワー3』(2007)に、ジャッキー演じる主人公の幼なじみの日本人役で出演。続けて、日本と縁の深い大作映画2作、『マトリックス』(1999)のウォシャウスキー兄弟(当時)が日本のアニメを映画化した大作『スピード・レーサー』(2008)と、キアヌ・リーヴス主演で忠臣蔵をアレンジした映画『47RONIN』(2013)にも出演するが、興行的には大コケだった。

 しかし、『47RONIN』と同年公開の日本を舞台にしたヒュー・ジャックマン主演のスーパーヒーロー映画『ウルヴァリン:SAMURAI』(2013)が全米で大ヒット。真田は日本人の悪役、ヤクザのシンゲン役で出演し、ウルヴァリンと戦うシーンで、得意の武術も披露する。この頃、すでに真田がハリウッドに渡ってから約10年が経っていた。

 ここで注目したいのは、真田が映画と並行して人気ドラマシリーズにも次々に出演していたことだ。「LOST (ファイナルシーズン)」(2010)、「エクスタント (シーズン1)」(2014)、「HELIX -黒い遺伝子-」シーズン1・2(2014-2015)、「ウエストワールド」シーズン2・3(2018-2020)に出演。この経験から後に「SHOGUN 将軍」に繋がるドラマ制作の舞台裏を学んだのだろう。また、これらの人気ドラマにより、真田のアメリカでの認知度は、着実に上がっていったはずだ。

 こうした真田の歩みが、彼をマーベルの大ヒットマーベル映画『アベンジャーズ/エンドゲーム』(2019)へと導く。真田は本作で日本のヤクザのアキヒコを演じ、主要キャラの一人、ローニン(元ホークアイ)と戦った。そして2020年代に入ると、"日本人の悪役"ではなく"日本人のカッコイイ役"を演じるようになる。『モータルコンバット』(2021)のスコーピオン、『ブレット・トレイン』(2022)のエルダー、『ジョン・ウィック:コンセクエンス』(2023)のシマヅ役と、どんどん演じるキャラクターのカッコよさ、重要度が増してく。

 そして、彼の集大成として登場したのが、ドラマシリーズ「SHOGUN 将軍」だ。真田は主人公、徳川家康にインスパイアされた武将・吉井虎永を演じ、さらにドラマの製作総指揮も務めた。ドラマは大ヒットして、シーズン2、3の製作も決定。評価も高く、全米とカナダの映画批評家が選ぶクリティックス・チョイス・テレビジョン・アワードでは、惜しくも受賞は逃したが、作品賞、ドラマ賞、新番組賞、真田とアンナ・サワイの俳優賞と5部門にノミネート。全米で7月17日発表のエミー賞ノミネートにも期待がかかる。

 また「SHOGUN 将軍」は、真田が一貫して目指してきた、"日本人が見ても納得する日本、そして日本人の描き方"が結実した作品でもある。真田のこうした姿勢の原点として『ラスト サムライ』を見てみると、また新たな発見がありそうだ。(平沢薫)