影山拓也(撮影=林将平)

写真拡大

 IMP. 影山拓也が初の舞台単独主演を務める『星列車で行こう』。7月27日より京都・南座にてスタートする同舞台は完全新作舞台で、演出に坂東玉三郎、キャストに松田悟志、松村龍之介、石井一孝を迎える。

 主人公・太郎を演じるうえで「一つひとつを無駄にしないように吸収したい」と語る影山は、同舞台に対してどのように向き合っていこうと考えているのだろうか。新たな挑戦を目の前に、瞳を輝かせて取材現場に現れた影山本人にたっぷり語ってもらった。

■「自分は何もできないんだ……」と思って。だけど、それが嬉しかった

ーー初の単独主演舞台、おめでとうございます。まずは意気込みからお伺いさせてください。

影山拓也(以下、影山):坂東玉三郎さんのもとで初単独主演舞台をやらせていただけるとあって、魂を込めまくって精一杯演じさせていただきたいと思っています。それと、絶対に無事故で最後までやり遂げたいという気持ちです。

ーー台本を読んでみていかがでしたか?

影山:ファンタジーなストーリーで、とても楽しい作品になっていると思います。青年3人が自分たちの夢を見つけるために、「夢を見つけられる」という伝説のある“星列車”に乗るのですが、観ている方を勇気づけられるストーリーだなと率直に感じました。それに、観ていて共感できる部分が多いんじゃないかなって。僕自身も、演じさせていただく太郎にめちゃめちゃ共感できたんです。観ている方も、太郎、次郎(松田悟志)、五郎(松村龍之介)の誰かに共感できるはず。

 あと、3人の青年が自分の夢を見つけるために星列車に乗る部分はやっぱり見どころなのかなって。ぜひ、結末に注目してほしいです。「結局はこれが大事なんだ」という気づきがあると思います。観てくださる方の背中を押すストーリーにもなっているので、純粋に楽しんでいただければ嬉しいです。

ーー役に共感できる部分があるとのことですが、現時点でどのように役作りをしていこうと考えていますか?

影山:太郎の人生などは自分なりにしっかり解釈して演じるつもりなんですが、自分に似ている部分があるからこそ、あまり考えすぎなくてもいいのかなとも思っています。もちろん、違う部分もありますよ。太郎は、僕と違って優等生なんです(笑)。勉強もできるし、大学にも行っているし、就職もしていてめっちゃエリート。最初に台本を読んだ時は「なんで悩むの!?」と思ったくらい。太郎の悩みは、“自分らしさ”がなかなか見つけられないこと。それは親に敷かれたレールの上をずっと走らされているからで、そこは僕とは違う部分なのかもしれません。でも、太郎は誰にでも優しくて誠実で、正義感もある。演じるうえで、そういった部分は日常生活のなかで意識して行動してみようかなと思っています。

ーー日常に取り入れるという役作りの方法は、他の作品でやったりも?

影山:今回からやってみようかな、と。今まではいっぱいいっぱいで、とにかくセリフを覚えて演じるということしかできなかったんです。でも今回は、太郎と自分が似ている部分が少しあるからなのか、日常に取り入れられそうだなと思いました。

ーー初の試みで作り上げられる太郎像が楽しみです。そして、演出は坂東玉三郎さんが手掛けています。すでにやり取りはされているのでしょうか。

影山:数回ほどしかお会いできていないので、まだ深いお話はできていません。お話しさせていただいたのは発声練習について。歌唱シーンもあるので、「こういうふうに声を出すんだよ」と教えていただき、毎日続けています。

ーー5月末に行われた取材会のなかで「厳しく指導していただいて嬉しい」とおっしゃっていました。具体的にどんな指導を受けたのでしょう?

影山:声量、呼吸の仕方、歌い方、発声の仕方……全部ですね。僕自身、IMP.としてステージで歌ってはいるんですけど、それとはまったく違うんですよ。というのも、これまでは「こういうふうに発声してください」というものがなかったんです。自分の欠点、足りない部分が玉三郎さんとの歌稽古で明確に見えたのが大きかったですね。

ーー足りない部分とは、具体的にどんなことなのですか?

影山:本当に全部なんですよ(笑)。言い出したらキリがないくらい。今までは“IMP.の影山拓也”として歌わせてもらっていたので、僕の色が出ればそれでよかったんです。だからこそ、やるべき発声の方法がない状態でもありました。でも、今回は太郎として歌わなければなりません。しかもコンサートではないですからね。舞台上での歌い方がまるで違うのでイチからやっていかなきゃいけないし、「自分は何もできないんだ……」と思って。だけど、それが嬉しかったんです。今ここで気がつけてよかったな、って。

■玉三郎さんのように上品でいたい

ーーさらによくなっていく、ということですもんね。取材会のなかでは「玉三郎さんとお芝居させていただくことが宝になる」ともおっしゃっていました。どんなことを吸収しようと考えているのでしょうか。

影山:歌やお芝居はもちろんなのですが、玉三郎さんの空気感を吸収したいです。だって、普通なら玉三郎さんのもとでお芝居させていただけるなんて滅多にないことですからね。本当にすごいこと。なので、一分一秒を大事にして、玉三郎さんの佇まいや在り方など、すべてを吸収したいです。

ーー玉三郎さんは本当に素晴らしい方ですから、すでに感じ取っていることもありそうです。

影山:玉三郎さんは、話し方、所作、一つひとつが本当にきれい。なので、僕も見習いたいです。IMP.のメンバーとしても、影山拓也としても、表に立つ人間である以上、玉三郎さんのように上品でいたいと思うようになりました。

ーーなるほど。

影山:僕、メンバーによく「下品だな」って言われるんです。もちろん、からかって言っているのはわかっていますし、それが僕らしさでもあるんですけど……ねえ(笑)。だから、もう少し上品な大人になりたいという憧れがあるんです。

ーー影山さんはIMP.としてもステージに立っていますが、役者として舞台に立つこととの違いをどう考えていますか?

影山:IMP.として活動している時は、僕以外にもメンバーが6人いるので、実は何も考えていないんですよね。何も考えていないというか、メンバーに甘えているというか。でも、今回はひとりで舞台に立つことになる。だからこそ、上品さが大事だと思ったんです。

ーー心理的には共演者の方と一緒に舞台に立つことは、IMP.メンバーと一緒に舞台に立つことと似ているのかなと思っていましたが、違うんですね。

影山:やっぱり違うんですよ。メンバーは家族みたいなものなので、気を遣わないんです。今回の舞台では座長もやらせていただくので、皆さんに「この現場って楽しいな」「この現場って明るいよな」と思ってもらいたくて。自分が率先して引っ張っていかなきゃ、という気持ちです。

ーーメンバーの一員か、牽引する存在かの違いでしょうか。

影山:そうですね。上演が終わって何年経っても、「『星列車で行こう』って楽しい作品だったよね」と思ってもらえるように努力していきたいと思っています。

ーーグループ内で言うと、椿泰我さんも映画『僕らは人生で一回だけ魔法が使える』(2025年公開予定)への出演が決定しています。お互いアドバイスし合ったりはするのでしょうか。

影山:僕らって、不思議とそういう話はしないんですよ(笑)。「共演者の方と仲良くなれた?」という話はするんですけど、作品そのものや役についての話はしないかも。みんな、きっとどこかで「自分があれこれ言える立場じゃないもんな」ってわかっているんでしょうね。特に僕はそう思う気持ちが強いんです。椿くんも映画への出演が決まったけれど、そういう話はしていません。僕は椿くんが出演する作品の台本を読んでいないから、変にアドバイスできないよなって思うんです。それに、プレッシャーになっちゃうとかわいそうだなって。

ーーいい距離感ですよね。ちなみに、劇中では星列車に乗ると夢が見つけられるという伝説がありますが、影山さんの夢を教えてください。

影山:いっぱいあります! 僕の夢って家族でもあるメンバーの夢でもありますし、今まで応援してくれたファンの方の夢でもあるんです。なので、僕にとって大切なメンバーとファンの方の夢を叶えることが僕の夢です。直近の夢……目標ということ言えば、IMP.で全国ライブツアーがしたいです。6月に初の単独アリーナライブをやらせていただくのですが(取材は5月下旬に敢行)、次は全国をまわりたいです。

■好きなことを仕事にできるって、こんなにも素晴らしい

ーー今回は京都・南座からスタートしますが、影山さん流の京都の過ごし方はありますか?

影山:それ、本当に困っているんですよ……。「どうしよう?」と思って。南座に立たせていただいたことはこれまでにもありましたが、その時はメンバーと一緒だったんですね。なので、夜に椿くんの部屋に集まってみんなでピザを食べたりして(笑)。でも、今回は僕ひとりじゃないですか。だから、どうしようかなって。でも1カ所行きたいお店を見つけたので、本番までに行きたいところをいくつかピックアップしておこうとは思っています。

ーー3週間弱くらい期間がありますもんね。

影山:そうなんです。ただでさえひとりでいられないのになあ……。今だって、毎日誰かしらメンバーをごはんに誘っているんです。それなのに京都に3週間弱のあいだひとりでいるって寂しくないですか(笑)!?

ーーたしかに(笑)。

影山:だから、メンバーに「舞台を観に来るついでに1週間くらいいればいいじゃん!」って言っているんです。(マネージャーに)ダメですか? ダメかあ……。みんな、お仕事ありますもんね。でも、共演者の方と仲良くなって、絶対にごはんに行きたいんです。たくさんお話しして、コミュニケーションを取っていきたいです。

ーー影山さんにとって演技や音楽はどんな存在ですか。

影山:何も考えないでリラックスできる時間、ですかね。演技や音楽をしている時って、どこか自分じゃないみたいなんですよ。何もかも忘れられるいい時間。リフレッシュできる瞬間です。

ーーまさに天職ですね。

影山:ありがたいです。好きなことを仕事にできるって、こんなにも素晴らしいんだと最近気がつきました。これからも、頑張っていきます!

(文・取材=高橋梓)