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「土下座しろ!この野郎!」東京・世田谷の天ぷら店で、客が怒鳴り声をあげる「トラブル」が発生した。

FNNプライムオンラインによると、きっかけは、店が客の会計を間違えたこと。正しい代金は1万円だったが、誤って2万円を請求したという。その結果、客が激怒して怒鳴り声をあげる事態にまで発展したようだ。

仮に店に落ち度があったとしても、不当な要求までするようなら、「カスハラ」と言われても仕方ないかもしれない。さて、法的にはどうだろうか。冨本和男弁護士に聞いた。

●強要未遂にあたる可能性も

刑事の面では、強要未遂(刑法223条1項・3項)にあたる可能性があります。

強要罪は「人の意思決定の自由」を保護法益とする犯罪であり、脅迫または暴行によって人に義務のないことをおこなわせた場合に成立する犯罪です。

脅迫は、口頭・文書によるのが普通ですが、動作による場合も含まれ、黙示的な形態でも脅迫になりうるとされています。

今回のケースで、客は、土下座しないと店の人の生命、身体、自由、名誉、財産に害を加えるとまでは言っていないようです。

しかし、あまりにも執拗に怒鳴り声を上げ続けるような場合、状況によっては、普通の人からしたら恐怖心から要求に従わないと相手からどんな被害を加えられるのかわからないといった心境にさせられ、従わなければ害を加えると黙示的に言われているようなものであり、意思決定の自由を侵害されるのが普通です。

そのため状況によっては、怒鳴り声を上げ続けただけであっても、脅迫にあたる場合もあると考えます。

そもそも店の人は、会計をミスしたからといって、土下座をする義務まではありません。したがって、今回のようなケースは、脅迫によって義務のないことをおこなわせようとして遂げなかったとして、強要未遂にあたる可能性があります。

●精神活動の自由の侵害があまりにも酷いと言えるか

民事の面では、不法行為(民法709条)にあたるとして、損害賠償責任を負う場合があります。

不法行為は、故意または過失によって、他人の権利または法律上保護される利益を侵害する行為です。不法行為をおこなった人は、これによって生じた損害を賠償する責任を負います。

精神活動の自由も、法律上保護される利益です。賠償すべき損害には、精神上の苦痛に対する慰謝料も含まれます。

今回のケースで客は、怒鳴り声を上げて土下座を求めていました。仮に店の人の精神活動の自由の侵害があまりにも酷いと言えるような場合、違法性も認められ、損害賠償責任を負う可能性もあるのではないかと考えます。

【取材協力弁護士】
冨本 和男(とみもと・かずお)弁護士
債務整理・離婚等の一般民事事件の他刑事事件(示談交渉、保釈請求、公判弁護)も多く扱っている。
事務所名:法律事務所あすか
事務所URL:http://www.aska-law.jp