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Perfumeやきゃりーぱみゅぱみゅなどのヒット作品に携わり、アーティストやクリエイターの成功とメンタルの関連性について研究を続けている音楽プロデューサーの中脇雅裕さんの連載「美しくそして健康に 音楽のあるHappy Life」。第28回はいよいよ最終回「音楽が人を癒やす力について」です。

【写真】絶景!ホノルルのシェラトン ホテルのバルコニーから見る美しいビーチ

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ハワイ・ホノルル、最大のイベント

今、私はホノルルにいます。ここハワイ・ホノルルでの最大のイベントであるLantern Floating Hawaiiの音楽監督を20年近く勤めており、5月27日のアメリカの戦没者記念日であるメモリアルデイでのイベント本番に向けてホノルル入りしている訳です。ハワイのローカルの方々、そしてアメリカ本土から5万人以上も参加するイベントです。そして流れる灯籠の数は7000基ほど。灯籠に亡き人々へのメッセージを書き、それを海に流すシーンは何度見ても感動します。

ご存知の方も多いかと思いますが、ハワイはとてもスピリチュアルな土地で、自然を崇拝し、神々と共に生きた時代が長く続いた土地でもありました。そして、それは歴史の中で大きく変わっていきましたが、今でもそのスピリットは古典フラなどに垣間見ることができます。是非、ハワイにお越しの折は古典フラを見てください。感動します!

そして、私はこのイベントで音楽を担当させていただいているのですが、このようなイベントの音楽に携わると改めて音楽の効果というか、音楽の持つ力を実感します。

音楽とは不思議なもので長調(Major)の曲、例えば「ねこ踏んじゃった」とかを聞いて「悲しーーーー」と思う人はあまりいないかと思います。(ただし、歌詞は結構、残酷ですが…)また短調(Mainor)の曲、例えば「蛍の光」を聞いて「イエーイ!盛りあがってきた!」と思う人もほぼいないかと思います。これは世界的なもので、ほとんどの人々が長調の曲を聞けば明るく感じ、短調の曲を聞けば悲しい気分になるのですが、これは生まれてから誰かに「長調の曲を聴いたら明るく感じるんだよ!」と教えられる訳でもなくそう感じているのです。

自然界の中にはない和声(ハーモニー)

例えば他の感覚、色彩感などでは、壁が赤い部屋と青い部屋では体感温度が約3℃違うといいます。さらに赤い部屋にいると心拍数と体温が上昇し、青い部屋にいると心拍数と体温が低下するそうです。これは赤=火=熱い、青=水=冷たい、という我々が生きてきた中で自然の法則として体感したものからきています。味覚では子供が酸っぱいものや苦いものが苦手なのは腐ったもの、毒のあるものがそれぞれ酸っぱかったり、苦かったりするからと言われています。

視覚においては、ニョロっとした紐を蛇と勘違いしてびっくりして後退りしたりするのも、紐=蛇=危険、という認識ができているから、逃げるという行動に出ると言われています。因みに「蛇」に対しての恐怖感は後天的でなく先天的なものとも言われています。
これらの人の反応は全て「自然界」と人との関わりの中で生まれたものです。

しかし、音楽の明るい感じ、暗い感じを作り出す、和声(ハーモニー)は自然界の中にはないのです。それをどうして人は感じるのか…。実は、このわけも諸説ある様ですが、私が一番、確信に近いと思っているのは「声のトーン説」です。

暗い話をする時、例えば「昨日、財布を落としてしまって…」この様なことを話す時の声のトーンは暗くなりますよね。反面「宝くじの1等が当たって!」みたいな話をする時は声のトーンが明るくなります。

これも、なんとなく世界共通で、言葉の意味がわからなくても、声の調子で明るい話か暗い話かくらいはわかると思います。この声のトーンを音楽的に表現すると長調と短調になるという説です。


(写真◎フリー素材)

和声(ハーモニー)と人の感覚は面白いものがあって、かなり専門的になるので深い話は次回として「ディミニッシュ」というコード(和声)があります。これを聞くと「どうしてかな?」という不思議な感じを受けるのです。NHKの教育テレビなどで科学の実験のシーンで必ず使われていた和声です。

ともかく、我々、音楽を作る者は「音での感情表現」を仕事にしているのですが、その難しさと楽しさを痛感しているこの頃なのです。

メンタルケアはメディテーションが一番

さて、このコラムでは音楽を軸にみなさんがHappyな生活をしていただく為のヒントなどをお伝えしてきたわけですが40年間に渡り音楽の仕事を続け、素晴らしいミュージシャンたちと音楽を作り、音楽療法や心理学・コーチングを学び、「音」の持つ効果・効用を考えた上で、改めてみなさんに「人生がHappyになるための音楽との付き合い方」をご提案したいと思います。

やはりHappyに生きるためには「心身の健康」がとっても大切です。昨年、私が禅と音楽のコラボイベントをLAとNYで行った時、ざっと合計で200名くらいの方が見えたのですが、みなさん本当に真剣に坐禅に取り組まれていました。その理由としては「未病医療」の意識が強いのだと感じたのです。最近は日本でも鬱などで心療内科に通う方も多いと聞きます。アメリカは通院費が日本とは比べ物にならないくらい高いので、鬱になって病院に行かなきゃいけなくなったら大変!と思っているのです。ですから、メンタルケアにも真剣で、メディテーション・マインドフルネスを当たり前のように行っているのです。


(写真◎フリー素材)

私もメンタルケアに関してはメディテーションが一番効果的であると思っています。とはいえ、メディテーションのやり方がわからないという方も多いと思います。また、やってみても「雑念が止まらない!」という方も多いと思います。その時に役に立つのが「音」です。

本来、メディテーションに音・音楽は不要とされていましたが、実はそうでもないのです。例えば古来より、禅寺で坐禅を組むとき、もちろん音楽を聴かせたりはしていませんでしたが、そこには「自然の音」があったのです。鳥が鳴き、虫の声があり、風のそよぐ音、雨の日もあったでしょう。そこには素晴らしい「自然の音」のハーモニーがあったのです。この「自然の音」の効果はハイパーソニックエフェクトとして環境庁のHPにも掲載されていて、世界的に研究が進んでいるものです。

「自然の音」には聞こえない超高周波が含まれていて、これが前頭葉の血流を上げ、人の健康度を全体的に上げるという研究があるのです。私も今、関西の介護施設で「自然の音」を使った認知症の進行抑制のプロジェクトを行なっています。


(写真◎フリー素材)

「自然の音」とほぼ同じ効果を得られるもの

そこで、おすすめですが、特に都会にお住まいの方は折々「自然の音」を聞きに行っていただきたいと言うことです。
今、この原稿はホノルルのシェラトン ホテルで書いています。バルコニーからはワイキキビーチが一望できます。もちろん、窓を開けて波の音を聞きながら書いています。ですから、私の前頭葉の血流も上がっているはずでスラスラ原稿も書けるわけです。(笑)
この「自然の音」については、このコラムでも一度書かせて頂いていますので、そちらも是非ご一読ください。
https://fujinkoron.jp/articles/-/5709

そして、この「自然の音」とほぼ同じ効果を得られるものがあります。それが生のオーケストラによる演奏です。


(写真◎フリー素材)

こちらもお勧めしたいメンタルケアの方法です。もし、あなたがクラシック音楽好きなら上質なオーケストラによるクラシックの演奏会に行かれてみてはいかがでしょうか。生のオーケストラにも、「聞こえない音」の成分が多く含まれています。されにクラシック音楽にはいろいろな効果効用があると言われています。

代表的なものとして、複雑で美しいメロディーやリズムが脳の両半球を刺激し、記憶力や創造力、さらには集中力を高め、脳を活性化すると言われています。また、大脳辺縁系が刺激され心身が整うとともに、幸せホルモンが分泌され、不安やストレスの解消へとつながるという研究結果もあります。なかなか、自然の中にはいく機会がないという方は、クラシックのオーケストラのコンサートにお出かけになってはいかがでしょうか。

もちろん、メンタルケアだけでなく、身体のケアにも音楽は役立ちます。音楽は空気が振動することで、それが鼓膜に伝わり音として認知されるわけですが、実はその空気の振動は体全体で感じてもいます。つまり、皮膚がその振動を感じているのです。そして人の身体の50%は水分です。水分は振動をよく伝えます。つまり、皮膚で感じた音の振動は身体中に伝わるのです。

前述のハイパーソニックエフェクトも、このロジックから効果があるとされているのですが、これをもっと積極的に活用しているのが「マナーズサウンド」です。「マナーズサウンド」とは、英国のマナーズ博士(医学博士ドクター・サー・マナーズ)が、半世紀以上にわたる研究の上で「人体の器官や臓器の細胞が健康なときに発信している音(振動)」を分析・解明し、その音を乱れた細胞を持つ身体に聞かせることによって、細胞が共鳴して健康な状態に戻るということを発見したものです。このマナーズ博士の理論を応用して作られた音が「マナーズサウンド」で、WHO、国連もこの効果を認めています。

私も数年前にこのマナーズサウンドに出会い、すっかり虜になってしましました。そこで、マナーズインタナーショナル株式会社の代表である平田先生に協力いただき、このマナーズサウンドを使った音楽、マナーズミュージックを作らせて頂いています。もちろん、ストレスを減らす効果が期待できるメンタルに対応したマナーズミュージックもありますが「血流を上げる」「目の疲れをとる」「眠りの質を上げる」など身体に作用する目的応じた効果を選べるが良いところです。サンプルを聞いていただくリンクを最後に貼っておきますので、ご興味のある方は是非!


(写真◎フリー素材)

ゆったりとした音楽を聞きながらの「散歩」がお勧め

また、運動のお供にも音楽は最適です。エアロビやダンスにはビートでは効いた音楽がますとアイテムですね。社交ダンスも健康に良いと言われています。ともかく、ダンス+音楽は当たり前に良い運動であるとしても「ダンスはちょっとハードかな」とか「ダンスは苦手かも」という方には「散歩」をお勧めします!
こちらもこのコラムで一度、書かせていただきました。
https://fujinkoron.jp/articles/-/6933

WHOの《身体活動のガイドライン》 では「健康な大人は1週間に最低2時間半(つまり150分)の中強度の運動、または75分の強度の高い運動を、少なくとも2日は筋トレを行うように」としていますが、この中程度の運動が「散歩」でまかなえるのです。1日30分散歩をするとして週5ですね。後の2日はできたらスクワットなどの筋トレをすれば完璧です。そういえば黒柳徹子さんがジャイアント馬場さんに教わってスクワットを続けていらっしゃることは有名ですね。

話を散歩に戻しますが、ゆったりとした音楽を聞きながら運動をすると副交感神経が作用し、疲れ難くなるので前回の散歩のコラムには「散歩用の音楽」を作ってリンクを貼ってあります。是非ご活用頂きたいと思います!
因みにこの音楽は「散歩・ウォーキング用」としていますが、他のスポーツで活用頂いても問題ありません。ただし、この音楽はヘッドフォン・イヤフォンで聞く事で効果が期待できるように制作しています。そして、その効果は日本メンタル再生研究所で行った実験でも確認ができています。

●散歩・ウォーキングの疲れを軽減させる30分の音楽

「散歩」をさらに充実させる「歩行禅」

そして、散歩は身体を鍛えるだけでなくメンタル面でも有効です。一挙両得ですね。そこで今回は普通の「散歩」をさらに充実させる「歩行禅」をお伝えしておきます。この「歩行禅」もいろいろなやり方があるのですが、今回は比較的シンプルで簡単にできる「感謝の歩行禅」をご紹介います。

これは歩きながら全てものに感謝をしていくというものです。散歩ではありますが、この時は少し背筋を伸ばし、ご提供した音楽を聞きながらやや早めにテンポ良く歩き出します。そして日頃お世話になっている方々、家族、友人、職場の人々などを思い出しながら「ありがとうございます」と心の中で感謝していきます。そして、イメージができれば生きていくために必要である太陽や雨=水、道端にある名もない草花などにも感謝を捧げます。そして、自分が生きていることへの感謝も忘れずに。

この様に感謝を意識することで、人やモノに対しての対応が変化し対人関係が良好になり、ストレスが減ると言われています。30分の散歩の中で、例えば5分だけもこの「感謝の歩行禅」にトライしてみてはいかがでしょうか。

そして最後のお勧めは自分が好きな曲を改めて考えることです。

ある論文によると、好きな音楽を聴くことで強い痛みや不快感を大きく削減する可能性があるとのことです。好きな音楽を聴くことで、その痛みを認識することに混乱が起きて、その痛みの感覚が低下するためと言われています。
また、好きな音楽はその方の「良い記憶」と結びついていることが多く、その記憶が音楽を聴くことで呼び起こされて、脳内の幸福度を上げるドーパミンなどが分泌されます。つまりHappyな気持ちになるということです。

このコラムもおかげさまで2年…

さて、お好きな音楽はどんな音楽ですか?
是非、その音楽を暮らしの中でたくさん聴いてあげてください。きっとあなたをHappyな気持ちにさせてくれますよ。


(写真◎フリー素材)


このコラムもおかげさまで2年ほど続けさせていただきました。
寂しくはありますが、今回で一旦、おやすみさせて頂ければと思います。

とはいえ、まだまだまだ、みなさんにはお伝えしたいHappyになる為のヒントがたくさんあります。

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また、音楽療法やメディテーションにご興味のある方はこちらのリンクもご覧になってみてください。

長い間、ありがとうございました!
また、近々、みなさんにお会い出来ることを願っています!

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