大混戦の安田記念 穴党記者の期待は「最強世代」のGI馬2頭が見せる復活劇
東京競馬場を舞台にしたGI5週連続開催も今週で最後。ラストを飾るのは「春のマイル王決定戦」となるGI安田記念(6月2日/東京・芝1600m)だ。
今年に入ってからの中央競馬の平地GIはここまでに10レースが行なわれてきたが、1番人気の勝利は、天皇賞・春のテーオーロイヤルだけ。こうした流れのなか、迎える安田記念も1番人気が現在8連敗中だ。しかもそのなかには、モーリス、アーモンドアイ、グランアレグリアといった単勝1倍台の、当時の超エース級が含まれている。つまり、それだけ波乱に満ちた一戦と言える。
さらに今年は、香港から強力な"刺客"が2頭参戦。予想のうえでは、難解さが一段と増している。現に、スポーツニッポンの小田哲也記者はこう語る。
「今年の安田記念は、推理するのが難しい、波乱ムードが漂うメンバー構成になりました」
小田記者は続けて、まずは人気が予想される香港馬に疑問の目を向ける。
「2000mが主戦場で1600m戦での高速決着には不安があったロマンチックウォリアー(せん6歳)にとっては、週初めから雨続きの天候が好影響を及ぼすかもしれません。ですが、マイルがベストの距離かどうか。やはり、そこは大いに疑問です。
片や、ヴォイッジバブル(せん6歳)はマイルが主戦場ですが、左回りと道悪の実績がありません。その辺りがネックになるのではないかと見ています」
そこで、小田記者は地の利がある日本勢優位と見て、こんな見解を示す。
「天気を考えれば、週末は"底力系"の馬場が予想されます。となると、1分30秒台〜31秒台の高速決着ではなく、1分32秒台〜33秒台の力勝負になると想定され、狙い目となるのはそうしたレースで台頭する伏兵です」
そうして、小田記者は2頭の穴馬候補をピックアップ。1頭目は、復調気配のあるジオグリフ(牡5歳)だ。
「2年前のGI皐月賞(中山・芝2000m)を最後に勝ち星から遠ざかっていますが、直近の2戦、GII中山記念(2月25日/中山・芝1800m)で3着、GI大阪杯(3月31日/阪神・芝2000m)で5着と、復調の兆しを見せています。それに何より、3戦続戦できるのは、体調がいい証拠でしょう」
安田記念でジオグリフの完全復活なるか photo by Kyodo News
皐月賞では、あのイクイノックスを下している実力馬。それ以降、眠っていた底力がよみがえれば、確かにここでも勝ち負け必至だ。
「この馬が勝った皐月賞当日の馬場は、午前中が『やや重』発表のタフな設定でした。その前のレース、ダノンベルーガの2着と好走したGIII共同通信杯(東京・芝1800m)もやや重。また、デビュー2戦目には洋芝の札幌でGIII札幌2歳S(芝1800m)を圧勝しています。
となれば、週末に想定される馬場は合うはず。4歳の昨年は海外遠征やダート挑戦などで調子を取り戻せませんでしたが、気配が上向きのなか、今週の設定が同馬にはぴったりハマる予感がします」
小田記者が推奨するもう1頭も、ジオグリフと同世代のGI馬だ。
「ダノンスコーピオン(牡5歳)です。こちらも、2年前のGINHKマイルC(東京・芝1600m)で戴冠を遂げてから長い間勝っていませんが、前走のGII京王杯スプリングC(5月11日/東京・芝1400m)で4着。久々に"らしい"走りを見せました。
レース後、鞍上の戸崎圭太騎手が『復調の兆しを見せてくれた。次はもう一段上がりそうな雰囲気』と語っていたのも印象的でした。
東京マイルは、3歳秋のGII富士Sでも3着と好走。今回と同じく京王杯スプリングC(11着)から安田記念(13着)に挑んだ昨年の4歳時とは馬の出来も違うので、楽しみが膨らみます。
重や不良馬場の経験はありませんが、2歳時にやや重の新馬戦を快勝。母系にタフな産駒が多いサドラーズウェルズの血が入っていますし、荒れた馬場はマイナスにはならないと踏んでいます。状態次第では、一発あっても......」
激戦続く春のGIシリーズ。安田記念もずば抜けた存在がおらず、熾烈な争いが予想される。ここに挙げた2頭が混戦を縫って、上位でゴール板を駆け抜けても不思議ではない。