ベリンガム、フォーデン、ビルツ...今季欧州サッカーのベストイレブンを識者が選出
今季の欧州サッカーシーンのベストイレブンを識者3人が選出した。マンチェスター・シティのリーグ4連覇、レアル・マドリードの安定の強さ、レバークーゼンの無敗記録などがあったなかで、活躍、ブレイクした選手の存在を振り返る。
今季活躍したベリンガム(左)とフォーデン(右)。共に得点力を上げてブレイクした photo by Getty Images
中山 淳(サッカージャーナリスト)
FW/アーリング・ハーランド(マンチェスター・シティ)、キリアン・エムバペ(パリ・サンジェルマン)、ハリー・ケイン(バイエルン)
MF/トニ・クロース(レアル・マドリード)、ジュード・ベリンガム(レアル・マドリード)、ロドリ(マンチェスター・シティ)
DF/ヨシュコ・グバルディオル(マンチェスター・シティ)、アントニオ・リュディガー(レアル・マドリード)、ルベン・ディアス(マンチェスター・シティ)、アクラフ・ハキミ(パリ・サンジェルマン)
GK/ジャンルイジ・ドンナルンマ(パリ・サンジェルマン)
今シーズン最大のトピックは、ヨーロッパリーグ決勝戦で黒星を喫するまで無敗の快進撃を続けたレバークーゼンの躍進ぶりだ。ただ、最も活躍した11人を選ぶとなると、やはり基準になるのは最高峰の舞台・チャンピオンズリーグ(CL)になる。
まず前線は、エムバペ、ハーランド、ケインの3人。いずれもリーグ・アン、プレミアリーグ、ブンデスリーガの得点王に輝いた、世界最高のゴールハンターだ。
なかでもエムバペは、27ゴールをマークしてリーグ・アン6年連続得点王に輝いたほか、公式戦44ゴールを量産。ハーランドとケインを上回るゴール数をたたき出した。いずれにしても、恐ろしい3トップであることは間違いない。
中盤で選出したのは、クロース、ベリンガム、ロドリの3人。今夏のユーロ(欧州選手権)での現役引退を発表したばかりのクロースは、シーズンを通して好調を維持し、息を呑むような高精度パスなど、彼にしかできないプレーの数々を披露した。
最大のブレイクを果たしたのがベリンガムだ。カルロ・アンチェロッティ監督によって2トップ下に配置されると、潜んでいた得点力が開花して開幕からゴールを量産。勝負強さも際立ち、今シーズンのリーグMVPに選ばれるインパクトを残した。
一方のロドリは、プレミアリーグ4連覇を果たしたシティの心臓。類まれな技術と戦術眼は年々進化し、中盤の底としては世界最高レベルの選手になった。
DFラインは、グバルディオル、リュディガー、ルベン・ディアス、ハキミの4人を選出。リュディガーは、レアル・マドリードのDF陣にケガ人が続出するなか、守備の要としてシーズンを通して活躍。近年では最高のパフォーマンスを発揮した。
ルベン・ディアスもマンチェスター・シティの守備陣の要として安定感を披露。今シーズンもヨーロッパ屈指のセンターバック(CB)であることを証明した。左サイドバック(SB)は可変システムにも柔軟に対応したグバルディオル。特にシーズン終盤は、プレミアリーグでキャリアハイの4ゴールを記録するなど、その活躍ぶりが際立った。
右SBは、同じくルイス・エンリケ監督の可変システムによって、さらに進化したハキミを選出。攻撃時に、まるでアタッカーの選手のような振る舞いで公式戦5ゴール7アシストをマークした。
GKはドンナルンマを選出。ティボー・クルトワ不在を感じさせなかったアンドリー・ルニン(レアル・マドリード)の健闘も捨てがたいが、シーズンを通して傑出した守備力を披露したドンナルンマに軍配を上げた。
今回選んだ11人を見ると、まさに現在のオールスター。来シーズン、その顔ぶれがどのように変化するのか、新しいワールドクラスの台頭が楽しみだ。
【得点能力が開花したフォーデン】篠 幸彦(スポーツライター)
FW/アーリング・ハーランド(マンチェスター・シティ)、ヴィニシウス・ジュニオール(レアル・マドリード)、フィル・フォーデン(マンチェスター・シティ)
MF/フロリアン・ビルツ(レバークーゼン)、グラニト・ジャカ(レバークーゼン)、トニ・クロース(レアル・マドリード)、ロドリ(マンチェスター・シティ)
DF/アレッサンドロ・バストーニ(インテル)、フランチェスコ・アチェルビ(インテル)、ウィリアン・サリバ(アーセナル)
GK/アンドリー・ルニン(レアル・マドリード)
トップのハーランドと右ウイングのフォーデンは、マンチェスター・シティの前人未到のプレミアリーグ4連覇に大きく貢献したふたり。特に得点能力が開花したフォーデンはタイトルレース終盤戦でゴールを量産し、手がつけられなかった。ハーランドは、27得点で当たり前のように2年連続の得点王を受賞した。
ラ・リーガを支配的な強さで制し、CLファイナリストとなったレアル・マドリードからヴィニシウス、クロースを選出。クロースは、今季限りで現役を引退するのが信じられないほど、衰え知らずのクオリティを誇る。ヴィニシウスとのコンビで決めた、CL準決勝バイエルン戦1stレグでの先制点は、あまりに見事だった。
そんなレアル・マドリードの新たなアイコンとなったベリンガムも、トップ下で選ばれるべき選手ではある。しかしながらブンデスリーガ史上初の無敗優勝という偉業を成し遂げたレバークーゼンをリードしたビルツ、ジャカも選出に値するふたりだ。
セリエAでは、5試合を残してスクデット獲得を果たした今季のインテルの強さは圧倒的だった。そのなかで新境地を開拓し、優勝へ導く活躍をしたハカン・チャルハノールは今季を象徴するアンカーのひとりではある。ただ、いまやマンチェスター・シティの出来、勝敗を左右するほどの影響力があるロドリのクオリティは、このポジションでナンバーワンだろう。
DFは、インテルの強固な守備ラインの中心であるアチェルビ、バストーニを選出。革新的なシモーネ・インザーギ監督のインテルのなかで、アチェルビは対人で無類の強さを発揮し、バストーニは攻守に貢献度が高かった。
最終節までもつれたマンチェスター・シティとのタイトルレースでわずかに及ばなかったものの、アーセナルのウィリアン・サリバはリーグ戦全試合フル出場。リーグ最少失点の要となり、間違いなく今季のプレミアリーグを代表するCBだった。
GKにはアンドリー・ルニン。レアル・マドリードの絶対的な守護神であるティボー・クルトワの長期離脱という危機に、ケパ・アリサバラガとのポジション争いの末、その穴を埋めた。リーグ優勝はもちろん、CL決勝へ導く2本のPKストップは評価されるべきだ。
【ビルツ、ロドリ、ベリンガムの3人は確定的だった】西部謙司(サッカーライター)
FW/アーリング・ハーランド(マンチェスター・シティ)、キリアン・エムバペ(パリ・サンジェルマン)、フィル・フォーデン(マンチェスター・シティ)
MF/ジュード・ベリンガム(レアル・マドリード)、フロリアン・ビルツ(レバークーゼン)、ロドリ(マンチェスター・シティ)
DF/ヨシュコ・グバルディオル(マンチェスター・シティ)、フィルジル・ファン・ダイク(リバプール)、ウィリアン・サリバ(アーセナル)、カイル・ウォーカー(マンチェスター・シティ)
GK/ジョーダン・ピックフォード(エバートン)
選ぶにあたって確定的だったのは、ベリンガム、ビルツ、ロドリの3人。いちばん迷ったのはGKだったが、セーブ率の高さからピックフォードとした。
右SBはウォーカーかダニエル・カルバハル(レアル・マドリード)、あるいはアクラフ・ハキミ(パリ・サンジェルマン)もありかと思ったが、1対1の強さとカバーリング範囲の広さでウォーカーに。左は、同じくマンチェスター・シティのグバルディオル。SBという感じではないが、守備力の高さで印象的だった。
SBは求められるプレーが変化しているポジションで、「偽SB」として組み立てを担う、あるいは「偽CB」を使う場合の3バックとしてCB的な能力も要求される。従来の上下動ではなくなり、ウイング対策として屈強な守備者が起用されるケースも多くなってきた。
CBはサリバとファン・ダイクのコンビ。アントニオ・リュディガー(レアル・マドリード)、マヌエル・アカンジ(マンチェスター・シティ)、ガブリエウ・マガリャンイス(アーセナル)、ヨナタン・ター(レバークーゼン)も候補だった。
空中戦、マークの強さ、シュートブロックといった従来の資質に加えて、スピードが絶対条件になっている。とくにボール支配力の強いチームのCBは、広い範囲をカバーできる速さと守備力が欠かせない能力となった。
MFの3人はすんなりだったが、トニ・クロースを入れられなかったのは残念。今季で引退するが、レアル・マドリード、ドイツ代表で果たした役割は大きかった。ケビン・デ・ブライネ(マンチェスター・シティ)もすばらしかったが、欠場が多かったので選外。
イルカイ・ギュンドアン(バルセロナ)、エドゥアルド・カマビンガ、フェデリコ・バルベルデ(以上レアル・マドリード)も印象的だった。古典的な10番として復活したイスコ(ベティス)も面白かったが、MFにはベースとして高いアスリート能力が求められている。
FWは、右にプレミアリーグMVPのフォーデン。左はエムバペかヴィニシウス・ジュニオール(レアル・マドリード)で迷ったが、エムバペとした。ともに圧倒的なスピードでカウンターアタックの切り札だった。
センターフォワード(CF)はハリー・ケイン(バイエルン)、ロベルト・レバンドフスキ(バルセロナ)、アルテム・ドフビクなど多士済々ながら、プレミアリーグ得点王のハーランドを選出。マンチェスター・シティがボールを支配して押し込む流れになると、ゴール前以外はほぼ消えてしまうのだが、そのリーチと高さを生かした得点力は、やはり異次元だった。
今季の得点王は北欧系の長身CFが目立つ。ゴール前のパワー、高さだけでなく、むしろビルドアップで10人がマンマークされているので、トップに個の優位性があるタイプが求められているのだろう。