「自分がどのようにコーヒーに向き合いたいか」を考えて、例えば平日は全自動、週末はじっくりカスタマイズなど、生活に寄り添ったコーヒーメーカーを選ぶとよい(写真:Onzeg)

コーヒーが好きな日本人は昔から多かったが、時代とともに変わってきたのがコーヒーの楽しみ方。10年ほど前からコンビニでも挽き立てコーヒーが購入できるようになるなど、日本ではコーヒーの「美味しさ」にこだわるユーザーが増えているのだ。

以前は専門店でしか飲むことができなかった特別なコーヒー豆も、今は「スペシャリティコーヒー」として気軽に購入できるようになった。同じように、コーヒーメーカーも「高級モデル」が続々登場。そこで、ここでは30〜50代のビジネスパーソンに向けた、高級コーヒーメーカーの選び方について解説する。

高級コーヒーメーカーを形作る3つのポイント

数千円で購入できる手軽なコーヒーメーカーもあるが、今は数万円以上する「高級モデル」が人気だ。高級モデルは各メーカーがこだわりを詰め込んでいるだけに、さまざまな特徴がある。中でもポイントとなるのが「味」「デザイン」「手間」の3つだろう。


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とくに、購入時にチェックしておきたいのが「味」。コーヒーは「浅煎りのフルーティな酸味が好き」「深煎りでミルクアレンジがしたい」など、人によって好みや楽しみ方が大きく異なる。

低価格のコーヒーメーカーの多くが「万人受けしやすい標準的な味」を目指す中、高級モデルの多くは美味しいのは当たり前。さらに、専門家による監修やユーザーの細かな設定変更を可能にすることにより「個人の好みに刺さる味」を追求しているモデルが多い。

例えば、ツインバードの「全自動コーヒーメーカー 3杯用(CM-D457B)」はコーヒー界のレジェンドとも言われるカフェ・バッハ店主の田口護氏が味を監修。コーヒー好きからも評価が高いモデルだ。

【写真】本格コーヒーメーカーの特徴はさまざま。バルミューダ、ツインバード、ゴートストーリー、UCC上島珈琲、デロンギ、タイガー魔法瓶など(10枚以上)

さらに、味の好みにあわせて豆の粒度や抽出温度の変更も可能。パンチのある味なら細挽きの豆に高い温度を選択するなど、ある程度自分の好みにあわせた味を追求できる。


ツインバードの「全自動コーヒーメーカー 3杯用(CM-D457B)」。1杯ずつ豆を挽いてドリップする全自動ならではの手軽さも人気(写真:ツインバード提供)


豆を挽くグラインダーには燕三条製の低速臼式ミルを採用するなど、随所にこだわりが感じられる(写真:筆者撮影)

毎日コーヒーを飲むユーザーも多いため、コーヒーメーカーをキッチンやリビングの見える場所に出しっぱなしにする家庭も多い。このため「デザイン」も高級コーヒーメーカーを形作る重要な要素となった。

デザイン性の高さで定評があるコーヒーメーカーの1つがバルミューダの「BALMUDA The Brew」。ステンレスと艶消し樹脂を組み合わせたモダンなデザインの中に、レトロなオレンジランプを配置した絶妙なバランスが目を惹く。

本モデルのデザインで特徴的なのが、ドリッパー上部が開放されている点。コーヒー抽出中にドリッパー内をしっかり目視できるので、コーヒー豆が膨らむ様子や抽出中の香りの変化まで楽しめる。「抽出する工程」まで楽しむことをデザインしているモデルなのだ。


0.2ml単位でドリップ量や速度を緻密に調整する、バルミューダの「BALMUDA The Brew」(写真:筆者撮影)


「バイパス注湯」という特殊な熱湯の経路を作ることで、パンチがありながらも爽やかな後味のコーヒーが淹れられる(写真:筆者撮影)

コーヒーの何を楽しみたいかで選ぶモデルは変わる

「手間」に関しては、高級コーヒーメーカーは両極化している。豆を挽くことから抽出までを全自動化した「手間なし」マシンがある一方、あえて手間をかけることで「コーヒーを淹れる」という行為を楽しめる趣味性の高いモデルも増えた。

中でも究極の趣味性を追求したモデルといえるのが、ゴートストーリーが発売するスマートコーヒードリッパー「GINA」(以下、GINA smart)だろう。

GINA smartは重量計と一体化したスマートフォン連動式のドリッパーだ。このため、コーヒーメーカーというジャンルで販売されているが、コーヒーの抽出には自分の手でお湯を注ぐ必要がある。

使い方はシンプルで、ドリッパーにコーヒー豆を投入すると台座に内蔵された重量計が最適な湯量を計算。あとは連動したスマートフォンが表示する「残り湯量」と「お湯を入れるタイミング」にあわせてお湯を注ぐだけ。

気に入った味に巡り会えたら、水と粉の比率や蒸らし時間、抽出時間を専用アプリに保存できるほか、世界中のGINAユーザーのレシピを利用することも可能。

ハンドドリップは蒸らし時間を入れると1杯5分近く必要になるため、慌ただしい朝に利用するのには向かないが、自分好みのコーヒーの味をじっくり追求したい人にはとくに向いているだろう。


ゴートストーリーのスマートコーヒードリッパー「GINA」(写真:ゴートストーリー提供)


「GINA」のアプリ画面。ドリッパー根元の湯量バルブを調整することで水出しコーヒーや浸漬式コーヒーまで抽出可能と、汎用性の高さでも人気(写真:ゴートストーリー提供)

「コーヒーを美味しく飲む」ことを目的とし、手間を極力減らしたいという人も多い。抽出後のお手入れの手間まで軽減したいならば、カプセル式のコーヒーメーカーも選択肢に入る。

例えば、UCC上島珈琲の「UCC DRIP POD YOUBI」はカップに直接コーヒーを抽出。抽出後はホルダー内のカプセルを捨てるだけと、片付けの手間いらず。

専用カプセルにはブルーマウンテンやハワイコナといった高級豆も選べるほか、スマートフォンと連動させることでコーヒーのスペシャリストが作成した「プロレシピ」による抽出方法が選べる。同じカプセルでも抽出方法を変えることで、専門家が監修した異なる味わいのコーヒーが楽しめるのだ。


UCC上島珈琲の「UCC DRIP POD YOUBI」(写真:筆者撮影)


プロのコーヒー鑑定士によるテクニックを再現した「レシピ」での抽出も可能。専用フィルターを使えば一般的なコーヒー粉を使ったコーヒー抽出もできる点も魅力(写真:筆者撮影)

抽出方式からコーヒーメーカーを選ぶという手も

コーヒーの抽出方法には水(熱湯)をコーヒー粉に通過させる「透過法」と、粉を一定時間水(熱湯)に浸す「浸漬法」の大きく2つがある。ここまで紹介したのは、お湯を注いでコーヒーを抽出する一般的な透過法をつかったドリップ式コーヒーメーカーだ。

透過式には、これ以外にも圧力をかけてコーヒーを抽出するエスプレッソがある。エスプレッソは圧力をかけて一気にコーヒーを抽出するため、旨味はありつつも雑味が出にくいのが特徴。また、ドリップコーヒーよりカフェインが少ないといった特徴もある。

エスプレッソマシンには手動式やセミオートなど複数のタイプがあるが、毎日手軽に飲みたいなら全自動タイプが手軽。中でも、世界的シェアトップを誇るデロンギの「全自動コーヒーマシン」シリーズは、日本人好みのドリップコーヒーのような味を再現した「カフェ・ジャポーネ」といったメニューを持つことで人気だ。

このほか、上位モデルになるとフワフワのフォームミルクを使ったカプチーノやマキアートなどのアレンジコーヒーもボタン1つで作れるようになる。「自宅でドリンクバーのような体験がしたい」というニーズに応えてくれるモデルなのだ。


冷たいミルクメニューも得意なデロンギの「デロンギ エレッタ エクスプロア 全自動コーヒーマシン(ECAM45055G)」(写真:デロンギ提供)


自動洗浄機能も搭載しているので、基本的なメンテナンスはタンクに溜まったコーヒーカスを捨てるだけ(写真:デロンギ提供)

手間をかけてでも抽出過程を楽しむという選択

一方、浸漬法コーヒーの代表といえば、喫茶店などで見かけるフラスコを使ったサイフォン式コーヒーだろう。サイフォン式はコーヒーの粉を一定時間熱湯に浸してからろ過する方式のため、豆本来の特徴を引き出しやすい方法ともいわれている。

このサイフォン式の抽出方法を採用したコーヒーメーカーといえば、タイガー魔法瓶の「Siphonysta(サイフォニスタ)(ADS-A020)」だ。専用シリンダーの下にコーヒー粉、上に水をセットすることで、蒸らしから浸漬、攪拌、ろ過までを全自動で行ってくれる。

シリンダーが透明なので、粉が攪拌される様子や、コーヒーが下シリンダーから上シリンダーに噴き上がる工程を見るのも楽しい。抽出後のお手入れは少し複雑だが「サイフォン式の抽出過程まで楽しみたい」という世界中のユーザーから注目を集めているコーヒーメーカーなのだ。


タイガー魔法瓶の「Siphonysta(サイフォニスタ)(ADS-A020)」は珍しいサイフォン式コーヒーメーカー(写真:タイガー魔法瓶提供)


好みにあわせて抽出方法を制御し、同じ粉でも「酸味(苦み)」「ボディの強さ」などを指定して9通りの味に淹れ分けられる(写真:タイガー魔法瓶提供)

自分のコーヒースタイルにあわせて選ぼう

ここまでの解説でわかるように、実はコーヒーメーカー「これを買えば正解」というものはない。

例えば、普段はボタン1つでコーヒーが淹れられる「デロンギ エレッタ エクスプロア 全自動コーヒーマシン」、週末はGINA smartでゆっくりとコーヒーを淹れつつ自分の好みを追求するなど、自分のライフスタイルにあわせたモデル選びが重要なのだ。

これからコーヒーメーカーの購入を考えているなら、まずは「自分がどのようにコーヒーに向き合いたいか」を一度考えてほしい。

(倉本 春 : 家電ライター)