3歳馬の頂上決戦、GI日本ダービー(東京・芝2400m)が5月26日に行なわれる。

 今年の3歳牡馬戦線は、一冠目のGI皐月賞(4月14日/中山・芝2000m)の前までは大混戦の様相を呈して、同レースでは牝馬のレガレイラ(牝3歳)が1番人気に支持された。

 迎えた本番、激戦を制したのは2番人気のジャスティンミラノ(牡3歳)。無傷の3連勝で戴冠を遂げ、混戦から一歩抜け出して牡馬クラシック戦線のトップランナーに躍り出た。

 日刊スポーツの松田直樹記者も、同馬の能力については高く評価する。

「今年の皐月賞は、1分57秒1というレコード決着。2017年の覇者アルアインが記録した1分57秒8というタイムを、コンマ7秒も更新する超高速決着でした。

 勝ったジャスティンミラノは、前半1000mが63秒1という新馬戦(1着。11月18日/東京・芝2000m)、前半1000mが62秒7というGIII共同通信杯(1着。2月11日/東京・芝1800m)と、極端な瞬発力勝負のレースしか経験していませんでした。にもかかわらず、前半1000m57秒5というハイラップの皐月賞を差しきり勝ち。坂上でグンッと伸びて勝負を決めました。

 大跳びで加速に時間のかかる脚質で、3〜4角あたりでは一旦置かれるような反応を見せるなど、本質的には中山の舞台は合っていなかったと思います。しかも、ダービーを見据えた仕上げで、馬体重は10kg増。それでいて勝利してしまったのですから、とんでもない"怪物"なのかもしれません」

 しかしながら、ダービーの歴史を振り返ると、皐月賞を勝ってダービーで1番人気になった馬は、意外と取りこぼしが多い。過去10年を見ても、そういった馬で勝ったのは、ドゥラメンテとコントレイルの2頭だけだ。

 そんなことも踏まえつつ、松田記者はダービーにおける、あるセオリーを口にする。

「ダービーには、セオリーがあるのを忘れてはいけません。それは、皐月賞で一番いい脚を使った馬を狙え――というもの。実際、過去10回のダービーにおいて、皐月賞でメンバー最速(タイも含む)の上がりをマークした馬が5勝、2着1回(該当11頭。ダービー未出走のサトノアレスは除く)と、好成績を残しています。

 一瞬のキレが求められる中山と、持続的な伸び脚が求められる東京。直線の長さの違いから要求される性質も異なります。その点から、皐月賞で目を引く末脚を使った馬は、ダービーで狙う価値が十分にあります」

 そうして、松田記者はこの条件を満たす馬がジャスティンミラノを脅かす存在と見て、2頭の穴馬候補をピックアップした。

「まず注目したいのが、皐月賞で4着だったアーバンシック(牡3歳)です。今年の皐月賞でメンバー最速を上がりタイムを記録したのは、6着レガレイラと7着エコロヴァルツ(牡3歳)ですが、2頭の次に速い末脚を繰り出したのがアーバンシック。4角で外へ持ち出して、豪快に伸びてきました。

 2走前には、皐月賞と同じ舞台のGIII京成杯(1月14日/中山・芝2000m)で2着。その際、内に体を倒しながら伸びていたのが気になっていましたが、皐月賞ではその修正が図れていました。


舞台が東京に替わって、さらなる躍進が期待されるアーバンシック photo by Sankei Visual

 皐月賞の前、管理する武井亮調教師は『センスはいいけど、応用力がない』と話していて、当時はいろいろな経験を重ねつつ、少しずつ学習を進めている状況でした。隊列の先頭でキャンターを走らせたり、自立心を養う調教を課したりしていました。

 それが今、(皐月賞の)疲労が抜けてからは、調教では折り合いを含めて心身のバランスがとにかくいいです。この中間から使用しているクロス鼻革の効果もあってか、武井師も『状態はしっかり上がっています』と上積みを強調していました。

 昨秋の1勝クラス・百日草特別(11月5日/東京・芝2000m)で記録した走破タイムは1分59秒4。その勝ちタイムと後半1000m58秒6という数字は、2歳戦では滅多に見られない優秀な時計とラップです。

 身体能力は3歳トップクラス。武器となる末脚勝負に徹することのできる東京に舞台が替わるのは、同馬にとってプラスに働くと見ます」

 松田記者が推奨するもう1頭は、コスモキュランダ(牡3歳)だ。

「GII弥生賞(3月3日/中山・芝2000m)は6番人気で勝利し、皐月賞も7番人気ながら2着と好走。走っても、走っても人気にならない不思議な馬で、それだけの実績をもってしても、おそらく今回も伏兵の域を出ないでしょうが、同馬を管理する加藤士津八厩舎の伊藤祥徳調教助手は、『距離延長も(コースが)東京に替わるのもいい』と、ダービーの舞台設定を歓迎しています。

 キャリア8戦は出走メンバー中2番目に多い経験値。一時は出負け気味の競馬が続いていましたが、地道なゲート練習などもあって、皐月賞では中団でしっかり流れに乗っていました。

 ダービーに向けても、『中間はリカバリーもできている。皐月賞でジョッキー(ジョアン・モレイラ騎手)がこの馬の持っているもの以上を引き出してくれた。あの競馬をこなして、馬が一段上がった感じ。自分から動いても競馬ができるし、中団から前目の競馬でレースを動かしていくくらいの気持ちで走れれば』と、伊藤助手は手応えを感じているようでした。

 外をまくっていった弥生賞がレースレコードでの勝利。持続力のある末脚が持ち味です。底力を問われるダービーでも、その強みを存分に発揮できれば、再度の激走があっても驚けませんよ」

 ホースマンにとって、夢舞台である日本ダービー。今年も熾烈な争いになるのは間違いない。その白熱のレースにあって、ここに挙げた2頭がアッと驚く走りを見せても不思議ではない。