牝馬クラシック第2弾のGIオークス(東京・芝2400m)が5月19日に行なわれる。

 第1弾のGI桜花賞(4月7日/阪神・芝1600m)を快勝したステレンボッシュ(牝3歳)が人気の中心となりそうだが、今回は同馬にとっても初距離となる2400m戦。決して楽観視はできない。過去2年は桜花賞馬がそのままオークスも制して二冠を達成しているが、はたして3年連続で二冠馬誕生となるのだろうか。

「この時期の3歳牝馬において、2400mという距離は多くの馬が未経験。そうした条件にあって、毎年頭を悩ませる一戦ですが、今年も全出走馬が2400m戦は初。未知なる距離での争いの予想は難解を極めますが、牝馬の場合は完成度の高い馬が早い時期から活躍している面があり、2歳GIの阪神ジュベナイルフィリーズ(阪神・芝1600m)、そして桜花賞で結果を残している馬が有利、というのは変わらないと見ています」

 そう分析するのは、スポーツ報知の坂本達洋記者。既成勢力優勢と見て、ステレンボッシュの優位は動かないと踏んでいる。

「過去10年の馬券圏内(3着以内)に入っている馬を見ても、前走が桜花賞だった馬は、全30頭のうち、半数以上の18頭。7頭が勝利を飾っており、実績馬がオークスでも強さを発揮しているのは、データ的にも表われています」

 加えて言えば、過去10年の桜花賞馬のオークスの成績は8頭が出走して4勝、2着1回。1番人気も6勝、2着2回と、実績のある人気馬はかなり安定した結果を残している。坂本記者が続ける。

「桜花賞で1番人気に推されて2着となったアスコリピチェーノは、続くGINHKマイルC(5月5日/東京・芝1600m)で牡馬相手に2着と好走。今年の桜花賞のレースレベルの高さを証明したと思います。となれば、桜花賞組はなおさら有力視せざるを得ません。

 とりわけステレンボッシュは、管理する国枝栄調教師が以前から『距離が延びたほうがいいタイプ』と評価していました。オークスでも、崩れるシーンはなかなか考えづらいです」

 だとしても、ここ数年のオークスは人気馬が結果を出しているとはいえ、ふた桁人気以上の伏兵が必ず馬券圏内に突っ込んできている。昨年も、断然人気のリバティアイランドが勝ったにもかかわらず、3着に15番人気のドゥーラが入って、3連単は3万円超えの好配当をつけた。

 そうした状況を鑑みて、坂本記者も馬券的にはヒモ穴狙いを推奨。そのうえで、「好配当をもたらす伏兵は、桜花賞とは別路線組にいる」として、穴馬候補を2頭ピックアップした。

「1頭目はサフィラ(牝3歳)です。まだ1勝馬で、GIIIアルテミスS(10月28日/東京・芝1600m)の2着好走くらいしか実績はありませんが、デビュー前から素質の高さが評判だった逸材です。


オークスでの大駆けが期待されるサフィラ。photo by Getty Images

 前走のGIIIクイーンC(2月10日/東京・芝1600m)は9着と大敗しましたが、馬体重が前走からマイナス10kg。432kgとデビュー以来、最低でした。関東への長距離輸送が響いた様子で、レースでも好位から伸びを欠いていましたから、参考外としていいでしょう。

 そこで、今回は通常より1日早い金曜日に輸送するなど、対策を打ってくるようです。放牧で十分に立て直して、仕上がりもよさそうです。

 栗東CWコースでの1週前追い切りでは、併せ馬で6ハロン85秒5−ラスト1ハロン11秒1という時計をマーク。素軽い動きを披露し、全身を使ったバネの利いた走りは目を引きました。

 血統的な魅力も大きく、全兄サリオスはGI朝日杯フューチュリティS(阪神・芝1600m)の勝ち馬で、半姉サラキアはGIエリザベス女王杯(阪神・芝2200m)2着、GI有馬記念(中山・芝2500m)2着など、ドイツ血統の母系から受け継いだタフさを誇る活躍を見せました。

 こうした兄姉の活躍から、クラシックディスタンスをこなせる血統的下地は秘めています。大一番で良血の底力を見せてくれるのでは? と期待しています」

 坂本記者が推すもう1頭は、リステッド競走の忘れな草賞(4月7日/阪神・芝2000m)を勝って臨むタガノエルピーダ(牝3歳)だ。

「距離適性の高さや、臨戦過程から注目したい一頭です。マッチレースを制した新馬戦(10月14日/京都・芝1600m)は、3着以下を引き離した強い内容。続く朝日杯FS(12月17日)でも牡馬相手に3着と健闘したのは評価できます。

 2走前のGIIチューリップ賞(3月2日/阪神・芝1600m)は4着。大外発走の影響もあったと思いますし、強気の競馬で上位馬にキレ負けした印象でした。

 しかし、そこから距離を延ばした前走の忘れな草賞では完勝。収穫の多い内容だったと思います。近年のオークスでは、2019年の覇者ラヴズオンリーユー、2020年の3着馬ウインマイティーが、このレースの勝ち馬でした。

 鞍上は、前走で勝利に導いた川田将雅騎手から乗り替わりとなりますが、新たにコンビを組むのが大胆な騎乗で一発狙ってきそうミルコ・デムーロ騎手なら不足はありません。別路線組で人気の盲点になるようなら、狙ってみたいところです」

 先週のGIヴィクトリアマイルがそうであったように、牝馬限定戦は"荒れる"のが相場。オークスで激走を果たすのはどの馬か。ここに挙げた2頭であってもおかしくない。