欧州サッカー日本人選手番付(前編)

 欧州サッカーの2023〜24シーズンが幕を閉じようとしている。欧州でプレーする日本人選手の数は増え続けており、誰が活躍をしているのか、その活躍度を測るのも簡単ではない。「リーグやクラブのランク」「出場時間」「得点などの結果」「チームへの貢献度」などを総合して判断するしかないだろう。

 はたして今季、欧州で最も目覚ましい活躍を見せた日本人選手は誰か。日本や欧州のサッカーを長く取材してきた4人のジャーナリストに、それぞれトップ5を挙げてもらい、それをもとにランキング化した。


シーズン後半は不動のスタメンとして活躍した遠藤航(リバプール) photo by ZUMA Press/AFLO

【日本人選手史上、最高評価に値する遠藤航】

杉山茂樹(スポーツライター)

5位 伊藤洋輝(シュツットガルト)
 
 今季ブンデスリーガ8位(第33節終了時点)のフライブルクで、ヨーロッパリーグ(EL)を含めてほぼ1シーズン、スタメン出場を飾った堂安律。同13位のボルシアMGで、キャリアハイと思われる活躍を示した板倉滉。だが、彼らを抑えて5位に推すのは伊藤洋輝だ。昨季入れ替え戦に出場したシュツットガルトを、一躍、来季のチャンピオンズリーグ(CL)出場圏内に押し上げた原動力のひとりとして活躍した。パス出しの鋭さに加え、重厚感、迫力も加わった。左サイドバック(SB)とセンターバック(CB)の両方でプレーした点も評価したい。

4位 久保建英(レアル・ソシエダ)
 
 今季は初めて臨んだCLでベスト16入り。プレーする場のレベルを一段アップさせた。クラブではこれまで右、左、真ん中と3つのポジションをこなしてきたが、今季は9割方、右ウイングとしてプレーしている。選手としての方向性を鮮明にしながら、攻撃陣を牽引した。シュート力と縦に突破する爆発力がもうひとつ備わればさらに強力になり、レアル・ソシエダを卒業することができるだろう。

3位 菅原由勢(AZ)

 今季、欧州の日本人のなかで最も出場機会の多かった選手と言っても過言ではないだろう。出場時間は、オランダリーグの得点ランクで首位に立つバンゲリス・パブリディス(ギリシャ代表)に次いで、チームのフィールドプレーヤーで2番目だ。不動の右SBとしてオランダリーグ4位(第33節終了時点)の好チームを支えた。シャープな推進力に加えて、光るのは得点に絡むセンスで、同リーグで今季4ゴールをマーク。折り返しのアシストだけには終わらない、今日的な選手に成長している。

2位 冨安健洋(アーセナル)
 
 ケガのため、リーグ戦の先発出場は、37試合を消化した時点で9試合、交代出場12試合と、1シーズンを通してコンスタントに出場したわけではない。だが、アジアカップでの負傷が癒えたシーズン終盤はスタメン出場を続けている。それもUEFAランク1位のプレミアリーグで最後まで優勝争いを展開した、アーセナルでの話だ。欧州の最高ランクの舞台で、CBではなく主として左SBとしてプレーした器用さ、そのユーティリティ性にも最大限に賛辞を贈りたくなる。

1位 遠藤航(リバプール)

 シュツットガルトからリバプールへ。2階級というより3階級特進をはたした今季、当初はカップ戦要員だった。30歳をすぎた日本人選手にとって、リバプールは少し荷が重いクラブであるかに見えた。ところがアジアカップ明けあたりから評価を上げ、アンカーの地位を揺るがぬものにしていった。UEFAランクトップ5クラスのクラブで日本人選手が不動のスタメンとして活躍した過去はない。そんな史実に照らせば、最高評価を下さざるを得ないだろう。

【結果を残しプレースタイルも進化した南野拓実】

中山淳(サッカージャーナリスト)

5位 堂安律(フライブルク)

 PSV時代(2021−2022シーズン)の8ゴールには届いていない(第33節終了時点)が、国内リーグとヨーロッパリーグ(EL)でのゴール数は昨季よりも上積みすることができた点も含めて、フライブルク2年目の今季も上々のパフォーマンスを見せたと言っていい。特に今季は、ウイングバックも含めて複数ポジションに対応できることも証明するなど、数字には表れない質の高いプレーが随所に見られた。残念ながらチームの成績は昨季より下降してしまったが、個人としては確実に成長したシーズンだった。

4位 伊藤洋輝(シュツットガルト)

 今季のブンデスリーガで大躍進(第33節終了時点で3位)を遂げたシュトゥットガルト。そのチームの守備の要として安定したパフォーマンスを続け、CL出場権獲得に大きく貢献したのが伊藤だった。今季から指揮を執るセバスティアン・ヘーネス監督からの信頼も厚く、4バック時はCBや左SBで、3バック時は中央や左を任され、その期待に応えてみせた。負傷とアジアカップで昨季より出場時間は減少したが、それでも、プレー面で大きく成長を遂げたシーズンとなった。

3位 久保建英(レアル・ソシエダ)

 シーズン前半戦は6ゴールを量産。初ゴールこそ奪えなかったが、CLでも高いパフォーマンスを発揮して決勝トーナメント進出に貢献するなど、今季は間違いなくキャリアハイの成績を残す、と思われた。ただ、アジアカップ以降は連戦の疲労が蓄積し、急速にトーンダウン。とりわけ終盤戦は、ケガの影響もあってパフォーマンスが低下して、ベンチスタートを強いられる試合が増えてしまった。お預けとなりそうな二ケタゴールは、来季のノルマだろう。

2位 南野拓実(モナコ)

 昨季はほぼ何もできずに終わったが、2年目の今季は覚醒。29試合に出場して9ゴール、6アシストをマーク(第33節終了時点)するなど、数字としてもしっかり結果を残すことに成功した。それ以上に驚かされたのは、ボックス内で勝負するアタッカーの領域にとどまらず、周りを使いながら好機を作り、自らゴールも決めるというニュータイプの南野に進化した点だ。複数ポジションをスムースにこなせるようになったのがその証。CLの舞台に戻る予定の来季も楽しみだ。

1位 遠藤航(リバプール)

 今季リバプールに移籍した遠藤だが、加入当初と現在を比べると、予想をはるかに超えるレベルで成長を遂げている。世界屈指のビッグクラブ、しかもボランチというチームの中心ポジションで、これほど活躍した日本人は過去にいない。その意味でも、今季の遠藤の活躍は大きな意味を持つ。ボールを奪う能力に磨きをかけたほか、ボールテクニックや戦術眼においても大きく進化。加えて、リーグカップ優勝に貢献したこともひとつの勲章となった。
(つづく)