石川祐希が明かすペルージャ移籍の真相 日本からのオファーもあったが「目標に向かって突き進むことを最優先」
石川祐希のAttack The World vol. 11
ペルージャ移籍について 前編
今や、移籍市場での動向が最も注目される選手のひとりになった石川祐希。4シーズンに渡って慣れ親しんだミラノに別れを告げ、この秋からペルージャの一員となることを5月14日に発表した。
ペルージャは今シーズン、リーグだけでなくカップ戦のコッパ・イタリアも制し、各国の一流選手が名を連ねる常勝軍団。そんなチームで、新たな道を歩む決断をした理由とは。
ペルージャへの移籍を発表した石川祐希 photo by 立松尚積
――ペルージャに移籍を決めた理由を教えてください。
「単純に勝ちたい、1番になりたいという理由でペルージャを選択しました。僕の目標のひとつが、『セリエAのトップ4のチームでプレーすること』でした。今は勢力図も変わってきましたが、ペルージャ、トレント、チビタノーバ、モデナのどこかに行きたいと思っていたので、そのチャンスが巡ってきたと思いました。
以前にも、それらのチームから『興味がある』と言われたことはあったんですが、アウトサイドの3番手とか、『試合に出られない確率が高いだろう』という条件だったので(オファーを)受けなかったんです。でも、今はミラノでステップアップして、プレーオフで2年連続、コッパ・イタリアでは3年連続でベスト4に入りました。もう2位は見ていなくて、優勝だけを目指している。そのためにペルージャに行きます」
――以前にもオファーがあったんですね。
「昨季や一昨季にも、正式にではないですが話はありました。ただ、条件面も含めて今が移籍するべきタイミングだと思ったんです」
――もう少し詳しく、決断の理由を聞かせていただけますか?
「条件面もいいし、すばらしい選手たちが揃っていたので、そこが決め手になりました。もうひとつは、ペルージャのアンジェロ・ロレンツェッティ監督が、僕が中央大1年でモデナに行った時の監督だったこと。それで、『アンジェロの下でもう1回やりたいな』と。イタリアで1年目、何も知らなかった僕を受け入れてくれた監督に、成長した姿を見せたい思いもありましたね」
――オファーが届いた時の気持ちを教えてください。
「もちろんうれしかったです。トップのチームなので、そこでプレーできるのは楽しいだろうなと」
【日本のチームからのオファーも】――いい選手が揃っているチームで、スタメン争いも激しくなりそうですね。
「来季もオレイ・プロトニツキ選手(ウクライナ)とカミル・セメニウク選手(ポーランド)がチームに残ります。ふたりは結果も出しているので、そこに(割って)入っていくのはなかなか難しく、ハードルは高いと思います。だけど、そこにトライしてスタメンを勝ち取ることが、1番やるべきことだと思っています。優勝しか見ていないチームでそれを果たし、2年連続の優勝へと導きたいですね」
――来季は、欧州チャンピオンズリーグ(CL)も戦うことになりますね。
「CLに出るのは僕も初めてです。そこで優勝することも目標のひとつですし、『達成する時が来たな』と思っています」
――金額的には日本のチームからのオファーのほうがよかった、とも聞きます。それでもイタリアでやると決めた理由は何だったんですか?
「セリエAはプレーしていて楽しいし、レベルが高くて価値があるリーグです。そういったところでプレーすることはお金以上に価値があるし、今しかできないことでもあります。
確かに日本のチームからのオファーは、金額面も含めて条件がよかったので、そちらを選択する道もあったとは思います。ただ、今年で29歳になりますし、決して選手として若いわけではない。チャンスは年齢を重ねれば重ねるほど少なくなってくるので、そのチャンスを掴んで目標を達成したい、と思ってイタリアでやり続けることを決めました」
――迷いはありませんでしたか?
「パリ五輪が終わったあとのシーズンですし、日本でコンディションを整えながらプレーするのもありかな、と考えたことはありました。だけど、『僕がやりたいことは何なのか』と思った時に、やっぱりイタリアでプレーしていたかった。目標に向かって突き進むことを最優先しました」
【スタメン奪取のためにやるべきこと】――石川選手はシーズン中も移籍市場で話題になっていましたが、どんな心境でしたか?
「実際には、シーズン終盤には移籍が決まっていましたが、僕の口からは言えませんでした。それでもミラノのために戦っていましたし、プレーオフ準決勝でペルージャを倒したかった、勝ちたかった、というのが本音です。
僕の力でミラノを勝たせて、僕の力をアピールしたかった。昨季はプレーオフ準決勝で負けて、その悔しさがあったので、今季はペルージャを倒して何が何でも決勝に進みたかったですが......届きませんでしたね」
――ペルージャはプロトニツキ選手、セメニウク選手を筆頭に層が厚いチームです。どの部分で勝負し、スタメンを勝ち取ろうと思っていますか?
「そのふたりはディフェンスがいいので、その面では彼らと同じか、それ以上にやらなければいけないと思っています。僕も同じようにレシーブ、スパイク、サーブも打てるタイプなので、最低限そこは必要です。ペルージャはプレーオフ決勝の試合でも、ミスが多いと代えられてしまうことがあるので、ミスが少ないことが前提だと考えています。
あとは、数字に表われないところ、たとえばリバウンドを取ったり、チームに対しての立ち振る舞いだったり、そこも意識したいですね。今季はシモーネ・ジャネッリ選手(イタリア)がチームをうまくまとめていましたけど、そこも一緒にできるようになればチームに欠かせない存在になれる。そういったところで、彼ら以上にアピールしたいです」
(後編:新天地での目標「日本人でも世界のトップになれるということを見せたい」>>)
【プロフィール】
◆石川祐希(いしかわ・ゆうき)
1995年12月11日生まれ、愛知県出身。イタリア・セリエAのミラノ所属。星城高校時代に2年連続で三冠(インターハイ・国体・春高バレー)を達成。2014年、中央大学1年時に日本代表に選出され、同年9月に代表デビューを飾った。大学在学中から短期派遣でセリエAでもプレーし、卒業後の2018-2019シーズンからプロ選手として同リーグで活躍。2021年には日本代表のキャプテンとして東京五輪に出場。29年ぶりの決勝トーナメント出場を果たした。