古馬牝馬による春の女王決定戦、GIヴィクトリアマイル(東京・芝1600m)が5月12日に行なわれる。

 牝馬のGIとあって"荒れる"イメージが強いが、実際に3連単では高配当がしばしば生まれており、春のGIのなかでも波乱の多いレースのひとつと言える。スポーツニッポンの鈴木悠貴記者もこう語る。

「2015年に3連単のGI最高配当となる2000万円超えの馬券が飛び出すなど、波乱が目立つ一戦です。過去10年の結果を見ても、1番人気が勝ったのはわずか2回です」

 そして、鈴木記者はこのレースの意外な法則について触れる。

「実は、前走1着馬が勝てない一戦なんです。過去10年間で前走1着馬は39頭も出走しているのですが、勝ち星はなし。連対したのもたったの3頭と大不振です。

 一方で、2014年のヴィルシーナ、2015年のストレイトガール、昨年のソングラインと、前走10着以下から巻き返して勝利した馬が3頭もいます。前走で6〜9着だった馬も、2020年のアーモンドアイを含めて3頭が勝っています。

 つまり、前走で消化不良の結果に終わった実力馬は要注意です。こうした馬を見つけることが、高配当をゲットするポイントになるのではないでしょうか」

 今年のメンバーのなかで前走振るわなかった実力馬というと、3歳時にGIオークス(東京・芝2400m)で2着、GI秋華賞(阪神・芝2000m)で戴冠を遂げたスタニングローズ(牝5歳)がいる。過去の例に照らし合わせると、同馬が面白い存在と言えるかもしれないが、鈴木記者は「それ以上に魅力的な存在」として、2頭の激走候補をピックアップした。

 まずは、今回が初のGI出走となるフィアスプライド(牝6歳)だ。

「前走のGIII中山牝馬S(3月9日/中山・芝1800m)は、最重量ハンデ(56kg)を背負わされたうえ、苦手なパワーを要する馬場。加えて、スローペースのなか、外、外を回される厳しい競馬となって、9着という結果もやむを得なかったと思います。

 好メンバーがそろった前々走のGIIIターコイズS(12月16日/中山・芝1600m)では、上がり3ハロン33秒9の末脚を繰り出して重賞初制覇。能力の高さは折り紙つきです。

 6歳にして初のGI挑戦となりますが、管理する国枝栄調教師も『力をつけているからね』と、この馬に対する期待は大きいようです」


ヴィクトリアマイルでの一発が期待されるフィアスプライド。photo by Sankei Visual

 鞍上には、先週戦列復帰を果たしたクリストフ・ルメール騎手を確保。その辺りからも、勝負度合いは高い。

「ルメール騎手は、過去10年で8回騎乗して3勝、2着1回、3着1回と、さすがの戦績。先週、ケガから復帰したばかりですが、得意条件で持ち前の手腕をいかんなく発揮してくれるはず。名手とのコンビは心強い限りです。

 また、同馬には血統面でのあと押しもあります。ディープインパクト産駒は過去10年で3勝、2着4回、3着4回と断然の成績。速い上がりが求められるレースゆえ、瞬発力を身上とするこの馬にとっては、ベストな舞台と言えるでしょう」

 鈴木記者が注目するもう1頭は、ライラック(牝5歳)。GI勝ちこそないものの、GIエリザベス女王杯で2着(2022年/阪神・芝2200m)、4着(2023年/京都・芝2200m)といった好走歴がある実力馬だ。

「前走のGII阪神牝馬S(4月6日/阪神・芝1600m)は約3カ月半ぶりの実戦で、いつもの反応が見られずに10着。前々走のGI有馬記念(12月24日/中山・芝2500m)は、実績が乏しい2500m戦で13着。いずれも同馬にとっては厳しい条件だったことを思えば、度外視していいと思います。

 3走前のエリザベス女王杯では、上がり3ハロンでメンバー最速タイの時計をマークして4着。あらためて力のあるところを示しています。牝馬同士なら、実力上位。末脚が生きる東京コースでの巻き返しが期待されます。

 中間の調教の動きも抜群。美浦・Wコースでの2週前追い切りでは、馬なりでラスト1ハロン11秒4という好タイムをラクに記録し、戸崎圭太騎手が騎乗した1週前の追い切りでもラスト1ハロン11秒2と、極上の伸び脚を披露しました。

 その動きを見守った相沢郁調教師も、『1週間放牧に出してリフレッシュできた。いい状態です』と好ジャッジ。前走を叩いて状態は最高潮ですから、今回は能力を出しきってくれると思います」

 乙女たちによる熾烈なマイル戦で、波乱の歴史は繰り返されるのか。もしそうなら、ここに名前が挙がった2頭がその一端を担ってもおかしくない。