2024年の元日、能登半島を襲った地震。想像を絶する被災状況に胸を痛めながらも「もし、自分が被災したらどうなるだろう?」と考えた方も多いのではないでしょうか。

ここでは、国際災害レスキューナース・辻直美さんの『プチプラで「地震に強い」部屋作り』(扶桑社)の内容を一部抜粋、再構成。辻さんに聞いた、今すぐできる自宅の防災対策をご紹介します。

【写真】書類はバラバラにならないよう箱に入れる

文房具や菜箸…普段使いしているものが凶器に変わる

津波の被害が甚大だった東日本大震災は別として、地震で亡くなる方の原因として多いのは圧死です。阪神・淡路大震災でも亡くなった方の77%が窒息・圧死だと言われ、能登半島地震でもやはり、死因の多くが圧死だったと報じられています。

また、家が全壊して屋根や天井が落ちてきて…ということもありますが、みなさんが思っている以上に多いのが、落ちてきたものや倒れてきた家具の下敷きになって死に至るケースです。

大地震が起こるとものは落ちる、倒れる、移動する、そして飛びます。小さなものも凶器に変わります。命を守るためには、非常持ち出し袋や備蓄品の備えも重要ですが、被害を最小限におさえる「地震に強い部屋づくり」が重要です。

とはいえ、忙しい毎日、すぐに家中を防災化するのは大変。そんな方は、まず次の5つのことだけでもやってみてください。

1:腰より高い位置に重いものを置かない

まずは、部屋を360度ぐるりと見渡してみてください。見上げながらぐるっと見たら、次は、少し低い姿勢からも確認してください。

「ヤバッ!」「あぶない!」…。そう感じるものがあったら、それは、地震のときあなたを傷つける可能性があるものです。

その「あぶない!」という感覚はとても大切です。重いもの、割れるものは、すぐに置き場所を変えましょう。

2:家具の重心を低くする

収納をするときは「重心を低く」が基本です。重心が高いと転倒のリスクが格段に上がります。いちばん下の段には重いものを入れておく、上には軽いものを置く、ということを意識してください。

転倒の心配がない低い家具でも同じで、2016年に発生した熊本地震では、飛び出したロータンスの引き出しがハイハイをしていた1歳の男の子の命を奪っています。

揺れによって、タンスの中のものが動くことで、引き出しが飛び出してくることがありますが、いちばん下に重いものを入れて安定させておくとある程度、防ぐことができます。

3:玄関までの避難路を確保

地震が発生すると、家具やものはありえない動き方、倒れ方、崩れ方をします。倒壊や火災などのリスクがある場合は、速やかに外に出る必要があります。

そのとき、部屋から玄関までの通路が転倒した家具やもので遮られていたら、避難に時間がかかってしまい危険です。各部屋から玄関までのルートは確保しておいてください。

4:寝る前だけでもいいから片づける

暗闇では、足元を確かめることができません。人は意外なものでケガをします。被災地で鉛筆やシャープペンシルが足を貫き、歩けなくなった方を私は何人も見てきました。足をケガしてしまったら、避難やその後の復旧活動に大きな影響を与えます。

毎日、夜寝る前にだけでいいので、散らかったものを片づける習慣をつけましょう。片づけるといっても、出しっぱなしのものを一緒くたに収納ボックスの中に入れるだけいい。寝る前のこのワンアクションだけで、生存率は上がります。

5:どこか1か所「安全地帯」をつくる

もう少しがんばれるという人は、ここだったら電気が落ちてこない、エアコンが落ちてこない、ものが倒れてきても当たらない、という空間をつくっておきましょう。

そして、地震が起きたら、とにかくそこに「逃げる」。そんな安全地帯を家の中に設けておくのです。

ほかの部屋がどれだけものであふれていても、その部屋・スペースだけは散らかさず、床にはなにも落ちていない、という状態にしておきましょう。その安全地帯に食糧と水の備蓄を置いておけば、キッチンがぐちゃぐちゃで使えないというときでも1〜2日ははなんとかなるでしょう。