日本では6割の夫婦が陥るといわれるセックスレス。「夫のプライドを傷つけたくない。だからなにも言えなかった」と話すのは、レス歴20年を超える主婦のゆかりさん(仮名・50歳)です。よき相談相手になってくれたママ友に誘われて参加した“主婦合コン”の実態とは? レスに悩む妻の本音を語ってくださいました。

軽いノリで参加した“主婦合コン”が楽しかった

第一子出産後、夫とレスになってしまったゆかりさん。産後レスに陥るケースは珍しくなく、周りのママ友と悩みを打ち明け合いながら傷をなめ合っていた頃、仲よくしていたママ友のA子さんから誘われたのが“主婦合コン”という名の飲み会です。

「夫には『ママ友と飲み会に行きたい』と言って、夜子どもをみていてもらって出かけました。一応、嘘はついていないし、罪悪感もなかったです。むしろ、産後はいつだって子どもと一緒。夜に一人で出かけること自体、久々でテンションが爆上がり。なにもかも新鮮でうれしかったです」

A子さんからは、知り合いが幹事をしていると聞いていたそう。会場は普通の居酒屋。半個室の部屋に集まったのは3対3の既婚男女6人でした。

久しぶりに交流したほかの男性と連絡先を交換

「会話の内容は、ごく普通の合コンと同じです。『どこに住んでるの?』とか『仕事はどういう系ですか?』みたいなやり取りはあるけれど、暗黙のルールなのか、全員、家庭の話はしませんでした。正直に言うと、夫とできない以上、久しぶりに交流したほかの男性たちに少し興味はあったんです」

6時にスタートして、きっちり2時間でお開きに。その中のひとりと気が合って、連絡先を交換。

「向こうは定期的に会える相手を探していると言っていて、たまにこうして夜飲みに行ったりできたらいいなくらいに思っていたんです」と話すゆかりさん。夫に内緒の“主婦合コン”はとても楽しかったのですが、子育て中の主婦生活は忙しく、なかなか二人で出かけるという時間はつくれないまま、“主婦合コン”は、同じメンバー、同じ居酒屋で2回目が開催されることになりました。

一歩間違っていたら、自分だったかも…

そこでゆかりさんは、少しショックなことがあったといいます。

「ママ友のA子が、少し遅刻して参加者の中の一人と一緒にお店に入ってきたんです。『私たち、デートしてきましたー!』って。まぁ、そういう集まりってわかってはいても、あまりに生々しすぎてびっくりしてしまって。ほかの人はみんな受けて盛り上がっている様子でしたが、私は完全に引いてしまいました」

ちょっといいなと思っていた男性にも久しぶりに会えて、飲み会自体は楽しかったものの、結局ゆかりさんは実際に不倫をする勇気まではないと自覚してしまったといいます。ところが、後日、A子から思いもよらぬ告白をされました。

壊れていく家庭。「私にはどうすることもできなくて…」

2度目の“主婦合コン”からしばらく経ったある日、A子さんから「話したいことがある」と連絡がきました。久しぶりに二人でお茶をしにいくことに。そこで告げられたのは、A子さんの妊娠でした。

「どうするのか聞いたら『産みたい』って言われて。A子の家庭もレスだったから、旦那さんにはすぐにバレたと言っていました。相手の男性はお医者さん。お金の部分などのサポートはしてくれることになったけれど、向こうは離婚できないとかで。シンママとして育てていくという話をされました」

ゆかりさんのお子さんとA子さんのお子さんは仲がよく、家族ぐるみでのつき合いもありました。相談を受けている間、ゆかりさんはA子さんの旦那さんやお子さんの顔が浮かんだといいます。

「自分が不倫をしたわけではないけれど、罪悪感と後悔しかありませんでした。もうどうすることもできません。一歩間違っていたら、私だってA子と同じようによその男性にのめりこんでしまっていたかも。あんな飲み会しなければよかった」

結果的にA子さんは離婚して、お引っ越しされてしまいました。当時は今のようにLINEもなく、だんだん連絡も取り合わなくなって疎遠になってしまいました。

夫との距離は近いのに触れられないまま20年

20年以上のレスではあるけれど、今も夫との仲は良好だというゆかりさん。夫側はどんな様子なのかも聞いてみました。

「レスになって5、6年の頃、夫が薄毛治療薬をこっそり使っていることを知ったんです。まだ30代で、たしかに少し薄くはなっていたけれど、私が思うより本人は気にしていたのかもしれません。あとから知ったのですが、あぁいう薬を使うとできなくなるっていうことがあるらしいですね。『したくない、したくない』って逃げていたのは、できなくなっている自覚があったからなのかもって思ったら、ちょっとかわいそうな気がしたんです。彼のプライドを傷つけないためにも、もう自分から迫ったり話し合いをもちかけることもやめてしまいました」

夫にも相談できる人がいれば違っていたかも…

「私はママ友とのおしゃべりでしょっちゅうレスの話題をしていたけれど、夫にはそういう人がいなかったんじゃないかな」と振り返るゆかりさん。一緒にドラマや映画を見ているときにベッドシーンが始まってしまうと、急に気まずくなってしまうそう。

「触れ合いたいけれど自分からは言えない。夫はお酒を飲まないから、酔った勢いで抱きついたりもできないんです。肩を抱き寄せたり頭をなでたりしてくれるだけでも、女性はうれしいものなんだよっていうのを、だれか夫に言ってくれないかなぁとか思っているうちに時間だけが過ぎてしまいました」

ところがつい先日、夫婦関係に小さな変化が生まれたとか。ゆかりさんがよろけたタイミングで、久しぶりに夫が手を差し伸べてくれたのです。

「ギュって手を握ってくれたから、そのまま手を繋いで歩いたんです。そしたら『おぉ、手を繋ぐの久しぶりだなぁ』って夫がすごくうれしそうに笑ってて…。今ではもう子どもも独立し、家のなかでは夫婦二人きり。行為自体はなくてもいいけれど、恥ずかしがらないでスキンシップはどんどんとっていこうかなって、あのときの夫のうれしそうな顔を見たら、気持ちがすごく前向きになりました」