普段の食事はもちろん、お菓子もできるだけ体に優しくておいしいものがいいですよね。そうした健康志向の高まりもあって、植物性の素材でつくるお菓子が人気を集めています。

ここでは、乳製品や卵を使わないグルテンフリーレシピが満載の『麹の発酵クリームと発酵おやつ』(旭屋出版)より、おいしくて体に優しい「発酵クリーム」のレシピと、クリームを使った簡単おやつをご紹介します。

植物生まれの「発酵クリーム」って?

「発酵クリーム」とは、麹の発酵の力で豆乳のうま味や甘さを引き出してつくった植物生まれのクリームです。乳製品や卵を一切使わずにつくるので、ヴィーガンやアレルギー(乳製品や卵によるもの)をもった方でも安心。

麹でつくるクリームは、うま味と甘味が凝縮され、植物生まれとは思えないリッチなおいしさです。

クリームのベースになる「豆乳甘麹」のつくり方

クリームのベースになるほか、お菓子づくりの多様な場面で、とても便利に使えます。豆乳甘麹を加えることで、コクとうま味が増し、乳製品や卵以上のおいしさが生まれます。

【材料(出来上がり量900g)】

成分無調整豆乳 600g 生麹 300g(乾燥麹270g)

【つくり方】

(1) 鍋に豆乳を入れ弱火にかける。ヘラでよく混ぜ、60℃を超えないように注意して加熱する。火を止めて、麹を加えよく混ぜる。

(2) チャック式袋もしくはガラス容器などに入れ、タオルで包んで炊飯器へ入れる。

(3) タオルで全体をくるみ、炊飯器へ入れ、フタをあけたまま保温モードで6〜8時間おく。60℃前後になるよう、初めのうちは温度計を用いて確認する。途中2〜3度袋の上から揉むようにして混ぜる。

フタを閉めると、温度が高くなりすぎてしまいます。

(4) (3)を鍋に入れて中火にかけ、ひと煮立ちしたら火を止める(火入れ)。粗熱が取れたら冷蔵庫で保存する。

<ヨーグルトメーカーの場合>

途中2〜3度かき混ぜながら60℃で6〜8時間加温する。

発酵後そのまま放置すると酸味が出てしまいます。すぐに火入れをし、冷蔵庫で保存します。常温で放置すると乳酸発酵し、酸味が加わってしまいますが、火入れをすることで、乳酸菌などを殺菌し、酵素の働きを止め、保存性が高まります。

季節によって、また麹によっても発酵時間が異なります。味を見ながら丁度良い時間を見つけてください(夏場は発酵時間が短く、冬場は長くなります)。

賞味期限:冷蔵庫で1~2週間、冷凍庫で1か月保存可能。

チャック式袋の耐熱温度は、メーカーによって異なるので、確認してから使用してください。

●上手に発酵させるポイント

(1) 麹選び

麹はそれぞれ味わいがまったく異なり、お菓子づくりの際には繊細に風味が左右されます。まずは試作を繰り返しながら、お好みの麹を見つけましょう。

(2) 発酵させる温度

甘味をつくる麹菌の酵素アミラーゼが、最も活発に働くのは60℃前後です。発酵させる際は55℃以下、65℃以上にならないように温度管理に気をつけましょう。最初は温度計を準備し、測りながらつくると、安心です。慣れてくれば自分の感覚だけでつくれるようになります。

(3) 消毒

麹をかき混ぜるスプーンや、保存する容器は必ず殺菌しましょう。雑菌が入らないようにすることで、風味が損なわれずに、最後までおいしくいただくことができます。外気に触れないチャック式袋は、雑菌が入りにくいため、保存性が高まるのでおすすめです。

「豆乳甘麹」は「発酵生クリーム」のベースになるのはもちろん、ドリンクとしても楽しめます。豆乳と割って飲むとミルキーな風味に。スムージーなど、いろいろアレンジするのもおすすめ。また、油分と水分が乳化する仲立ちをしてくれるので、お菓子づくりにも使えます。甘味やうま味が加わり、風味よく仕上がります。

「発酵生クリーム」のつくり方

濃厚なコクながら、さらりとした軽い甘さが調和するクリームは、豆乳甘麹のなせるワザ。罪悪感なく存分に楽しめるのもうれしいです。また時間と共に甘味とうま味が増してきます。

【材料(出来上がり550g分)】

絹豆腐 1丁(350g) A[豆乳甘麹200g てんさい糖50〜60g ココナッツオイル(無香)90g] バニラエクストラクト(バニラオイルやバニラエッセンスでも代用可能) 小さじ2

【つくり方】

(1) 豆腐はキッチンペーパーに包んで一晩しっかりと重しをかけ、210〜220gになるまで水きりをする。ココナッツオイルは固まっていたら40〜50℃で湯せんして溶かす。

水きりが進まないときは、重しを増やして記載の重量まで水きりをしてください。

(2) (1)の豆腐とAを合わせて、ブレンダーかフードプロセッサーでよくかくはんする。豆腐が冷えているときは40〜50℃で湯煎しながら混ぜる。全体が乳化して、ツヤが出てきたらでき上がり。

(3) 香りづけにバニラエクストラクト(バニラオイルやバニラエッセンスでも代用可能)を入れて、よく混ぜる。冷蔵庫で1〜2時間よく冷やす。1日経つと味がなじみ、しっかり固まってきます。

「発酵生クリーム」は、ケーキのデコレーションやケーキに添えるソースとして使えます。冷たいままでも、少し温めてトロリとかけても。また、カカオや抹茶などを加えてフレーバークリームにしてもおいしいですし、洋菓子はもちろん和菓子やフルーツなどにも合います。

余ったクリームをそのまま冷凍すれば、使いたいときに使えます。そのままでアイスクリームとしてもいただけますよ。

​「発酵生クリーム」を使った簡単おやつ

発酵生クリームを使った簡単なおやつレシピをご紹介します。

●生クリームのフルーツ和え

発酵生クリームを、桃やイチジク、シャインマスカットなどの季節のフルーツに添えれば、それだけでリッチなデザートに早変わり。フルーツのうま味を引き出すクリームで、フルーツをとことん味わい尽くしましょう。

●抹茶のムース

混ぜるだけのお手軽レシピとは思えない、リッチで濃厚なムース。濃厚抹茶味に、発酵生クリームをたっぷりかけて召し上がれ。

絹豆腐200gとココナッツオイル(無香)70g、抹茶大さじ1、塩少々、メープルシロップ大さじ3をボウルに入れ、40〜50℃で湯せんしながらブレンダーでかくはん。グラスに注いで冷蔵庫で冷やし固めたら、発酵生クリームを添え、抹茶(分量外)を軽く振りかけます。

●クリームバナナシェイク

発酵生クリームとバナナは相性バツグン。冷凍バナナ1本と成分無調整豆乳50mlをミキサーにかけます。氷を入れたグラスに注いで、発酵生クリームを絞れば完成!

『麹の発酵クリームと発酵おやつ』(旭屋出版)では、麹でつくる発酵クリームレシピのほか、発酵あんこや、手づくり麹のつくり方をはじめ、それらを使った簡単おやつ、味噌、みりん、酒粕、甘酒などいろいろな発酵食材を使ったおやつのレシピも紹介しています。