子どもを望む結婚にかたくなにこだわると、婚活がうまくいかないようです(写真:8x10/PIXTA)

婚活に踏み出すきっかけは、人それぞれ理由がある。そのなかでも気持ちを突き動かす大きな1つが、「子どもを持ちたい」ではないだろうか。

仲人として婚活現場に関わる筆者が、婚活者に焦点を当てて苦労や成功体験をリアルな声とともにお届けしていく連載。今回は、“子どもを望むための婚活”について考えてみたい。ここにかたくなにこだわると、どうも婚活がうまくいかない。

50代で婚活を始めたものの…

まりえ(51歳、仮名)は、大学を卒業して日本の会社に就職したあと、30代で海外に渡った。2カ国で働いて40代で帰国。その後は日本で語学を生かした仕事に就いて、楽しく充実した人生を送ってきた。

そんななかで恋愛もしてきたのだが、それが結婚に結びつくことはなく、50代になった。

「人生100年時代、最近は110年時代なんていわれていて、私は今折り返し地点にいます。働ける限りは仕事をしていたいのですが、今後の人生を考えたときに、1人で生きていくのは寂しい。子どもを授かれる年齢ではないけれど、一緒に暮らしていけるパートナーは欲しいと思ったんです」

そうした理由から、人生初の婚活にチャレンジをすることになった。

まりえは、これまで婚活アプリなどにも登録したことがなく、婚活サービスは結婚相談所のサイト登録が初めて。登録後に自分の年齢に見合う50代男性を検索したのだが、男性たちのプロフィールをチェックしていくうちに、驚きの事実に気がついた。

「びっくりしました。50代なのに、“子どもを希望します”という方が、あまりにも多かった。初婚男性は8割がた、再婚者でも前の結婚で子どもがいない方は子どもを希望している。そうした方たちは、当然のことながら女性の希望年齢が30代になっています。50代の私はお呼びでない」

そして、ため息まじりの口調で続けた。

「60代になっても子どもを望んでいる男性もいるんですね。娘のような年齢の女性と結婚して、孫のような年齢の子どもの父親になろうとしているのでしょうか」

しかし、これが婚活市場の現状だ。

30代の女性からしてみたら、父親と同世代の男性を結婚相手には選ぶことはほとんどないので、年の差婚がかなう男性は稀有だ。ただ、可能性はゼロではない。

実際、娘のような年齢の女性と年の差婚をして、50代、60代で父になっている人たちはいる。それが芸能人や有名人だったりすると、メディアがセンセーショナルに取り上げるので、「自分もそれに続く」とばかり、希望を見いだしてしまうのだろう。

筆者はまりえに言った。

「同世代の男性と結婚したいなら、再婚者で、子どもがいる人が狙い目ですよ。50代ですと、子どもが大学生や社会人だったりする。子育ても終わっているし、社会に出ていたら子どもも自立しています。そういう男性の多くはもう子どもを望んでおらず、気の合う同世代のパートナーを探しています」

結婚の目的は子どもを授かること

また男性のなかには、「お金があれば、若い女性と結婚できる」と思い込んでいる人も少なくない。そうした男性は高年収だったり、不動産、預貯金、株などの資産があったりするので、「子どもが大人になるまでの蓄えは、十分にあります」と胸を張る。さらに、体力に自信があって、「自分は若く見える」と自負している。

しょうじ(54歳、仮名)は外資系勤務で、年収が1500万円。母はすでに他界し、84歳の父と3歳下の独身の妹がいた。

入会面談では開口一番、「結婚して子どもを授かりたい」と言った。昨年、都内の一等地に建てた一軒家で一人暮らし。父は、24時間いつでも温泉に入れる高級ホテルのような高齢者施設で暮らしているという。

「家のローンはすでにありません。建てるときに現金で支払いました。妹は都内のタワマンに住んでいるのだけれど、結婚する気もないし、もう子どもが授かれる年齢でもない。最後の親孝行として、自分が結婚して、孫の顔を親父に見せたいんです」

しょうじには父親から受け継げる資産があり、本人も高収入なので、「これから子どもを授かったとしても、生活費も学費もパートナーに心配をかけることはない」と言った。

さらに、こう続けた。

「先日、大学時代の仲間との飲み会があって、この話をしたんですよ。そうしたら、参加していた女性の1人が、『そんなこと言ったって、もう54歳でしょ。仮に若い女性と結婚できたとしても、あなたに妊娠させられる能力があるの』と、ド直球くらって(苦笑)」

気の置けない間柄だったから、そんな言葉も出たのだろう。

「それで調べたんですよ。今は郵送で精子検査ができるので」

ひと昔前、“不妊の原因は女性側にある”と考えられていた時期があった。ところが今では、“不妊の原因が男性にもある”というのが、周知の事実となっている。責任は半々だ。結婚して子どもを授かりたい夫婦は、そろってクリニックでブライダルチェックを受ける時代なのだ。

そんななかで、クリニックに行かなくても郵送で精子検査ができる専門機関ができ、子どもを望んでいる男性の間で、広く知られるようになった。

しょうじは、調べた結果を自信ありげに筆者に告げた。「数も動きも、まったく問題がありませんでした」。

45歳以上の女性には目もくれず

こうして始めた婚活なのだが、54歳で30代の女性とお見合いが組めることはほとんどなかった。一方で、条件が良かったことから、45歳以上の女性からはたくさんのお申し込みが来た。しかし、そこには目もくれない。

現実を知って、しょうじは肩を落とした。「申し込んでも辞退の返事ばかり。受諾されないというのは、自分を全否定されているようで、つらいですね」。

その後も、30代女性に100件近く申し込みをし、ようやく2件お見合いが成立した。37歳のまゆ(仮名)と、39歳のよしみ(仮名)だった。

しかし、結果的に2つともうまくいかなかった。まゆは上から目線の発言が多く、「自分は、お金のかかる女だ」と終始アピールしていたようだ。

「とても苦痛な1時間でした。お断りでお願いします」

お見合いを終えてすぐにしょうじから、交際辞退の連絡が来た。

よしみとのお見合いは、「見た目が写真とかけ離れていた。どうやったらあの写真が撮れるのか不思議なくらい別人でした」と言い、こちらもしょうじから交際辞退の返事があった。

実は、よしみとのお見合いに関しては、女性からも交際辞退が来ていた。

「お写真は若々しかったけれど、お会いしたら年相応の見た目でした。会話もおじさん感が否めず、ジェネレーションギャップを感じました」と、辛辣な辞退理由が記されていた。お互い様だったようだ。

こんな厳しい状況のなかでも、しょうじの「子どもが欲しい」という気持ちは変わっていない。「やるだけやって結婚できなかったら、1人で生きていきますよ」と言う。

「子どもを授かる結婚ではなく、パートナーと2人で暮らす結婚は、選択肢にないのですか?」と尋ねたのだが、「自分にとって結婚の目的は、子どもを授かること。それが不可能なら結婚しなくていい」と、かたくなだった。

しょうじが仮に30代の女性と結婚できたとしよう。ただ、子どもができるかどうかは運もある。不妊治療などあらゆる手を尽くしたけれど、子どもを授からなかったという結果だってありえる。そうなったとき、しょうじは子どものいない結婚を受け入れられるのだろうか。

“子どもが欲しい”という気持ちを手放したら、もっと楽に婚活ができるのだろうが、今のしょうじにこの言葉は届かない。

子どもを望むアラフォー女性も

子どもを授かるということでは、男女ともに年齢のリミットがある。

男性は60代になっても父親になっている人がいる。人間国宝の故・歌舞伎役者は、74歳で父親となって話題になった。だが、これは稀なケースだ。

女性の場合、子どもが授かれるリミットは閉経までといわれている。ただ40代になると妊娠率はグンと下がり、男性よりも女性のほうが子どもを授かれる期間が短い。

そんななかでも相談所にやってくるアラフォー女性は、「(子どもを授かる)最後のチャンス」という人が多い。

さとえ(40歳、仮名)が、入会面談にやってきたときのことだ。

「37歳から38歳まで、1年ほどお付き合いしていた4歳下の男性がいたのですが、その間に結婚話がまったく出なかったんです。何かおかしいと思ったら、彼が二股をかけていたことがわかって。私から別れを切り出しました」

大手メーカーに勤めているさとえは、年下男性の2倍近い年収があった。分譲マンションもすでに購入していて、デートはもっぱらさとえの家。男性の懐事情に気を遣って、お金のかからないデートをしていた。

ところがそんな思いを踏みにじられ、二股をかけられただけでなく、年下女性には彼がお金を使っていたことがわかった。それを知って、さらに怒りと憎しみが増した。

「すでに38歳。そこから婚活アプリや友達の紹介などで婚活を始めたんですが、なかなかいいご縁に恵まれなかった。アプリで出会う男性は、即結婚というよりも、まずは彼氏彼女の恋人期間を経てから結婚を考えている人が多かった。あと、深い仲になると実は既婚者だったというのがわかった人も数人いました」

 そうこうしているうちに2年が経ち、40歳になってしまった。

「もう悠長なことはいってはいられないので、婚活に本腰を入れることにしました」

こうして結婚相談所での婚活をスタートさせたのだが、当初は年下にばかり申し込みをかけるので、なかなかお見合いが組めなかった。そこで、「男性の年齢の幅を広げましょう」と筆者がアドバイスしたのだが、「上だとしても、できるだけ自分の年齢に近い男性がいい」とゆずらなかった。

50代以上の男性から申し込みが来ても、決して受けない。どんなに高年収でも、「お金があればいいってもんじゃない」と突っぱねた。

さとえは、結婚したら不妊治療でも何でもして、子どもを授かりたいという。実際、そういうアラフォー婚活女性は増えている。さとえのように、子どものためにも若い男性がいいと考える女性も一定数いる。

不妊治療については、以前は隠して治療を受ける女性が多かったが、現在は治療を受けるカップルも増え、仕事先に体外受精や不妊治療を公言する女性も多くなってきている。助成金制度が終了し、2022年4月から保険適用となったのも大きいだろう。

2人で生きるための婚活

時代の流れとともに婚活事情も変わりつつあるが、晩婚化が進んでいる昨今は、「子どもを授かりたい」という気持ちが、男女ともに婚活を本格的にスタートさせるきっかけになっていることは確かだ。

しかし、子どもを授かりたいのであれば、結婚を20代、30代前半に組み込む人生計画を立てたほうがいい。

年齢を重ねてから子どもを望む人たちは、男女ともに相手に“若さ”を求めるようになる。そうなると、男性が求めるベクトルと女性が求めるベクトルが、きれいにすれ違ってしまう。


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自分の人生は、自身で納得して道を切り開いていくものだ。結婚の目的が子どもを授かることならば、納得がいくまでそれを念頭に置いた婚活をするしかない。

だが、目の前のやりたいことを優先してしまったり、たまたまご縁がなく結婚せずに年齢を重ねてしまったりしたのなら、「子どもが欲しい」という気持ちは手放して、将来のパートナーを探す婚活に切り替えてみるのも1つの方法ではないだろうか。

(鎌田 れい : 仲人・ライター)