今年は「副業に挑戦したい人」にプロが薦める会社
「プロの副業人材」のスタートアップでの働き方とは(写真:jessie/PIXTA)
コロナ禍を経て、「スタートアップで働きたい」という人が転職・副業、ともに急増している。
スタートアップへの転職・副業サイト「アマテラス」を運営し「スタートアップ転職・副業のプロ」である藤岡清高氏は、これまで2000人以上からスタートアップ転職や副業の相談を受けてきた。アマテラスを通じて、毎年200人以上がスタートアップ企業の「コアメンバー」や「CxO候補」として参画しているという。
そんな藤岡氏の初の著書『「一度きりの人生、今の会社で一生働いて終わるのかな?」と迷う人のスタートアップ「転職×副業」術』は、スタートアップで「働きたい人」「副業してみたい人」「興味がある人」の知りたいことが全部わかる、日本初の入門書だ。
「スタートアップ転職・副業のプロ」である藤岡氏が、スタートアップ副業での「凄い働き方」について解説する。
スタートアップで副業をする人が急増中
年が明け、「これまでやったことのない、新しいことに挑戦してみたい!」と考えている人も多いのではないでしょうか。
私のおすすめは、スキルアップ・キャリアアップを図ることができ、収入増にもつながる、「副業」への挑戦です。
実はここ数年、スタートアップに副業で参画する人たちが急増しているのです。
とはいえ多くの人は、
「スタートアップって激務なのでは?」
「本業を続けながら、スタートアップで副業をするなんて可能なの?」
と疑問に思うことでしょう。
スタートアップはミッションドリブン(すべての意思決定や行動がミッションに基づいて行われる)の組織なので、雇用形態は柔軟です。
「回転扉」のように人材が出入りすることを是とし、必要なタイミングで必要な人材に関わってもらえればいいと考えます。
そして、スタートアップは成果重視ですから、「成果を出せる人材」でさえあれば、効率を優先した働き方などの一人ひとりに合った働き方ができます。
裁量のある仕事や重要な意思決定の機会にも恵まれ、勤務時間が短くてもキャリアアップが期待できるのです。
そんなスタートアップから需要が高いのは「プロの副業人材」です。
「プロの副業人材」とは、「自分の持っているスキルを活かして副業先でもきっちりと成果を出し、報酬をもらいながら成長していく」という働き方で、キャリアアップを目指す人たちを指します。
では、「プロの副業人材」はスタートアップでいったいどんな働き方をしているのでしょうか。
一例として、「Lightblue Technology社」というスタートアップ企業に副業で参画している、立花優也さんの事例を紹介します。
立花さんは現在、本業を続けながら、「プロダクト・マネジメント職で月20時間だけ働く」という副業をしています。
「成長スピードを加速させるため」副業する
立花さんは、新卒で国内大手通信キャリア企業に入社し、10年以上にわたってサービス企画・開発業務に従事していました。
2020年6月には大手事業会社に転職し、現在に至るまで、不動産領域における新サービスの企画・開発業務に携わっています。
ビジネスと開発両面での経験から、両者のブリッジとしての役割や、プロダクト・マネジメント、プロジェクト・マネジメントなどを得意としている立花さん。2021年9月からは、Lightblue Technology社での副業をスタートしました。
立花さんは副業を始めた理由について、次のように話しています。
「プロダクト・マネジメントは職務の領域が非常に広く、プロダクト以外にもビジネスの検討や開発ディレクションもやりますし、UI/UXにも強くなければいけません。
それらの知識を広げるためには、座学やセミナーでのインプットも大切ですが、副業を通じて新たな実務経験を積むことで、自分の成長スピードを加速させられるのではないかと考えました」
しかし立花さんには、フルタイムで働いている本業の仕事もあります。
そのため、副業先を探すときには、本業やプライベートへの影響がどうなるのか、稼働時間はどのくらいになるのかを懸念していたそうです。
立花さんは「ワークライフバランスを保ちつつ、きちんと成果を出す」ことができるように、過度な稼働時間やストレスが予想される副業先については、オファーが来ても辞退しました。
たとえば、こちらが細かな業務内容をすり合わせたいと思っているのに、「何も決まっていないからよろしく」などと言ってくるようなスタートアップ企業などに関しては、「期待する役割や成果を明確にしないまま丸投げする会社は信用できない」と感じ、辞退したそうです。
そして、「その仕事が自身の成長につながるか」「キャリアにどのような効果をもたらしてくれるか」を常に考えて、副業先を検討していきました。
「フルリモート」で5人のメンバーを率いる
立花さんは現在、副業先のLightblue Technology社で、新規に立ち上げた独自SaaS(Software as a Service)のプロダクト・マネジメントを担当しています。
チームは立花さんを含めて5人いて、全体の仕様の整合性などを見るリーダーと、リードエンジニア、そしてインターンが2人。立花さんは全体工程のチェックや仕様確認、各工程の進捗管理をしつつ、各メンバーのタスクの状況確認、ファシリテーションなども行っています。
メンバーとのコミュニケーションが必要なポジションですが、普段のやり取りはSlack、週次の定例会ではZoomを利用した対話型のコミュニケーションを取っていて、本業も副業もフルリモートで業務を行っています。
立花さんに本業と副業を両立するためのコツを聞くと、
「本業と副業の2つの業務を並行してこなすので、頭の切り替えが少し大変です。
それぞれの業務に極力影響を与えぬよう、時間で区切って『ここからはこちらの業務』というように明確な線引きをするようにしています」
と話していました。
そして、「本業でも副業でも、求められる期待値を超えるアウトプットを出すことで、成長や評価につなげていきたい」といいます。
限られた時間で最大限のパフォーマンスを出せるよう、自分を律して仕事を進めることができる人は、副業に向いています。
逆に、自分で業務の線引きができない人や、指示待ちになってしまいがちの人は、副業はあまり向いていないと言えるでしょう。
なお、収入増だけを狙った副業ではなく、キャリアアップのための副業をする場合、「プロの副業人材」として、「成果を出せるスキル」をきちんと身につけてからにしましょう。
まだ「成果を出せるスキル」がないのであれば、いまいる環境で「成果が出せるレベル」まで技を磨くか、育成余力のある会社でスキルを磨く努力をすべきだと思います。
副業は人生の「転ばぬ先の杖」になる
さまざまな副業を通じて成長し、キャリアアップをしていけば、本業で思うようなキャリアを歩めなくなったとしても、「いざというときに副業を本業に置き換える」こともできます。
副業は人生のセーフティネットとなるのです。
セーフティネットは1枚よりも2枚、3枚と、多いほうが安全です。
複数の副業先を確保しておく、つまり人生のセーフティネットを複数持つことで、キャリアが断絶するリスクを、より減らすことができます。
また「人生100年時代」においては、60歳以降に持続可能な仕事がどれだけあるかが、ビジネスパーソンの成功の指標になってくるとも思います。
人生という耐久レース、転ばぬ先の杖として、早めに副業に挑戦してみることをおすすめします。
複数の副業先を確保すると、「最高のセーフティネット」になる。複数の副業先を確保しておくことで、キャリアが断絶するリスクを、より減らすことができる(図『スタートアップ「転職×副業」術』より)
(藤岡 清高 : 「スタートアップ転職・副業のプロ」アマテラス代表取締役CEO)