神村学園を破り準決勝進出を決めた近江【写真:徳原隆元】

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近江は滋賀県勢としては野洲以来18大会ぶりの準決勝進出を決めた

 第102回全国高校サッカー選手権は1月4日、準々決勝で近江(滋賀)が神村学園(鹿児島)との点の奪い合いを制し4-3で勝利。

 滋賀県勢として野洲以来18大会ぶりとなる準決勝進出を決めた。

 近江は前半12分に鵜戸瑛士のゴールで先手を取るが、その後、立て続けに2点を失い前半だけで逆転を許してしまう。荒砂洋仁の負傷のため同22分から出場の近江・山本諒は、そんな前半について「慎重に入り過ぎたっていうのもあるんですけど、前線からのプレスも上手くはまらずに、相手にボールを握られて、という時間が長かったんで。自分達の得意な形っていうのを多く作り出せなかったのが、あんまり上手くいかなかった原因かなと思います」と振り返る。

 だからこそリードを許した後半は「リスクを冒して行くしかないと思うし、相手も神村だったので。打ち合いになるっていうのは予想できていたんですけど」と覚悟を決めていたという。

 またキャプテンの金山耀太は詳しい内容は控えますがとしつつ、ハーフタイムの監督から言葉が心に刺さったと言う。

「監督の言葉で、すごい心に刺さって、動いている部分は大きいかなと思います。すごい喝を入れられるんですが、ハーフタイムに」

 覚悟を決めて後半に入った近江は見違える試合を見せる。テクニックで神村学園を圧倒し、ボールを握り続けると、後半13分に山本のゴールで2-2に追い付いた。その2分後に失点し再び勝ち越されたが、同26分にも山本の連続ゴールで負けじと食らい付いた。

 頭で決めた2つのゴールシーンについて山本は「あんま覚えてないんですけど」と苦笑いしつつ「両方とも川上(隼輔のクロス)なんですが、練習から、そういうクロスボールとか入るところは意識していて。特にヘディングが得意なわけではないんですけど。最後、ゴール前で頭を出して、1個ゴールにつながったらいいなと思う気持ちで入りました」と笑顔を見せた。

 後半15分に神村学園・名和田我空の直接FKをGK山崎晃輝が弾ききれなかった失点シーンでも、チームメイトは意に介せず。逆にカバーしてやろうと奮起したという。

「ここまでこれたのもキーパー山崎(晃輝)のおかげというのもありますし、その分、自分達が中でしっかり結果を残して、仲間のミスもカバーしてやるっていうのは、この1年間でこのチームとしてやってきたことなんで、そこはできたかなと思います」(山本)

 そんな試合は後半アディショナルタイム3分に決勝点が生まれる。きっかけは左サイドを切り裂いた金山のドリブルだった。

「その前に何度かサイドバックと前向きに1対1したときに、縦に行った時にスピードでは負けないなというイメージがあったので。だいぶ距離がありましたけど、サイドバックと。そこでは、絶対勝てるなって思って仕掛けたっていう感じです」

 その言葉通り、サイドバックを置き去りにした金山からのクロスがゴール前に入り、混戦のこぼれ球を鵜戸瑛士が押し込んで4-3とし、近江が神村学園を押し切った。

 なお、滋賀県勢としては18大会ぶりの準決勝進出について山本は「自分たちの最初に立てた目標というのがベスト4だったんですけど、いざその国立っていう舞台に立つことができると、やっぱり頂点を取りに行くしかないと思うんで。今までやってきたことをすべてぶつけるだけかなと思います」と決意を口にしていた。

野洲の残像に影響を受けない近江イレブン

 近江はゲームの後半、神村学園を圧倒し後半だけで15本のシュートを放ち、神村学園に3本しかシュートを打たせず。テクニックを全面に押し出した戦いぶりは18大会前の野洲を彷彿とさせたが、山本は野洲について「ちらっとは分かるんですけど、特にそこは意識してなかったんで」と一言。金山は「自分は広島出身なんで、特には意識していないわけじゃないですけど、詳しくは分からないです」としつつ「ホント、自分たちがこれまでやってきたことを出すために、準備していきたいと思っています」と述べていた。

 当時、強烈なインパクトを残した野洲の残像に全く影響を受けていないのは18大会前なのだから当然だが、だからこそ、時間の経過を感じるやり取りだった。(江藤高志 / Takashi Eto)