広汽集団はEV向け電池の要素技術を独自開発し、大規模な自社生産に乗り出した(写真は広汽埃安の技術解説動画より)

中国の国有自動車大手の広州汽車集団(広汽集団)は2023年12月12日、グループ傘下の電池メーカー、因湃電池科技の工場が竣工し、生産を開始したと発表した。

因湃電池科技は2022年10月、広汽集団の子会社で独自ブランドのEV(電気自動車)やPHV(プラグインハイブリッド車)を生産・販売する広汽埃安(広汽アイオン)を中心に、グループ企業の共同出資で設立された。

今回竣工した工場で生産するのは、「弾匣電池(弾倉型バッテリー)」と呼ぶ独自開発のリン酸鉄系リチウムイオン電池だ。さらに、将来はナトリウムイオン電池や全固体電池などの生産も計画している。

2011年から独自技術を蓄積

弾匣電池は、車載電池パックの内部構造を工夫することで質量・体積当たりのエネルギー密度を高めている。具体的には、質量1キログラム当たり195Wh(ワット時)、体積1リットル当たり450Whを達成し、EVを700キロメートル以上走らせることができるという。

広汽集団がEVの要素技術の独自開発に乗り出したのは、10年以上前の2011年に遡る。まず傘下の研究開発子会社が、車載電池パックと電池制御システムの開発に着手。2017年に広汽埃安が発足すると、同社製のEVやPHVに搭載する電池パックの量産を開始した。

中国の自動車市場では2021年からEVシフトが加速し、広汽埃安はその波に乗って急成長を遂げた。同社の2020年の販売台数は6万台弱だったが、2021年には12万台、2022年には27万台を突破。それに伴い、広汽埃安が必要とする車載電池は大幅に増加している。

そこで広汽埃安は、車載電池のサプライチェーンにより深く関与し、自社が制御可能な領域を広げる戦略をとった。2021年11月、同社は3億3600万元(約68億円)を投じて電池セルの生産ラインを構築。電池セルから電池パックまで自社生産できる体制を整え、量産技術の習熟に努めた。


広汽埃安はリチウム大手の贛鋒鋰業と提携し、電池原材料の直接調達を実現した。写真は贛鋒鋰業が権益を持つアルゼンチンのリチウム塩湖(現地開発会社のウェブサイトより)

さらに2022年8月、広汽埃安は中国のリチウム最大手の贛鋒鋰業(ガンフォン・リチウム)と戦略提携を結び、電池の主要原材料の(電池メーカーや商社を経由しない)直接調達を実現した。

因湃電池科技は、こうした長期間の準備と蓄積をベースに設立された。今回竣工した工場の第1期プロジェクトの生産能力は年間6GWh(ギガワット時)。2024年から2025年にかけて生産能力を36GWhに拡大する計画で、総投資額は109億元(約2210億円)を見込む。

鉱山開発から電池リサイクルまで

広汽集団の開示情報によれば、広汽埃安などグループ傘下の完成車メーカーが2023年1月から11月の期間に販売したEVおよびPHVは合計51万台。因湃電池科技の年間供給能力は工場の拡張完了後でEV約60万台分とされ、すでに満杯に近づいている。

広汽埃安は、因湃電池科技を通じた車載電池の自社グループ向け供給にとどまらず、電池関連事業の幅をさらに広げる計画だ。


本記事は「財新」の提供記事です

「次の段階では(電池原材料の)鉱山開発、原材料の生産、蓄電システムの開発、充電ステーションや交換式電池のビジネス、電池リサイクルなどに投資していきたい」。広汽埃安の総経理(社長に相当)を務める古恵南氏は、そう意気込みを語った。

(財新記者:戚展寧)
※原文の配信は2023年12月13日

(財新 Biz&Tech)