身を隠す森喜朗が「今こそ安倍派が岸田さんを支える」発言…ドンは清廉潔白な派閥をどす黒く染めた
「安倍派」で6代目会長を務めた森喜朗元首相に注目が集まっている。12月20日の午11時から、東京・中央区の築地本願寺で、自民党と保利家の合同葬に出席した際は「車椅子を使っている様子をほかの議員に見られたくないのか、隠れるように焼香を済ませたようにも感じました」(SmartFLASH)。一体どんな人物なのか。
地元北國新聞で「今こそ、安倍派が岸田さんをしっかり支えないと」
これほどお金に執着をしながら、お金に執着してないと言い張ってきた政治家もいないのではないだろうか。森喜朗元首相のことである。
森元首相は、安倍派の実態上のドンとして君臨してきた。物議を呼んだ地元石川県の北國新聞の連載(11月26日)では、「今こそ、清和政策研究会(安倍派)が岸田さんをしっかり支えないといけない。岸田さんを総理に、という原点は安倍(晋三)さんの意向です。岸田さんもわが派に配慮してくれているじゃないですか。幹部の 『5人衆』は今もいいポストに収まっていますし、初入閣もちゃんと2人起用してくれた。それなのに、ピンチになったら急に手のひらを返すようなまねをしてはいけません。この苦難をともに乗り切る覚悟が必要です。それが安倍さんの遺志でもあると思いますよ」と指摘し、先の総裁選では、岸田首相の対立候補であった高市早苗氏のために奔走した安倍氏の遺志が、「岸田さんを総理に」だったと”高所大所”からの発言をしている。
メディアに対して登場する際は、森元首相は自分たちの派閥「清和政策研究会」こそが高廉潔癖なグループであることを披露してきた。
田中角栄から差し出された謎の金を拒否
<(初当選後)自民党本部に向かいました。幹事長室で初めて田中(角栄)幹事長に会いました。田中さんは幹事長室に入って来るなり、「いやまあ、おめでとう」と言って新聞紙に包んだ札束を出し、「まあ、少ないが取っとけ」と、私の前に差し出しました。私は党のカネも自分のカネも一緒くたに考えているように見えたので「どういう意味ですか。これは一体何ですか」と尋ねました。田中さんは「そんなことわかってるじゃないか。いろいろ選挙にカネがかかったんだろうが。君も大変だろ。これを使えばいい。足りなかったら、また来ればいい」と言われましたが、カネを受け取れば田中派と言われてしまうと考え、「そういうお金をいただく筋合いはありません」と断りました。田中さんは「生意気言うな。選挙をすればカネがいる。お前も借金だらけだろうが。それで使えと言ってるんじゃないか。何が不満なんだ」と顔を真っ赤にして怒り出しました。私も「大いに不満ですよ。幹事長からそう言われていただいてしまったら、二度と文句を言えなくなります。言うなら今日しかないんですから」と言い返し、険悪な雰囲気になりました>(読売新聞・7月28日)
女性の話が長いなどと、自分の周囲の些事について、ぶつくさと不平不満
<当時、福田派の若手だった森喜朗元首相の著書によると、森氏は車の中で福田氏に「田中派から相当なカネが流れたという話があります。こっちもドンと積んだらどうでしょうか」と進言した。すると、福田氏は「おい、車を止めろ。不愉快だ。君はここで車を降りろ。君は総理大臣の椅子をカネで買えと言うのか。有望な青年だと思って目をかけてきたが、そんな汚らわしいことを口にするなら出て行け」と「すごい剣幕(けんまく)」で激怒したという。森氏は「申し訳ありません。失礼しました」と謝罪。「危うく破門になるところだった」と振り返っている>(毎日新聞・12月21日)
田中角栄がカネをばら撒くだけばら撒いていたこと、そして福田赳夫が清廉潔白な人間だということはわかるのだが、森元首相についてはどうなのだろう。同じく首相を経験し、国会議員は引退をした小泉純一郎元首相がお金を集めに興味がなく、自分の主張は声高らかに時の政権に物申しているのに比較して、森元首相はお金を集めに奔走し、女性の話が長いなどと、自分の周囲の些事について、ぶつくさと不平不満というか偏見を述べてきた印象だ。
しんぶん赤旗(2017年1月30日)によれば、「2020年東京五輪・パラリンピック組織委員会の森喜朗会長が、政界引退後も、資金管理団体を保有し続けるなどして、多額の政治資金を集めていることがわかりました」「政治資金収支報告書によると、春風会(森氏の資金管理団体)は、引退後の13年に、「『私の履歴書』出版記念会」「忘年例会」などあわせて9576万円のパーティー券収入があります。これは、引退前の12年のパーティー券収入6994万円を大幅に上回るものです。14年にも5134万円、15年は5434万円と、5000万円を超すパーティー券収入を誇っています」という。
意見が分かれる「森評」…記憶力が異常にいい、知性のかけるもない軽口の数々
いったい、引退した国会議員がどうしてこんなに必死でお金集めをしないといけないのかは定かではないが、東京虎ノ門の立派なオフィスに構えるなど維持費がかかるということなのだろうか。
永田町を取材していると、森元首相の人物像は様々だ。記憶力が異常に良く、細かいことをよく覚えている。そのあたりが怖くて、みな尋常じゃない気を遣っているのだ、という「森評」をよく聞いた。また、『悪役』である森元首相を弾除けに使って、自分だけは難を逃れようとする人がいることもあるとも聞いた。実際に、世論が反発しそうな懸案事項でも森元首相なら、胃に介さずに進めることもできたのかもしれない。
しかし、そうした役割とは別に、2014年のソチ五輪ではフィギュアスケートの浅田真央さんが転倒したことを受け「あの子、大事なときには必ず転ぶんですよね」といった発言。東京オリンピック・パラリンピック組織委員会の会長として日本オリンピック委員会(JOC)評議員会で「女性がたくさん入っている理事会は時間がかかる」と発言したこと。ゴルフの最中にえひめ丸が米原子力潜水艦と衝突事故の一報を受けながらプレーを続けたことで批判が高まる中、「これがどうして危機管理なんですか。事故でしょ」と話したこと。公の場で発せられる、何一つの重みも、知性のかけらもない軽口の数々には閉口する。
なぜそれでも森もと首相はありがたがられるのか
たしかに、たとえばうわべだけの男女平等など意味はないと私も思うが、話が長いだのどうでもいいい話に矮小化されてしまうのか本当に残念だ。
日本社会の「ドン」としてまったく相応しくないし、国民との対話能力はゼロということだ。いくら首相経験があるとはいえ、なぜ、そんな人物がみなありがたがってしまうのかといえば、それは安倍晋三元首相と小泉純一郎元首相という2つの長期政権において、彼らの二人の首相のボスであり、盟友であったと言うことに尽きる。安倍元首相は、森内閣で内閣官房副長官へと抜擢されている。小泉政権での重用よりも前に、森元首相への恩義があった。
政治資金パーティーを巡る裏金疑惑で揺れている自民党最大派閥の清和政策研究会(安倍派)だが、命名者の福田赳夫氏の「まつりごと清ければ人おのずから和す」という思いとは別に、清くも正しくもない派閥であることが晒されてしまった。
20年以上、清和研に君臨してきた森元首相に責任の一端があることは言うまでもないことだ。