「投資で勝ち続けるのは天才か詐欺師、ほかは全員カモ」投資歴70年弱の87歳現役トレーダーが鍛え上げた負けない投資術

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 資産18億円の87歳現役デイトレーター、藤本茂氏。「成功するには『普通』を抜け出す必要がある」と話す藤本氏が、70年弱にわたる投資歴で培った「株式市場の真実の見極め方」を語る。 

※本稿は『87歳、現役トレーダー シゲルさんの教え 資産18億円を築いた「投資術」』(ダイアモンド社)から抜粋・再構成しています。 

「普通の人間の思考法」から抜け出せ 

 株は「上がったら売る、下がったら買う」、これに尽きます。この本質は何年たとうが変わりません。 

 でも、それができたら苦労はしないわけですよね。どうしても人間は株が上がったら買いたくなりますし、下がれば売りたくなってしまう、愚かな生き物なんです。株で失敗した多くの人が、下記のような経験をしています。 

高くなっている株を「まだ上がるはずだ!」と高値づかみしてしまう 少し上がったところで値下がりするのが怖くて売ってしまう 値下がりしているのに「きっと上がるはずだ」と根拠のない願望を抱いてしまう 「いまが買い場だ」と無計画にナンピン買いしてしまう 有名な投資家が推薦した株を何も考えずに買ってしまう 「なんとなく」「有名な企業だから」で株を買ってしまう 「安くなったら買おう」と思っていたが安くならず、買い逃してしまう

 これは「普通」の人間の思考です。投資家として成功するためには、この「普通」を抜け出さなくちゃいけません。 

 みんなと同じようなことをやっている限り、他人より成功することはできません。どこかで大きく失敗もします。そして、相場の世界から去ってしまうことにもなりかねません。 

 せっかく株をはじめたのに成功する前にやめていってしまうのは、かなりもったいないことだと思います。 

株価を動かすのは「材料」ではない 

 株価が動くのは、誰かが買ったり売ったりするからです。材料だけで株価が動くわけではありません。なので、本当に重要なのは「材料そのもの」ではなく、「その材料を受けて人々がどう反応(売買)するか」を考えることにあります。 

 材料についても、うかつに飛びついてはいけない材料もあります。つまり、“投資家心理を読む“必要があるのです。 

 投資家心理を読むためには、まずは敵を知らないと話になりません。ほかの投資家たちの心が読めたらいいですが、そんなことはできないので、チャートの値動きを見ながら相手が何を考えているかを想像する必要があるのです。 

 戦う相手は、投資銀行やヘッジファンドといった投資家から、大口の株主、ベテランの個人投資家、初心者に毛が生えたような人たちまでさまざまです。 

 将来成長が見込める株であっても、「いつでも買っていい」ということではありません。どんな株にも「買うべき時期」と「売るべき時期」があります。それらを見極めないといけないわけですから、厳しい世界ですよ。 

 こんな厳しい世界で勝ち続けられるのは、天才か詐欺師しかいないんじゃないかと日々思います。でも、そんな厳しい世界だからこそ、勝ったときは嬉しいんです。 

あなたは“いいカモ”になっている 

 ほかの投資家の心を読もうとすれば、こちらを惑わそうとする動きにダマされることも少なくなります。株をやっていると、株価が上がる(下がる)材料が何も出ていないのに、急に株価が動くこともあるのです。そんなときには注意が必要です。 

 売買のなかでは、約定する意思がないのに大量の注文を出すことを「見せ板」といいます。本来は禁止されているのですが、実際の取引では、「明らかに見せ板だろう」と思われる注文が結構あります。 

 これは、ほかの投資家に誤解を与えることを目的としたかなり“グレーな行為”です。もちろん、本当に売るつもりだったけれど、結果的に見せ板になってしまうケースもゼロとは言いませんが、意図的に高く売りつけてくる投資家は残念ながらいますし、今後もなくなることはないと考えていいでしょう。悪質な場合には違法な相場操縦として摘発される可能性もあります。 

 株の世界には、このように「株価を操作してやろう」と考える“ずる賢い人たち”が少なからずいるのです。 

 そして、個人投資家も「見せ板がある」と頭ではわかっていても、大量の買い注文や売り注文が板に表示されてしまうと、経験が少ない人ほど買ったり売ったりしたくなってしまうんです。 見せ板に踊らされてしまう人が多いことが、見せ板がなくならない理由です。 

 相手の動き方を読む。そして自分の頭で考える。この2つを意識しない限り、株式市場では“いいカモ”になってしまいます。 

 私は注目している銘柄のニュースが出たとき、「この材料は〇円上がる材料だ」などと自分なりに判断します。でも多くの人は、ニュースや板の動きだけを見て判断してしまっています。「この株は買いだ」という買いのあおりや「この株は売りだ」という売りのあおりをそのまま信じてしまうんですね。 

 そういう人は黒字や赤字の決算が出たときに、「もともとの予想より良い(悪い)から買いだ」とすぐに判断してしまう人でもあります。 

 やはり私のように自分の頭で考え、投資家心理を読むことが、株で勝つためには不可欠なのです。 

 そして急な下落・上昇にもうろたえず、目の前の相場に集中すること。最初からすべてできる人はいませんが、失敗から学び、成長していこうと思わなければ、絶対に負けっぱなしの投資人生を送ることになります。

『87歳、現役トレーダー シゲルさんの教え 資産18億円を築いた「投資術」』(ダイアモンド社)