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●自動車輸出額が過去最高に

 財務省が10月19日に発表した9月の貿易統計(速報)は、貿易収支が3カ月ぶりの黒字となった。特に自動車輸出は、1979年の統計開始以来過去最高となる9兆1981億円の輸出額を記録し、好調さが顕著となった。半導体不足の解消が背景にあると見られている。

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 コロナ禍以降、課題だった半導体不足が解消され、世界経済が上向きとなるのだろうか?

 その象徴的とも言える自動車輸出額が過去最高となり、自動車生産がお家芸である日本経済は浮上するのだろうか?

●トヨタの世界生産台数が過去最高

 7月に発表されたトヨタ自動車の2023年上半期(1〜6月)の世界生産台数は、過去最高となった。

 世界販売台数も前年同期比5%超の増であり、国内販売台数も前年同期比33%超の増となり、いずれも2年ぶりに前年実績を上回る結果となった。

 回復を印象付けるデータの影響により、トヨタの株価も9月20日に2912円で年初来高値を記録した。

 その後、10月に入ってからは約15%下落しており、投資家には織り込み済みだったようだ。

●一難去ってまた一難

 一時は納期不明という事態が起きるほど半導体不足は深刻だった。

 2023年上半期からは出荷が大幅に改善され、特に車載半導体は20%以上増となっており、自動車の半導体不足解消は、データからも裏付けされている。

 ただし、この2年間の半導体不足による自動車生産の受注残は、まだまだ残っていると見られており、このまま半導体の供給が順調に回復傾向を維持できるかが大きなカギとなる。

 自動車産業はEV(電気自動車)化、自動運転とこれから益々半導体の役割が重要となることは間違いない。

 一方でイスラエルとイスラム組織ハマスとの衝突は懸念材料だ。イスラエルには半導体の企業や施設が多くあり、戦闘が激化すると影響が出るのは必至である。

 半導体施設の労働者や幹部までも戦争に動員される可能性があり、人や物の輸送の制限などがかかることになると、供給がストップする可能性もある。

 自動車輸出額の過去最高更新は、受注残の解消が進んだとも言え、まだまだ先行きが明るいとは言い切れない。