箱根駅伝の予選突破を狙う立命館大3本柱が考える関東の大学勢との違い「勝負をかける走りが関西とはぜんぜん違う」
箱根駅伝の予選会に出場を決めた関西の強豪校・立命館大。決戦の日に向けて士気が高まりつつあるが、そのチームの中にあって軸となっているのが「3本柱」と言われる大森駿斗(3年)、中田千太郎(3年)、山崎皓太(3年)の3人だ。予選会突破に向けては、彼らの好走が不可欠になるが、3本柱は、どのような思いを持って箱根駅伝の予選会を走るのだろうか――。
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箱根駅伝予選会、地方からの挑戦
第2回・立命館大学 後編
前編を読む>>箱根駅伝予選会への出場は「チームのプラスにならないんじゃないか」 関西の雄・立命館大のコーチが明かす挑戦までの議論と経緯
立命館大学の3本柱、(左から)大森駿斗、山崎皓太、中田千太郎
★大森駿斗
――箱根駅伝の予選会に出場しますが、大森選手は箱根に興味はあったのですか。
「個人的には箱根にそこまで興味がなくて‥‥やっぱり距離が長いのが苦手ですし、自分は出雲駅伝や全日本大学駅伝を目標として関西の大学に進学したので、箱根に出たいという気持ちがあったらたぶん関東に行っていたと思うんです。でも、チームとして出るということになり、そこで大きな目標が一つ増えるのはチームが強くなるためには必要なことだと思ったので、今は前向きにとらえて長い距離も練習しています」
――箱根の予選会を走るために、意識したことは。
「予選会はハーフを走るんですけど、全日本の長いところで18キロから20キロぐらいなので、ハーフという距離に慣れていないんです。そのため以前は10キロだった普段のジョグを14キロから16キロぐらい走って、長い距離に慣れる努力をしてきました。ただ、距離を増やすとケガをしやすいので、大きくは増やせないんですけど、以前は月500キロ前後のところを今は600キロ前後まで増やして走っています」
――長い距離は、少しは慣れましたか。
「今も苦手ですね(苦笑)。10キロを超えてくると足が動かなくなってくるというか、バネを使えなくなって走りが崩れてしまって結果的に苦しくなるんです。とにかく、早いペースで長い距離を走ることに慣れていないので不安ですし、苦手です」
長い距離は苦手だが、5000mは13分52秒05で部内トップ、ハーフのタイムもトップだ。3本柱の中でもエース格で、走りでチームを引っ張っている。小5から陸上を始め、中学は陸上部に入り、智辯学園奈良カレッジ高で高2時は、1500mでインターハイに出場、都大路(全国高校駅伝)も1、2年は1区、3年は2区2位だった。「ずっと陸上しかしていないんです」と苦笑するが、高校同期の中田は「普段と走りの時は別人」と語る、そんなエースが関東に戦いを挑むことになる。
――全日本大学駅伝で走った際、関東の選手との関西の選手の違いを感じたりしましたか。
「関東の大学は、箱根を考えて距離を多く踏んでいるので、出雲や全日本の短い距離ですと後半の余裕度が全然違いますね。ハーフマラソンも関東の選手のほうが早いので、相当練習していかないと本番で勝負するのはきついなって思いました」
――関東勢に勝つために果たすべき自分の役割は?
「ハーフのタイムは僕が一番なので、チームで一番早いタイムでゴールして、少しでも関東(の大学)との差を詰めたいですね。自分の状態が良ければハイペースでいって後半粘る展開でもいいですが、今の状態でいくとスローな展開でラスト勝負が嬉しいです。今のチームの実力を考えると予選会はかなり難しいものになると思いますが、つづく全日本では8位入賞、丹後駅伝は優勝して関西のトップを奪還したいと思います」
Profile
大森駿斗(おおもりしゅんと)
2002年、京都府出身 北城陽中―智辯学園奈良カレッジー立命館大
5000m:13分52秒50 1000m:29分04秒91 ハーフ:63分53秒
★中田千太郎
――予選会に向けてハードな練習をこなしてきたと思いますが、中田選手は箱根駅伝に興味があったのでしょうか。
「予選会の話が出るまでは、あまり箱根には興味がなかったです。関西なので、出雲駅伝や全日本大学駅伝、丹後駅伝で良い結果を出したいと思っていました。箱根は関西には通常ないというのもありますが、ハーフ以上を走ることになります。自分は、全日本だと最長が20キロぐらいですし、スピードで勝負できることを考えると、そっちのほうが戦えると思っていたんです。でも、予選会に出場できるということを聞いて関西の大学でも箱根の予選会を走れるのは特別ですし、これを逃がしたら2度と経験することができないので、走りたいと思うようになりました」
――同期の大森選手は、予選会出場に反対でしたが。
「大森は、口では嫌だと言っているんですけど、走るとなるとしっかりと結果を出してくれます。予選突破を考えると大森の走りがすごく大事になってくると思いますので、僕は彼のことを信じています。ただ、この夏は体調を崩していたので、大丈夫かなと思いつつ、今は大森を倒すチャンスだと思って練習しています(笑)」
大森と中田は智辯学園奈良カレッジ高校陸上部出身で、高校時代は大森がキャプテンで中田が副キャプテンだった。口下手な大森を中田がフォローし、練習ではキャプテンがしっかり引っ張るなど、うまく役割分担ができていたという。大学でも大森が引っ張る図式は変わらないが、中田と山崎皓太は下級生の面倒を見てきた。夏合宿を経て、下級生を含めて距離にも自信を持てるようになり、予選会に向けては「ワクワクした気持ち」でいるという。
――予選会に向けては、相当の練習をこなしてきましたか。
「前年度と比べて月間で600キロを超えるなど距離が増えましたし、スピード練習の強度もだいぶ高くなってきた中、ケガすることなく、すべての練習をクリアすることができました。それが自信になりましたし、走れる実力もついてきたのかなと思います」
――関東の学生と戦うわけですが、学生ハーフなどで戦った印象は。
「勝負をかける走りが関西とはぜんぜん違いますね。例えば5000mを走る際、関西の選手はけっこうイーブンでいく感じの走りが多いんですけど、関東の選手はペースが上下して、最終的にはいいタイムで終わっているんです。そのくらいの実力というか、余裕度があるのを感じたので、合宿などで長い距離を踏みつつ、ペース変動に対応してリズムを崩さないようにというのを意識して、ずっと練習をしてきました」
――予選会は、どんな走りを見せてくれますか。
「15キロ過ぎ、(昭和記念)公園内に入って狭いアップダウンを行くんですが、自分はアップ&ダウンが苦手で(苦笑)。でも、下りは好きなので上りのリカバリーをしつつ、ペースを上げていきたいですね。そうして、最後まで先頭集団からこぼれないように、一定のリズムで走り切れたら結果がついてくると思います」
Profile
中田千太郎(なかたせんたろう)
2002年、奈良県出身 桜井中―智辯学園奈良カレッジー立命館大
5000m:14分19秒24 10000m:29分42秒02 ハーフ:65分18秒
★山粼皓太
――箱根駅伝の予選会について、山粼選手はどうとらえていたのですか。
「自分は、最初から出たいとミーティングでずっと言っていました。箱根は毎年、テレビで見ていましたし、長距離ランナーにとって憧れの舞台です。今回は自分にとって一生に一度のチャンスになりますし、その機会を逃すのはもったいない。部内では、日程的に厳しいとか、通るか否かの可能性を考えると挑戦しないほうがいいという意見もあったんですけど、自分は挑戦すること自体に意味があると思いますし、挑戦するだけの価値のある大会だと思っていたので、出場したいと言い続けていました」
――母校の洛南高校から多くの選手が関東に行っていますが、関東を目指す意識はあったのですか。
「3年の時、都大路で3位になったのですが自分は走れなくて‥‥。3年間で一度でも走っていれば関東の大学に進学も可能だったと思うんですが、結局、関東は諦めて、出雲、全日本に出て、活躍し、成長していければいいかなと思って立命館を選びました」
――高校の卒業生は箱根でも活躍していますが、刺激を受けていますか。
「三浦(龍司・順大)さんは、東京五輪や世陸にも出場し、憧れの存在ですが高校時代、一緒に練習をしてきて、どんなことをしてきたのかがわかるので、自分も三浦さんを目指して、追いつくぐらいの気持ちで頑張っていきたいですね。1年の時は同期の若林(宏樹・青学大)が箱根駅伝の優勝メンバーとして走っていたので、高校時代に勝てなかった同期たちと箱根の舞台で走れたらと思っています」
中1から陸上を始め、中3では3000mで全中に出場。その後、京都の名門・洛南高校に入学、若林を始め、服部壮馬(順大)、佐藤圭汰(駒澤大)、溜池一太(中大)ら錚々たるメンバーの中でもまれ、立命館大に入学した。チームでは10000mで28分54秒とトップのタイムを持ち、今回の予選会でも田中裕介コーチの期待は大きい。春から箱根予選会の長い距離に対応すべく基礎的なトレーニングをしつつ、距離を踏んだ。7、8月は月間で700キロを超え、距離とスピードを両立してきた。
――かなり距離を踏んだようですが、関東の大学から走行距離が耳に入ってきたりしますか。
「青学大とか、早稲田大とかの選手に聞くと、月間1000キロとか走ったりしているようですが、自分はそこまでは走れなくて......。いきなり増やすとケガのリスクもあるので、そこは来年以降やっていきたいですね」
――予選会では3本柱への期待が大きいですが、他の二人は自分にとってどんな存在ですか。
「入学時から5000mのタイムを含め、実力的にも同じなので、ライバル関係ですが切磋琢磨していい練習ができているので、本当に掛けがえのない存在です。一人が欠けても自分はここまで成長することができなかったと思えるような仲間ですね」
――予選会では、どういう走りをしたいですか。
「挑戦するからには、積極的に日本人のトップ集団についていきたいです。無理なら無理でもいいので、とにかくできるところまで喰らいついていきたいです。少しでもチームに貢献して、予選突破したい。箱根駅伝を走れれば、その後の世界が変わると思いますので」
Profile
山粼皓太(やまさきこうた)
2003年、京都府出身 北宇治中―洛南高校―立命館大
5000m:14分11秒97 10000m:28分54秒55 ハーフ:65分08秒