最終ラインから味方を鼓舞するキム・ミンテ。今夏、鹿島からレンタルで加入し、すでに欠かせない存在に。写真:梅月智史(サッカーダイジェスト写真部)

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 リーグ戦残り8試合で18位と、今季唯一の降格圏に沈む湘南ベルマーレ。J1残留を争う柏レイソルと横浜FCが、ともに昨季王者の横浜F・マリノスを下して勢いに乗る一方で、停滞する雰囲気を払拭しきれずにいる。

 そんななかで、日々のトレーニングからチームを鼓舞する男がいる。今夏に鹿島アントラーズから期限付き移籍で加入したキム・ミンテだ。

 練習の合間に仲間と密にコミュニケーションを取り、自らの経験を伝える。最終ラインに強さと高さ、ビルドアップの精度を加える試合でのハイパフォーマンスはもとより、日頃から見せる献身的な姿勢もチームに好影響を与えていると言えるだろう。

 経験を伝える役割について、キム・ミンテ自身も重要性を感じているようだ。

「監督たちもチームとしてやらなければいけない守備の形を整理したいと思っているはずですし、そこは後ろから僕が伝えようとしています。個人的には、もっと常に相手を見ながらサッカーができると良いと感じています。もう少しボールを握って、相手の逆を取りたい。相手が下がるなら前に出るし、前から来るなら裏を狙う。難しいことですが、僕が考えていることをみんなで共有したい。そこが上手くいけば、もっと点を取れて、守備の時間も減ると思います」
 
 キム・ミンテは韓国の光云大を卒業後、ベガルタ仙台に加入。その後、北海道コンサドーレ札幌、名古屋グランパス、鹿島を経て、湘南でプロ5クラブ目だ。出番を得られない時期もあった仙台時代や、“ミシャ”(ペトロヴィッチ監督)の下で成長した札幌時代、夏加入でルヴァンカップ制覇に貢献した名古屋時代に、圧倒的な“勝ち”への執着を感じた鹿島時代。積んできた経験のなかで、勝利が欲しい現状で最もチームに伝えたいのは鹿島での学びだという。

「内容が良くなっているのはポジティブに捉えていますが、強いチームと勝てていないチームの差は、内容が良くなくても勝てるか、内容が良いのに勝てないか、だと思います。鹿島のように、あまり良い状況でなくてもゴール前でしっかりと守って、セットプレーで1点取るような試合でも、勝ちは勝ちです。その差は自分たちで埋めていかなければいけませんし、日頃の練習から積み重ねていきたい。鹿島で学んだことをチームに伝えたいです」

 経験を伝えるという意味では、次節の第27節・札幌戦までの2週間のブレークがチームにとって重要な期間となりそうだ。キム・ミンテもこう語っている。

「僕が最初に来た時もキャンプをしたあとに広島に勝ちましたし、そこから内容的には良い試合に続いています。また2週間空いて、チームで戦い方を見直す時間ができたのは良かったです」

 代表ウィーク明けの札幌戦から、再びJ1残留を目指す戦いが始まる。現状、残留圏内との勝点差は4。上との距離を縮め、上回り、ひとつでも高い順位でシーズンを終えるためには何が必要なのか。キム・ミンテは次のように考えている。

「上のクラブが勝点を積んで、大変な状況になっています。でも、問題はないかなと。ひとつ連勝できれば追い越せる可能性もありますし、最終的に勝点35〜36くらいを重ねられれば残留できるはずです。最初に湘南に来た時は2試合に1回、勝てるようにしたいと思っていましたが、そう上手くはいかない。今年、湘南は連勝していないので、残り8試合で絶対に連勝を達成して、残留したいです。そのために、こだわってやっていきます」

 力強い言葉で覚悟を口にしたキム・ミンテ。最終ラインに君臨する47番は、プレー面、精神面ともに重要な役割を果たし、チームを残留に導けるか。

取材・文●岩澤凪冴(サッカーダイジェスト編集部)

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