自らを「飽き性」と認める金崎。独特の価値観でサッカーと向き合い、チャレンジし続けてきた。写真提供:FC琉球

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 2016年のJリーグチャンピオンシップで、鹿島アントラーズの金崎夢生は、川崎フロンターレや浦和レッズを粉砕するゴールを次々と奪い、J1タイトルを力強く引き寄せ、同年末のクラブワールドカップ参戦を果たした。

 同時期にはヴァイッド・ハリルホジッチ監督率いる日本代表にも選ばれ、滝川二高の先輩・岡崎慎司と2トップを形成したこともあった。

 2017年末のE-1選手権に参戦していた時点では、「2018年ロシア・ワールドカップ行きのチャンスもある」と目されるほど、彼は日本屈指の点取り屋として名を馳せていたのだ。

 その金崎が2018年7月にいきなり鹿島からサガン鳥栖への完全移籍に踏み切った際には、衝撃を受けたファンや関係者も多かったはずだ。

 鳥栖ではフェルナンド・トーレスと短期間、共闘するなど貴重な経験もできたが、わずか1年半でチームを離れることになる。

 2020年春には古巣・名古屋グランパスへ移籍。さらにその名古屋も1年半しか在籍せず、22年8月にはもう1つの古巣・大分トリニータに赴いたのである。

「プロキャリア最初のクラブに戻って、彼は恩返ししていくのだろう」と考えた人も多かっただろうが、今年頭のFC琉球移籍で、またも大きなサプライズを与えてくれた。
 
 金崎は笑顔を浮かべながら、独特の価値観を説明する。

「普通の人は『強いチームでタイトルを取り続けることが幸せ』と考えるんでしょう。僕自身もそれはそれで素晴らしいことだと思います。

 だけど、自分の場合は鹿島で1つ区切りがついた。別の言い方をすると『1回経験したらもういいかな』と感じたんです。

 もちろん、どこへ行っても上を目ざすし、タイトルも狙うけど、頂点への上り方は一緒じゃなくていい。自分は違うことをやりたいなって思うタイプ。それだけ飽き性なんですよ(苦笑)。

 鹿島の後、鳥栖、名古屋、大分、琉球と渡り歩きましたけど、どこへ行く時も『面白そう』と思ったから新たな環境を選んだ。『次はそこでやってみよう』って軽い感じで決めてきましたね」

 確かに鹿島の前に目を向けても、金崎は名古屋からドイツ・ブンデスリーガのニュルンベルクを経て、ポルトガルのポルティモネンセへ移籍している。

 今でこそ、中島翔哉や権田修一、中村航輔らが在籍したクラブとして認知度を高めているポルティモネンセだが、金崎がプレーした2013-14、14-15、15-16シーズンの同クラブは、ポルトガル2部。欧州5大リーグからわざわざそこに行くというのは意外な選択と言うしかない。

 けれども、好奇心旺盛な金崎は「これ、面白そう」と感じたら迷わず突き進んでしまう。結果的にポルティモネンセでゴールという結果を残したことで、鹿島行きの道が開かれたし、風光明媚な港町ポルティモネンセでの生活面もエンジョイできたわけだが、彼は何が起こるか分からないほうがワクワクするのだ。何事もリスクを冒してチャレンジしたほうが納得できる。それが金崎夢生という人間なのである。

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「人生って波があって当然だし、上手くいかないことも多いかもしれないけど、何事もやってみないと分からない。僕はやっぱり『変わりたい派』なんですよね(苦笑)。

 小さい頃からサッカーをやってきて、プロになって17年が経ったんで、よくいろんな人に『ずっと同じことを続けていて凄いよね』と言われます。でも、僕の中ではやっている環境も違えば、チームメイトも目ざす方向性も全部変わるので、だからこそ飽きずにやれているんだと思うんです。

 飽き性の自分がこれだけできるっていうのは、それだけサッカーが面白いってことだろうし、自分なりに変化し続けていられることが楽しいんですよね。

 今の琉球でボランチにトライする時も、『鹿島であれだけ最前線で点を取っていた』っていうイメージが強くて、そういう見られ方をすることの壁があるなとは感じましたけど、僕はあの時の自分じゃない。今いるメンバーの中で勝とうと思うなら、この役割がベストだと考えたから、ごく普通にトライしているんです」

 そう語る金崎は、彼なりのこだわりを持ちながら、新しいスタイル、新しい自分を追い求め続ける。生粋のチャレンジャーも来年2月には35歳になる。同世代を見回すと、内田篤人、安田理大のように現役に区切りをつけた選手も少なくないが、金崎はまだまだピッチに立ち続け、戦い続ける構えだ。
 
「何年か前、親父から『40までやれ』と言われた時に『分かった』と返事をしちゃったので、それは守らないといけないなと思っています(笑)。

 40歳という年齢までどこでプレーしているかもまったく分かんないけど、今はとにかく琉球の順位を1つでも上げることがすべて。前にも話した通り、来年につながるような内容や基盤を作っていかないといけない。今、やってることが今年で終わらないようにすることがすごく大事なんです。

 いつか琉球が上のカテゴリーに上がった時、しっかり戦えるようなベース作りに自分が関われればいいし、貢献できるように、ここからも一生懸命やっていきます」

 こう話すベテランには、もうひと花もふた花も咲かせてほしいところ。FW、サイドアタッカー、トップ下、ボランチと、どこをやっても高いレベルのパフォーマンスを示してきた金崎が、琉球で再び強烈なインパクトを残す日が早く訪れることを心から祈りたいものである。

※このシリーズ了(全3回)

取材・文●元川悦子(フリーライター)