プライベートやビジネスシーンなど、さまざまな場面で「辻褄が合わない」と思う経験をしたことがある人は少なくないでしょう。そもそも「辻褄」にはどのような意味や由来があるのでしょうか。

本記事では「辻褄が合わない」の詳しい意味やビジネスシーンでの使い方と例文を紹介します。語源や、類語に対義語、英語表現もまとめました。

慣用句「辻褄が合わない」の意味や使い方と例文、類語に英語表現まで紹介します

「辻褄が合わない」の意味とは

「辻褄(つじつま)が合わない」とは、言動について前後に一貫性が見られないこと、矛盾していることです。

例えば刑事ドラマでは、犯人が罪を隠すためにうそのアリバイを供述する姿がよく見られます。うそを重ねるうちに話の内容が矛盾してしまうことや、不自然な部分が現れることは、まさしく「辻褄が合わない」状況です。

ドラマに限らず、よくうそをつく人や子どもの話にも「辻褄が合わない」場面はよく見られます。

「辻褄」の語源・由来

そもそも「辻褄」という言葉は、見慣れない言葉です。

「辻褄」は「物事の道理」を意味し、「辻」も「褄」も裁縫用語です。

「辻」は縫い目が十字に合う部分、「褄」は着物の左右が合う部分を指します。どちらも「合う部分」を意味するため、「辻褄が合う」や「辻褄を合わせる」のように慣用句として使われるようになりました。

「辻褄が合わない」のビジネスシーンでの正しい使い方・例文



「辻褄が合わない」状況は、日常生活でもビジネスシーンでも起こりますが、ビジネスシーンで「辻褄が合わない」を使用しても問題はないのでしょうか。

ここでは、「辻褄が合わない」のビジネスシーンでの正しい使い方・例文を紹介します。

○「辻褄が合わない」の例文

「辻褄が合わない」を、ビジネスシーンで使用することに問題はありません。ビジネスシーンで起こった「矛盾している」と感じた点に使用するといいでしょう。

Aから聞いた話と、取引先から聞いた話では、辻褄が合わない。

なぜ辻褄が合わないのか、原因を調べておく必要がある。

○「辻褄が合う」「辻褄を合わせる」という使い方も

「辻褄が合わない」は矛盾していること、道理が合っていないことを意味しますが、「辻褄が合う」「辻褄を合わせる」という形で、矛盾がない、矛盾をなくすという意味で使用することもできます。

その説明であれば、辻褄が合うね。

不自然な発言をしないよう、お互いに辻褄を合わせておこう。

「辻褄」の意味さえ理解できていれば、スムーズに使い分けられるのではないでしょうか。

「辻褄が合わない」の類語・言い換え表現



「辻褄が合わない」を違う言葉で表現したい場合に、類語を覚えておくと便利です。複数覚えておき、言葉のレパートリーを増やしましょう。

○一貫性がない・一貫性に欠ける

「辻褄が合わない」と同じ意味を持つ言葉として「一貫性がない」「一貫性に欠ける」が挙げられます。

「一貫性」とは、最初から最後まで方針・考えを変えることなく、やり通すことを意味します。例文は以下の通りです。

一貫性のない発言は避けるべきだ。

彼の行動には一貫性がなく、予想ができない。

彼の経歴は一貫性に欠けている。

一貫性がない人は、発言や行動・態度がコロコロと変わりやすい特徴があります。その時の気分で発言や行動を変えるため、周囲の人間が振り回されることも多いでしょう。

○整合性がない・整合性に欠ける

「整合性がない」「整合性に欠ける」の「整合性」とは、矛盾がなく整っていることを意味します。

元々は論理学の言葉であり、堅いイメージが強い言葉であるため、プライベートなシーンで使用することは少ないでしょう。

「整合性がない」は否定表現であり、矛盾がある、整っていないことを意味しています。

彼の発言には整合性がない。

整合性のないプレゼンは見ていられない。

「整合性がとれない」「整合性に欠く」などの表現も可能です。

○筋が通らない・筋を通さない

「筋が通らない」の「筋」には、物事の道理、首尾を一貫させること、しかるべき手段を踏むこと、といった意味があります。

「筋が通らない」は「筋を通す」の否定形になるため、首尾が一貫されていないこと、しかるべき手段を踏まないことを意味します。

誰かに迷惑を掛けた際に相手に謝罪することは、大人であれば当たり前の行動です。しかし、一向に謝罪する気配のないような人物を目にすると「あの人は筋が通っていない」と感じるでしょう。

また、「筋を通さない」という表現をすることもあります。

失敗したことを謝罪しなければ、筋が通らないだろう。

課長は筋が通らないことを嫌っている。

彼は薄情者で、物事の筋を通さないので嫌われている

○とんちんかん

「とんちんかん」とは、見当違いであることや、会話がかみ合わず、ちぐはぐな言動をする人を指す言葉です。

間が抜けている、話が理解できていないことを伝える言葉でもあり、侮辱するニュアンスも含まれるので、人に対して使用する際は注意が必要です。

とんちんかんなことを言わないように、あらかじめ情報を整理しておこう。

部下の話はとんちんかんすぎて、理解できない。

彼を問い詰めても、とんちんかんな答えが返ってくるだけだ。

なお、漢字では「頓珍漢」と書きます。これは当て字であり、元々は鍛冶屋さんの相槌の音から来ています。

「辻褄が合わない」の対義語



「辻褄が合わない」の対義語は「辻褄が合う」です。

また「辻褄が合わない」の類語にあった「一貫性がない」「整合性がない」「筋が通らない・筋を通さない」を、それぞれ肯定の形である「一貫性がある」「整合性がある」「筋が通る・筋を通す」にすることで、対義語として使用できます。

Aさんの補足を聞いて、やっと辻褄が合った。

彼の発言には一貫性があり、信用できる。

このプレゼン資料には整合性がある。

Aさんほど物事の筋を通す人は見たことがない。

「辻褄が合わない」の英語表現



ビジネスシーンでは、英語での表現が求められることがあります。そのような場面で「辻褄が合わない」ことを伝えたい場合、どのような表現が用いられるのでしょうか。

同じニュアンスでよく使用されるものとしては、「It doesn't add up」があります。直訳すると「計算が合わない」ですが、「辻褄が合わない」として、使用して問題はありません。

また、「矛盾」の英訳としてよく使われる「contradiction」も「辻褄が合わない」と同じ意味を表すことができます。「There was a contradiction in his words.(彼の話には矛盾があった/彼の話は辻褄が合わなかった)」のような形で使用します。

○うそをついたり言い訳をしたりして、辻褄が合わない状態に陥らないように

「辻褄が合わない」とは矛盾していること、話の前後に一貫性がないことを意味しています。堅い印象もあるため、ビジネスシーンでもよく使用されます。

辻褄が合わない状況を自ら生み出すことは、周りからの信頼を損なう原因になりかねません。うそや言い訳を重ね、「辻褄が合わない」状況を作り出してしまうことのないよう、日頃から発言や行動には気を付けましょう。