(左から)Gate Win 杉田篤代表取締役社長、ABG ジェイミー・ソルターCEO、ABG ヴァイスプレジデントのケヴィン・ソルター氏

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「ブルックス ブラザーズ(Brooks Brothers)」や「バーニーズ ニューヨーク(BARNEYS NEW YORK)」などのブランド取得に力を入れている米ブランド管理会社のオーセンティック・ブランズ・グループ(Authentic Brands Group、以下ABG)の創業者ジェイミー・ソルター(Jamie Salter)CEOが来日した。アダストリア本社で行われたメディアミーティングでは日本市場への印象や、今後のビジネスの展望などについて語った。

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 ABGは2010年に設立。マリリン・モンロー(Marilyn Monroe)やマイケル・ジャクソン(Michael Jackson)、デビッド・ベッカム(David Beckham)、エルヴィス・プレスリー(Elvis Presley)など著名人の名を活用したブランドビジネスに加えて、近年はブルックス ブラザーズやバーニーズ ニューヨークのほか、「フォーエバー 21(FOREVER 21)」「リーボック(Reebok)」「テッドベーカー(TED BAKER)」といったグローバルブランドを次々に傘下に収めている。今年4月には「クイックシルバー(Quiksilver)」「ロキシー(ROXY)」「DCシューズ(DC SHOES)」などを展開するボードライダーズ(Boardriders, Inc.)の買収を発表。所有ブランドは50ブランドを超えている。

 同社のビジネスの特長は、店舗のオペレーションはすべて外部のパートナーに委託し、商標権などの使用料で収益化している点にある。収益のうち、ライフスタイル領域は75%で、残りの15%はエンターテインメントなどが占める。展開地域は約150ヶ国、全世界のパートナー企業は1400社を超える。全世界における小売売上高は290億ドルを計上する。

 ジェイミー氏が来日したのは5年ぶり。コロナ禍もあって久しぶりに日本を訪れた同氏は、日本の印象について「とても綺麗で、全てが整然としている。以前より確実にクリエイティブでオープンマインドになった」とコメント。一方で、取材陣でスーツを着た人が1人のみだったことから「5年前であれば全員がスーツだったと思う」とファッションのカジュアル化にも触れた。

 日本ではアダストリアをはじめ、伊藤忠商事や水甚、ロコンド、グローブライドなど24社とパートナーシップを締結し、事業を展開している。ジェイミーCEOは「日本のファッションの質が良い。日本、韓国、中国の3ヶ国が、アジア太平洋の原動力になっている。ファッションやフットウェア、アクセサリーを扱う我々の業界では、日本はフォロワーではなくリーダーだと考えている」と評価した。

 アダストリアと手を組んでいるフォーエバー 21では、今年2月のポップアップストア出店を経て、4月に大阪のららぽーと門真に再上陸後1号店をオープン。アダストリア傘下のGate Winの杉田篤代表取締役社長によると、実店舗は予算比で150〜160%で推移しており、手応えを感じているという。顧客層は本国のアメリカと同様に20〜30代が中心だ。一方でECの売上高は同50〜60%と課題が残る。杉田社長はインスタグラムでのライブ配信や、リアル店舗からECに送客する施策などを通じて、検証を重ねながら予算を達成していく考えを示した。

 ABGは日本で今後3〜5年をかけて、現在の5倍にあたる売上高およそ30億ドルの規模を目指す。直近の4ヶ月で33%増収し、パートナー企業数は昨年の12社から2倍に拡大。「2年間以内で2倍にできることは間違いない」とジェイミー氏は語るが、現在の日本の売上高は全体に対して10%に到達していない状況だという。ジェイミーCEOは日本のマーケットにおいて、カルチャーへの理解や対応スピードを課題に挙げる。「もしニューヨークに住んでいたら、ここでどのようなカルチャーがあるかは見えないが、ソーシャルメディアでは1分も遅れることができない」「今はグローバルに考え、ローカルに動くことを優先していく」(ジェイミー氏)。スピード感を上げていくため、年内に日本法人を立ち上げ、まずは25人を採用する方針だ。

 将来的には「ルイ・ヴィトン(LOUIS VUITTON)」や「ディオール(DIOR)」を擁するLVMH モエ ヘネシー・ルイ ヴィトンがシェアを占めるラグジュアリービジネスに対し、ABGは得意とするマーケティングのノウハウを活かし、中間層マーケットを席巻したい考え。アメリカ、ヨーロッパのほか、日本や韓国、中国、オーストラリアに続いて、タイをはじめとする東南アジアへの本格進出にも関心を示している。ブランドの買収に関してはアジア、ヨーロッパ、北アメリカ地域で均等に進めていく計画だ。

 なお、今年4月に発表したボードライダーズの買収では、「1年後にトレンドがやってくる」とジェイミーCEOは予想する。「自分たちの所有しているブランドの売上がスケートシューズやボードショーツ、Tシャツ、スウェットシャツなどに傾きかけていたため、我々は確信することができた。トレンドは1960年代、70年代、80年代、90年代の流れを繰り返すが、現在は60年代のフェーズにいる。60年代のものを、素材などを少し変えるだけでいい。ボードライダーズやサーフ、スケート、スノーのルックやビジネスはこれから急騰するだろう」。