せいろなどを使って蒸す調理法は、うまみが凝縮され、素材の味が引き立つのが魅力です。そんな蒸し料理の代表的なレシピ本『ウー・ウェンの蒸しおかず』(扶桑社刊)の著者である料理家のウー・ウェンさん。長く愛され続けるレシピの魅力を伺いました。

蒸し料理が長く愛される魅力とは?

――13年前に出版した『ウー・ウェンの蒸しおかず』(扶桑社刊)は現在も重版を重ねるほどのロングセラーです。改めて、「蒸す」という調理法の魅力を教えていただけますか?

ウー・ウェンさん(以下ウー):この本が多くの方に長い間支持されている理由は、「蒸す」という調理法が本当にシンプルで失敗がない、だからこそ長く続けられるということだと思います。「煮る」「ゆでる」「焼く」「炒める」といったいろいろな調理法がある中で、蒸し物は「道具さえあれば、失敗がない」というところがいちばんの魅力ではないでしょうか。素材によって蒸す時間の調節や下ごしらえは必要ですが、基本的に蒸し器やせいろに入れてしまえばよいので、これほど簡単な調理法はないと思います。水分さえあれば、焦げる心配もないですしね。

――調理の簡単さも人気の理由ですね。蒸すとやっぱりおいしさも違うのでしょうか?

ウー:蒸しおかずは、蒸気に包まれるだけで完結するので、素材にかかるストレスが最小限なんです。水や油の力を借りずに、素材自身がその味わいを引き出すから、うま味も香りもぎゅっと凝縮されて、それはそれはおいしくなります。余計なものが加わらないので、蒸したものは保存もきくんですよ。野菜などを多めに蒸しておけば、翌日は少し手を加えるだけで簡単に一品仕上がります。

●蒸し料理にぴったりの素材って?

――おいしさも手軽さもかなえてくれるなんて、蒸し物は最強ですね。ところで、蒸すときに一番大事なことはなんですか?

ウー:鍋に湯をたっぷり沸かして蒸気をしっかり出すこと。蒸し物は蒸気で加熱するんですから、水分がないとはじまりません。これは基本中の基本で、すべての蒸しおかずに共通しています。蒸気が上がっていて、その状態を保ちながら蒸せば、途中で火加減を調整する必要はありません。あとは、素材によってそれぞれの蒸し時間は守ってくださいね。

でも、じつは蒸す時間と同じくらい大事なのが、蒸した後の落ち着かせる時間。蒸し上がったらふたをとらず、そのまま蒸し器やせいろの中で少しおいてから取り出してください。肉でも野菜でも、こうして落ち着かせることではじめて、素材本来のおいしさが生まれるんです。

――落ち着かせる時間が大事とは、目からウロコでした。では、これから「蒸し物をはじめたい!」という人におすすめを教えてください。

ウー:まずは、野菜ですね。ニンジンだってタマネギだって、信じられないくらい甘くなるんですから! ジャガイモやカボチャはホクホク、本当にびっくりしますよ。あとは、お肉を蒸すのもおすすめです。お肉の場合は、あらかじめ塩をもみ込んで中まで味を染み込ませてから蒸した方がおいしいですね。わが家でよく蒸すのは、鶏胸肉や鶏ササミ、豚肩ロースの塊など。どれも蒸し上がりはやわらかで、とにかくジューシーになります。

そうそう、豆腐も蒸すとすごくおいしいんですよ。私は夏でも冷ややっこではなく、蒸し豆腐を食べるんです。大豆製品は香りが命だから、温かい方が絶対おいしい。特にざる豆腐を蒸すのが最高! 中国ではざる豆腐はないので、日本にきてから知りました。今では蒸したざる豆腐が私の大好物です。

●日常的にせいろを使って楽しんでほしい

――ウーさんのお話を聞いていると、無性にせいろがほしくなってきます。最後に、せいろとの上手なつき合い方を教えてください。

ウー:料理に慣れていない人、料理が苦手な人こそ、せいろ1つでつくれる蒸しおかずをつくってみてほしいですね。せいろは蒸し上がりをそのまま食卓に出せて、温かいまま食べられる便利な道具。それに、使えば使うほど蒸気を吸収し、さらに熱で殺菌されて丈夫になるんですよ。1回使ったきり、その後3年使わないなんてもったいない! しまい込まずにいつも出しっぱなしにして、日常的に蒸しおかずを楽しんでみてくださいね。

 

『ウー・ウェンの蒸しおかず』(扶桑社刊)は、シンプルに素材を蒸したものから、シューマイ、蒸し鶏、蒸しハンバーグまで、多数のレシピを掲載。毎日のご飯づくりに役立つこと間違いなしの一冊です。