歳を重ねると気になってくる「実家の片づけ」。ここではライフオーガナイザーの下村志保美さんが、70代になってからご自身の終活の片づけを始めたお母様の事例を紹介してくれました。

収納を捨てれば、ものが減る。70代の実家の片づけ

高齢の親の家の片づけに悩んでいたり、不安を感じたりしている方は多いと思います。今日は、70代になってから終活の片づけを始めた私の母の事例を紹介します。

【写真】70代母が暮らす家の食器棚

●1:高いところには収納しない

子どもが独立し、10年前に父を見送った母は一人暮らしをしています。家族が減った分、暮らしに必要になるものも減りました。

そこで、踏み台に乗らないと届かない高い場所には収納しなくてすむよう、無理なく手が届く場所に収納できるように見直しました。
ものを手に持った状態での踏み台の上り下りは危険だからです。

実家は田舎の家なので、かつてはお正月やお祭り、法事などで人が集まることが多く、それを前提に客用布団や食器をたくさん持っていましたが、現在はそういうイベントもなくそれらも不要になりました。

押入れの天袋、食器棚の上段など、空っぽにしています。
和室の神棚も踏み台がないと届きませんでしたので、下段に移動させたそうです。

 

●2:収納を捨てれば、ものが減る

かつて実家には大きなサイドボードがあり、いろいろなものを飾って楽しんでいましたが、サイドボードがあればその上にホコリがたまる、ガラス扉もいつの間にか曇ってくる、サイドボードの下にもホコリがたまる。

その掃除がおっくうに感じられるようになった母は、思いきってサイドボード自体を処分しました。

当然中に入っていた飾りものなども処分せざるを得ません。思い出があるものも多かったけれど、飾りたくて飾っているというよりは、置く場所があるからもっていたというものがほとんどだったので少しだけ残して処分。

引き出しに入っていたこまごまとしたものも改めて見直すと、不要なものばかりだったそうです。
長い間サイドボードが鎮座していた場所は壁紙も変色していました。

●3:「今」を楽しむものを厳選する暮らし

家の中に上がってもらう来客はほとんどないからと、応接セットも手放したかつての応接間。

ここだけ見るとがらんと寂しい気もしますが、玄関先で対応する親戚やご近所さんはまだまだ少なくありません。

母自身も自分が帰宅したときも気分がいいように、庭先で育てているお花を玄関に飾って楽しんでいます。

手先が器用な母は着物の帯をアレンジして下駄箱の上に敷いたり、お琴のカバーを古い振袖をほどいてつくり直したり。

お金をかけたりものを増やしたりするのではなく、身近なもので暮らしを楽しんでいます。

 

●4:終活は「今」生きることを楽しむためのもの

母の終活は10年近く前の父の死がきっかけでした。父を見送り、諸手続きをして、そのうえ片づけまで! とても遠方で暮らす娘(私)にはさせられない、と感じたようです。

終活というと死ぬ準備のようなイメージを持つ方が多いでしょうが、本当は残りの人生をよりよく生きるためにするものだと母を見ていて感じます。

掃除などの手間が減ると楽しむ時間が増えます。
転倒の危険を減らせば安心が増えます。

だれにも必ず訪れる老いと死までの時間を、ものに埋もれて手間と危険に囲まれて過ごすのか、それとも思いきって片づけて楽しく安全に暮らすのか、私たちは自分で決めて選ぶことができます。