持続可能な社会をつくるための「SDGs」。2030年までの達成をゴールとした「持続的な開発目標」を指し、世界的に注目されています。一見難しそうに感じますが、じつは私たちの暮らしのなかに取り入れられることがたくさんあります。今回のテーマは「韓国のエコ事情〜食と街なか観光編」。SDGsに詳しいフジテレビの木幡美子さんにつづってもらいました。

韓国観光の醍醐味!「食」にまつわるエコ対策とは?

韓国の魅力といえばやはり「食」。
とにかくおいしいものがいっぱいありますが、なかでもトッポギはソウルフード的なもので、現地で食べるものは、ふわふわ・もちもちです。そんなトッポギが、野菜やキノコ類など好みの具材とともに好きなだけ食べられる「トッポギビュッフェ」があるのはご存じでしょうか?

私も大好きなのですが、色々なタイプのトッポギがずらり〜。
あれこれと具材を選び、テーブル上の鍋で好きな味つけをして、自分で調理します。

ついつい欲張ってとりすぎてしまうのですが、そんなとき、ふとテーブルに置かれた「トッポギのつくり方」を見ると…最後に「残したら罰金」との表記が! 国のゼロ・ウエイスト(廃棄をなくす)政策の一環で、料理を残すとテーブルごとに2000ウォン(203円)の環境負荷金が課されるそうです。慌てて、ベルトの穴をひとつゆるめ、なんとか食べきりました。おいしかった〜

 

●韓国は「食べ残し」にお金がかかる!?セルフサービスの店が多い背景とは

韓国はもともと食品ロスが多い国で、これをなんとかしようと「廃棄物管理法」により、2012年から家庭や事業所から排出される残飯などの食品ゴミに対し、重さに応じてお金を払う制度がスタート。その流れから、お客さんの協力がマストだったのでしょう。

韓国料理ではありませんが、現地で人気の麻辣湯(マーラータン)のお店もセルフサービスでした。

食べられる量だけ材料をザルに入れるシステムで、選ぶのも楽しいし、食べ残しもなくせます。料金は重さで決まり、先にお会計もすませます。店側は、客が選んだ具材を鍋にかけて煮るだけなので、従業員も少なくてすみます。

できあがりはこんな感じ。こちらももちろん、スープまで、おいしくいただきました。

ソウルの街なかでもSDGsな取り組みを発見!

街中を移動するのに欠かせないのが交通機関。
ソウルの地下鉄は10キロまでなら1350ウォン(約137円)と安く、移動にもとても便利です。また、今回の旅ではバスをよく使いました。ソウルの大通りではバス専用の車線がもうけられているので、渋滞で大幅に遅れるということはあまりありません。

バスが今どこにいるかも電光掲示板やアプリでわかるので便利。しかも、バス自体が環境に配慮したものが多く、温室効果ガスや大気汚染物質を排出しないエコなバスも多く見られました。

タクシーや車移動をするよりも、公共交通機関を使えば、二酸化炭素排出量を減らせるのです。

 

●古着や靴を気軽に入れられる「衣類リサイクルボックス」

次にご紹介したいのは、街中のあちこちで見かける「衣類リサイクルボックス」。

これは、リサイクルできる衣類や古着、靴などを入れられるもので、道路わきのゴミ収集場などに設置されています。いつでもポンと気軽に入れることができるので便利です。

このボックスで回収されたものは、寄付されたり布製品に再加工されたりしているそうです。

 

●韓国版「フリマアプリ」は手渡しが主流…トラブルはない?

そのほか、“リアル版”メルカリといってもいい「タングンマーケット」というアプリがあります。タングンはニンジンという意味です。

住んでいる地域のご近所さん同士で、不要になった中古品を直接売り買いするもので、メルカリと違うのは「郵送」するのではなく、基本「リアルに受け渡し」をする点。

「家の前に置いておくから持って行って〜」とか、街中で会って「はい、どうぞ!」と渡すそうです。梱包の手間なども省けますし、ベビーカーや自転車など大きいものも簡単にやりとりできて便利ですよね。

2015年に始まったサービスのようですが、いまでは加入者数が3000万人を超えているとか! 実際に利用した日本人の留学生に聞いてみると、帰国の際に家具などをタングンマーケットで売ったそうですが、とくにトラブルなどもなくて、簡単で便利だったそうです。(日本でもkarrotマーケットとして2021年2月からサービスを開始)

 

●韓国の「エコ」取り組みはシンプルで合理的だった

韓国エコ事情・前編でご紹介した「置き配システム」や「プラスチック・ペットボトル削減」もそうですが、脱炭素に向けた韓国の努力は、生活者を巻き込んで、より暮らしに浸透するような形で行われていました。また、廃棄を減らしたり、無駄を省いたりすることは、イコール節約にもなるので、皆さん、シンプルかつ合理的な方法で実践している…。

法律を変え、罰金を課したりする韓国のような方法は日本では行われていませんが、国をあげて環境に優しい社会を実現するんだ!といった気概が感じられました。

一人ひとりの行動や意識を変えるには、「やってもやらなくてもいい」ではなく、ある程度強制力を持って方向性を示すことが大事なのではないでしょうか? 気候変動は待ってはくれませんから。