試運転中に脱線事故を起こした次世代型路面電車「LRT」について宇都宮市は21日、脱線現場のJR宇都宮駅東口のレールの改修工事を3月から始めると発表しました。8月の開業予定は変えないということです。

 2022年11月、試運転2日目に発生した脱線事故を受けて設置された原因や対策を調査する専門家による有識者会議は、中間報告をまとめました。21日は、それを基にした市議会議員への説明会が開かれ、宇都宮市の担当者が今後の対応を説明しました。

 中間報告では、脱線した急カーブの区間で車輪がレールを下に押す力と横方向に押す力を調べて、安全性を評価する測定試験を八つのパターンで行った結果が示されました。脱線が起きた、緊急時に逆走する形で分岐箇所を通過してすぐにカーブに入る走行では、経路がS字曲線から連続して急カーブに進入する特殊な走行となり、車輪がある台車と車体の力の偏りが最も大きくなったことが分かりました。横にかかる力がピークになる瞬間に車体と台車にある隙間が無くなり、本来は横揺れを制限するためのストッパーに車体が強く当たった衝撃が脱線につながったと推測されるということです。ほかの七つのパターンでは、ストッパーへの強い当たりは確認されませんでした。

 脱線時は時速13キロで走行しており、有識者会議ではこの走行パターンでは時速5キロで走行するのが望ましいと指摘しています。これを受けて市は、当初の速度設計の見込みが甘かったことを認めました。こうした考察を踏まえ、市はカーブを曲がりやすくするように外側を高くしているレールの高低差を無くす工事を実施することを決め、左右のレールの間を3ミリ程度縮める調整も行います。工事は3月中に始め、概算の費用は5千万円ほどになる見込みです。レールの高低差を無くした後、再び安全性を確認する測定試験を行い、4月中に工事を完了させる予定で追加の安全対策が必要かどうかも検討します。

 一方、損傷した車両などの修理にかかる費用が概算で合わせて1億7千700万円ほどになることが分かりました。電気機器の損傷状況によっては、さらに増える可能性があるということです。

 市は、4月からすべての区間で試運転を行い、5月からの運転士の習熟運転などを経て8月の開業は変えない方針を示しましたが、議員からは「8月の開業ありきになっていないか」などと意見が相次ぎました。

 もともと4月に予定していた市民の乗車体験は中止にします。