いまではスタンダードになっている設備も、この機から始まりました。

1832機が製造

 アメリカの航空機メーカー、ボーイングが「わが社が設計した初期のジェット旅客機のなかで、最も特徴的な外観を持っていた」と称するのが、1963年2月9日に初飛行した「727」です。この機は、胴体後部にエンジンを3発集中させたスタイルが採用されています。


ボーイング727(乗りものニュース編集部撮影)。

 ボーイング727の初期タイプは全長約40mで、標準座席数は131席。3発のエンジンうち2発が胴体最後部の左右に、残り1発が垂直尾翼を貫通するように設置されています。

 シリーズ通しての製造機数は1832機で、ボーイングのなかでも1000機以上を売り上げた最初のモデルだったそうです。日本でもJAL(日本航空)、ANA(全日空)がこのモデルを使用していました。

 初のジェット旅客機「707」をデビューさせたボーイングは、長い滑走路や十分な空港設備を持たない小規模な空港や、空気が薄い標高の高い空港にも発着できる、中〜短距離向け新型機の開発を進めます。しかし当時、航空会社からのニーズにもバラつきがあり、707のプログラムも途上にあったことから、のちに727となる新型機の開発は、反対の声も多かったそうです。

実は高スペック? 727はなぜ売れたのか

 727では先述のとおり、条件が整っていない空港にも発着できることが主眼に置かれ開発されたモデルであることから、旅客機としては初の機構を装備しています。このひとつが「APU(補助動力装置)」と呼ばれる小型のガスタービン エンジンです。

 このAPUは、メインエンジンを稼働していない地上での電力供給やエンジン始動時のスターターといった役割を担います。この設備により、地上電源をはじめとする支援装置がない空港でも運用できるように。なお、このAPUは、現代のジェット旅客機でも、ほぼ標準装備されています。

 このほか727では、階段車がなくとも旅客が乗降できるよう、胴体後部に備え付けの階段「エアステア」も装備されています。


JALのボーイング727(画像:JAL)。

 こうした機能性の高さをもっていた727ですが、初飛行時の受注数は200機以下。このままだと赤字になってしまうことから、ボーイングは26か国にセールスツアーを展開します。

 そういった営業面の努力と、使える空港の多い汎用性の高さから、727はその後、徐々に人気を博すことになります。とくに、胴体延長タイプの727-200がデビューすると、その販売数は一層の伸びを見せることになりました。

「向かい風」のなか生まれたボーイング727ですが、こうして最終的には、歴史に残るヒット機のひとつとなったとのことです。