名神&新名神「地獄の100kmビッシリ」なぜ発生 1月大雪 大動脈が麻痺した判断ミスとは
2023年1月下旬、「10年に1度」といわれた大寒波のなかで、東海から関西にかけての名神高速と新名神高速では、おびただしい長さの渋滞や車両滞留が発生しました。「東西の大動脈」という路線の重要性が、混乱の原因になった可能性があります。
名神は「渋滞」 新名神は「滞留」 混乱の東西大幹線
NEXCO中日本とNEXCO西日本は2023年2月8日、名神・新名神高速にて1月下旬の大雪で発生した渋滞や車両滞留の経緯を検証し、再発防止策を軸とした大雪時の「当面の対応策」について発表しました。
新名神の車両滞留。1月25日17時30分頃、土山SA付近(画像:NEXCO中日本名古屋支社)。
「10年に1度の寒波」とも呼ばれた1月24日(火)から26日(木)にかけての大雪時、名神と新名神では長時間にわたる渋滞や車両滞留が発生。検証の結果、24日夜から25日にかけ、驚くべき長さに達していました。
名神下り線は、天王山トンネル付近を先頭に、滋賀県の湖東三山PA付近まで最大約70kmの渋滞。この影響で、途中の草津JCTで合流する新名神は、同JCT付近で渋滞から“滞留”に変わり、三重県の菰野IC付近まで最大約66kmの渋滞になったそうです。名神と新名神を合わせれば、100km近くビッシリな状態になっていたといえます。
新名神ではこの車両滞留に巻き込まれ、除雪の継続が困難になっていたとのこと。車両滞留が菰野ICを超えた25日3時50分、このままでは滞留が伊勢湾岸道、東名まで延びてしまうと判断し、新名神の通行止めを実施したそうです。ただ、除雪が不可能となった時点から4時間が経っていたといいます。
24日夕方以降、名神の愛知〜滋賀区間や京滋バイパス、名阪国道など、東海と関西を結ぶ主要路が通行止めになっていました。そうしたなか、通行な可能な新名神・名神ルートに多くの車両が集中したと考えられるとNEXCO中日本は話します。
新名神の車両滞留は、24日23時頃から始まり、通行止め区間の最後尾車両が動き出したのは26日6時24分、その車両が通行止め区間を退出したのは8時05分なので、解消までに約33時間かかったと見ることができます。全線の通行止め解除は、同日の23時30分でした。
なぜここまでの事態に?
車両滞留の原因については、「車両が完全に滞留して動かない状況になることへの見極めが甘かった」「渋滞による滞留が一時的と判断し、新名神以外の主要幹線道路(名神高速道路、名阪国
道)が既に雪で通行止めとなっている状況下で、通行止めを実施すれば、車両が完全に滞留して、状況がかえって悪化するとともに、東西の大動脈の確保等の観点から、通行止めの実施を躊躇」したと分析されています。
これを受け両社は、通行止め実施判断を見直すとしています。強い降雪で車両滞留へ発展するのを回避するための「予防的通行止め」のほか、「その路線の担う役割の如何に関わらず」躊躇なく通行止めを実施すること、その方針について事前に関係機関と運用方法を確認することなどを、速やかに行うということです。
また、万が一滞留が発生した場合には、中央分離帯開口部や後方からのUターン処理などにより長期化を回避するといいます。
車両滞留の現場では、NEXCO中日本により食料(カロリーメイト)約1200個、水やガソリン、簡易トイレの配布などが行われました。車両の乗員に声がけをし、健康状態の確認を行ったほか、バスの中に体調不良の子供いるとの申し入れを受け、最寄りの鈴鹿PAへ39名を巡回車でピストン輸送したそうです。
滞留車両の前方を除雪する(画像:NEXCO中日本)。
それでも、滞留が一時的なものと判断し、関係機関への救援物資の要請などを行わなかったことから、滞留に巻き込まれた人へ物資が十分に行き渡らなかったといいます。滞留発生段階での乗員保護にも課題を残しました。
また、現場はマイナス8.9度にも達し、広範囲で圧雪による路面凍結により、通行止め解除作業に想定以上に時間を要したとのこと。除雪だけでない、圧雪凍結路面への対応が可能になるよう体制を整備するとしています。